セントラルヒーティングはこんな方にオススメ
「冬でも家じゅう暖かくし、快適に過ごしたい方」
「安心・安全の暖房システムを探している方」
「暖房は欲しいが、室内のインテリアも大切にしたい方」
ヨーロッパ生まれの暖房システム「セントラルヒーティング」。気温が下がってきたころに一度スイッチを入れたら、春まで何もしなくても家じゅうを暖めてくれる優れものなんです。北海道では実に7割~8割の新築戸建住宅がこのセントラルヒーティングを採用しているといわれています。セントラルヒーティングとはいったいどのような仕組みで、どんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
「これから導入を考えている、興味がある」といった方の参考になるよう、基礎から解説します。
目次
1.「セントラルヒーティング」ってなんだ?
セントラルヒーティングとは
暖房システムの一種で、灯油などのボイラー(熱源装置)でつくった温水を各部屋に設置したパネルヒーターまで配管でつないで送り込み、室内を暖めるという仕組みです。
ストーブとの違いは、ストーブが一ヵ所を集中的に暖めるのに対し、セントラルヒーティングは家じゅうをまんべんなく暖めます。そうした特性から、セントラルヒーティングは全館集中暖房、中央暖房とも呼ばれています。
道内では標準装備の暖房システム
北海道の新築戸建住宅のおよそ7割が導入しているといわれているセントラルヒーティング。道内ではここ20数年ほどで急速に普及しました。
元々はヨーロッパ発祥の暖房システムで、昔は設置ノウハウが日本に伝わっていなかったため、あまり普及していませんでした。
それが、業界団体(北海道冷暖房換気システム協会(※))が発足し、設置ノウハウが広く知られたことにより、多くの業者がセントラルヒーティングを取りつけられるようになり、一般家庭でも手が届くような価格帯に落ち着き・・・多くの家に広まっていったという経緯です。
※現在は解散
温水式と温風式、2つの種類
セントラルヒーティングには、温水セントラルと温風セントラルの2つのタイプがあります。
温水セントラルとは、その名の通りお湯の熱で暖房します。石油・ガス・電気を熱源にボイラーで沸かしたお湯を、建物内部に巡らせている循環パイプを通じて各部屋に設置したパネルヒーターなどを介して放熱する方式です。
セントラルヒーティングといえば、一般的にこの温水セントラルを指します。
温風セントラルは、温風によって暖房します。こちらは現在ほとんど使われていません。温水式に比べてまんべんなく暖める力が弱いことが理由のひとつです。
以下、温水セントラルヒーティングについて説明していきます。
セントラルヒーティングに必要な機材
■熱源(灯油・ガスなど)
セントラルヒーティングには、もちろん熱源が必須です。灯油や都市ガス、電気によってボイラーないしヒートポンプを動かし、熱を作り出します。
■ラジエーター(放熱器)
パネルヒーターをはじめとした放熱機器です。玄関、リビング、寝室、子供部屋・・・家の中のあらゆる場所に設置して、ボイラーから送られてきた熱を届けます。
温水パネルヒーター、パネルラジエーターとも呼ばれます。
■その他
ボイラーとラジエーターのつなぎ役であるパイプや実際にラジエーターへ熱を送り込むポンプなどもセントラルヒーティングには欠かせません。
※セントラルヒーティング以外の暖房方法は、以下の記事にまとめています。
2.セントラルヒーティングの特徴は? 寒くないこと!
良いところ
■家全体が暖かい
熱源と放熱機器の力で家じゅうを暖める、セントラルヒーティングならではの利点です。寒い冬、外から帰ってきて、家がしっかり暖まっているのはうれしいですね。
住宅オーナーの声
「セントラルヒーティングで家じゅうぽかぽか。玄関まで暖かいと親が驚いていました」(札幌市中央区・Yさん)」
下の記事より引用
■ヒートショックの恐れから身を守る
セントラルヒーティングは家じゅうを暖める=家の中の温度を均一にするので、室温差が原因で引き起こされるヒートショックの防止に適した設備といえます。
ヒートショックとは極端な室温差によって引き起こされる身体への悪影響のことで、寒暖差で血圧が乱高下することで失神し、浴室での溺死を招いたり、命を脅かす脳卒中や心筋梗塞に陥る恐れもあります。
ヒートショックによる国内での年間死者数は約1万9000人と推計されており、実は交通事故や熱中症による死者数よりも桁違いに多いんです(交通事故死者:約2600人/年、熱中症死者:約1500人/年)。
なぜそんなに多いのか? それは、日常生活の中で自然に起こり得るからです。
暖かいリビングから、ひんやりした脱衣所へ移動し、熱々の湯が張られた湯舟へ・・・みなさんもそんな経験があるかと思います。こうした室温差でも身体には悪影響で、ヒートショックの原因になるんです。
室温差が原因で起きるヒートショックの予防に、家の中の寒暖差を小さくするセントラルヒーティングはぴったりです。
■安全性抜群
セントラルヒーティングは火を使わない暖房システムなので、火による事故の心配がありません。パネルヒーターも火傷するような高熱にはなりません。火災・火傷の危険性が低いのが、ストーブなど燃焼系の暖房器具とのハッキリとした違いです。
また、一酸化炭素・二酸化炭素が発生しないので空気が汚れず、定期的な換気が不要な点、それに付随してにおいがしない点もセントラルヒーティングの特徴です(もちろん、建築基準法で定める常時換気は必要です)。
■乾燥しにくい
セントラルヒーティングはエアコンのように温風で暖めるわけではないので空気が乾燥しにくい上に、ホコリが舞ったりしません。
■熱源が豊富
石油・ガス・電気なんでもOK。切り替え可能なので、将来の環境変化にも対応できます。
また、新築戸建て住宅での熱源の比率は、石油:ガス:電気=3:6:1くらいといわれています。都市ガスの普及で熱源にガスを採用することが増えていますが、石油(灯油)は自宅でストックしておくことができ、災害の備えにもなるということから根強い支持があるようです。
■インテリアを邪魔しない
セントラルヒーティングでは各部屋にパネルヒーターを設置しますが、薄型ですし、デザイン性に優れたものも多く、部屋の雰囲気を壊しません。
う~んなところ
■設置費用がかかる
エアコンやストーブに比べると大がかりな工事が必要になるため、どうしても最初の設置費用はかかってしまいます。
■暖房費が高い
24時間運転が基本なので、当然暖房費はかかります。ただし、住宅の断熱性能が高ければ、暖房費が高くなる心配はありません。
それから、暖房費を抑えるため、夜中や家に誰もいないときは運転を止めたとしても、家じゅうを適温に戻すのに大きなエネルギーを必要とするので、結局暖房費の節約にはつながらないのです。
■室内が適温になるまで時間が必要
パネルヒーターからの輻射熱と自然対流熱で室内の空気を暖めることによりじんわりと室温を上げていくので、速暖性はありません。
その他の特徴
■結露を防ぐ
カビ、それによるぜんそくなどの健康被害の原因となる、住まいの天敵・結露。
空気が冷えることによって発生するものですが、ここでもセントラルヒーティングが活躍します。冷気の侵入口である窓の下にパネルヒーターを設置すると、窓面の結露を抑えやすいです。
■音がまったくしない
パネルヒーターは放熱していてもまったく音を立てません。夜中につけっぱなしでも眠りをさまたげません。
■断熱性の低い家には不向き
断熱性が低いと、せっかくの暖気が逃げていってしまいます。適温にするまでにエネルギーをたくさん使うので、経済的に痛いです。逆にいえば、断熱性が高い家にはぴったりです。
3.セントラルヒーティングの使い方
24時間つけっぱなしが基本
セントラルヒーティングを使うにあたってのポイントは「付けっぱなしにすること」です。部屋が暖まったり、家を不在にするからといって、ストーブのようにその都度OFFにしないのです。
OFFにすると、当然室温は下がりますよね。セントラルヒーティングはじんわりと暖める暖房システムなので、一度下がったらまた暖まるまで時間がかかりますし、室温を上げるためにたくさんのエネルギーを使うので、節約のつもりでOFFにしたのに、暖房費がちっとも安くならないのです。ですので、セントラルヒーティングは24時間付けっぱなしが基本です。
節約するなら、ボイラーの温度を下げて、室温(暖房温度)を少し下げるのがいいですね。
併用例
■セントラルヒーティング×エアコン
真冬はセントラルヒーティングを使って、秋の終わりや春先など肌寒さを感じる時期はエアコンの温風で暖をとるというように使い分けている方が多く、最近はリビングの暖房をエアコンでまかなう家もあります。
住宅オーナーの声
「冬はセントラルヒーティング。春秋は天井に埋め込みの冷暖房エアコン。12月~3月の灯油消費量は給湯含めて約550リットル」(岩見沢・Kさん邸)
引用記事はこちら
■セントラルヒーティング×床暖房
パネルヒーターの熱に加え、玄関の三和土(たたき)や脱衣所などのユーティリティスペースに床暖房を敷くことで、より生活しやすい温もりいっぱいの家になります。
■セントラルヒーティング×薪ストーブ
インテリアとして薪ストーブも設置するケースがあるようです。
住宅オーナーの声
「メインはエコジョーズのセントラルヒーティング。薪ストーブのふんわりとした暖かさがお気に入り。家は、セントラルヒーティングのダイヤルを一番低くしていてもぽかぽかです(江別市・Mさん邸)
下の記事より引用
よくある疑問
■パネルヒーターって、中では何が流れているの?
主に真水か、さび防止剤入りの水、不凍液(寒冷地でも凍結しないように加工された液体)のいずれかです。寒冷地ではたいてい、さび防止効果のある不凍液が使われています。
■熱源となるボイラーはどれくらいもつ?
灯油ボイラーの場合、10年から15年が目安といわれています。
■シーズンオフに気をつけることは?
ボイラーのスイッチを切ることに加え、パネルヒーターのサーモバルブ(室温調節バルブ。パネルヒーターの端についている、温度調節のひねり)を全開にします。パネルヒーター内部の温水調節弁に負担をかけないためです。また、電気ボイラーの場合は電気料金の発生を防ぐためにブレーカーも落としてしまいましょう。
■長期で家を空けるときはどうすればいい?
凍結による破損を防ぐために万全を期すという意味で、OFFにはせず温度設定を下げて、つけたままの状態でお出かけしましょう。
4.まとめ
安心・安全に使えて、寒い冬でも家じゅうを暖めてくれるセントラルヒーティング。良いところがいっぱいの暖房システムですが、東北地方を含む本州では需要が低く、まったく浸透していません。本州以南はエアコンが標準装備されていることに加え、人がいる場所だけ暖める部分暖房の考え方が広まっていることが理由として考えられます。
「ストーブやエアコンだけでは寒い。家じゅうを暖かくしたい」とお考えの方は、セントラルヒーティングを導入してみてはいかがでしょうか。
※企画・編集協力:石油連盟
https://www.paj.gr.jp/
この記事は連載です。
1 北海道の家の7割はセントラルヒーティング!その理由は?
2 北海道の住宅は灯油、電気、ガス? 暖房器具選びは?
3 冬の停電でも灯油さえあれば暖をとれる 石油暖房の家(2023年版)
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