Column いえズーム コラム

雪の悩み解消。豪雪地・岩見沢に建つモダンリビングの家

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除雪面積をなるべく小さく

「前のマンションでは駐車場で車の雪下ろしをした後、雪捨て場まで雪を運ぶのが苦痛でした。それが家を建てようと決めた理由の1つです」。そう語るのは九州出身というご主人・Kさん。 北海道に来た当初は一面の雪景色に見とれたといいますが「毎日のように早朝から除雪となると...。『なるべく雪かきしなくていい設計にして下さい』と中村さんにお願いしました」。

工事は、隣に住む奥様のご両親の住まいも手がけた松浦建設(株)が行いました。「親子2代で、というのも最近ではそんなにないでしょう?」と取材に同席してくれたお父さん。
住宅設備の仕事をしていた関係で中村さんとも親しい間柄。「娘夫婦には『エネルギーのことも含めて維持費のかからない暖かい家にしなさい』と伝えました」。

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道路のそばに車2台が入る約4.5m幅のワイドなシャッターを設けることで、外観もすっきりまとまったうえ、除雪面積もグッと小さくなりました。
アプローチの横には、車1台分の駐車場と雪捨て場を確保。敷地にあまり余裕がないため無落雪の勾配屋根を選択。長い庇が雪や雨による外壁の傷みを防ぎ、夏の強い日射しを遮ってくれます。

建物の耐久性向上と省エネにもつながる美しいデザイン。モルタル塗りの部分には褪色しにくい無機顔料を使用しています。
「今年は除雪で苦労することもなく、快適で暖かい冬を過ごしました。夏は庭でバーベキューです」とご主人。

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ガレージの入口も雪に当たらないよう道路との境界付近まで庇が延びています。「出勤前に除雪が必要なのはここだけ。玄関廻りもすぐ脇に排雪スペースがあるから短時間で終わります」とKさん。雪かきに手間取らなくなったおかげで、家族との会話を楽しみながら余裕を持って朝の準備が出来るようになったそうです。

行き止まりのない開放的な室内

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室内は白を基調としたシンプルな空間です。
1階は階段を中心とした回遊動線上にグランドピアノのあるホール―和室―リビングダイニング―水廻りを配置。行き止まりのないオープンスペースなので広がりが感じられます。

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吹き抜けと連動した4連の窓。「ご両親の家の庭に面したこの場所なら隣に建物が建つ心配がない」という中村さんの判断で採光のための背の高い開口部を設けることにしました。

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〈個性的な木目の床はアカシア材。和室は九州生まれのご主人がこだわり畳表には熊本産の本イグサを使用〉

断熱は壁がグラスウール21cm、屋根が同42cm、基礎の立ち上がりが押出発泡板B-3種10cm、床下の土間にも全面に断熱材。窓は空気層16mmのペアガラス入りサッシ。メインの暖房と給湯は灯油熱源。冬はパネル式セントラルヒーティング、春と秋はビルトインタイプの冷暖房エアコンと季節によって暖房方式を使い分けています。換気は排気のみを機械で行う第3種換気システム。

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〈オフホワイトにまとめたキッチン。背面には保冷庫も装備している〉


奥様の記録をもとに灯油消費量を計算したところ、厳寒期の12~3月のおよそ4ヵ月間で給湯を含めて約550リットル。生活臭が気にならない程度に換気量を減らしたり、送水温度を低く抑えるというお父さんの省エネアドバイスを元に、生活の工夫をしているそう。

隣近所に気兼ねせずピアノの練習

2階も1階同様、回遊動線上に個室を設けています。ロフトのある子供部屋は将来、真ん中で分けて使えるように入り口が2つ。
「以前は生活音を気にして暮らしていましたが、今は子供が少々騒いでも叱らなくてすみます」とKさん。お子さんたちがのびのび過ごしているのが何より嬉しいとも。窓を閉めていればピアノの音がほとんど外に漏れません。

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記者の目

「岩見沢の場合、屋根雪をのせても落としても絶対にこれが正しいとは言い切れません」と中村さん。想定外の降雪を記録した2012年の大雪では、雪庇の重さで庇(ひさし)が折れる家が続出したそう。豪雪地域で雪対策に向きあう中村さんに、地域に根ざす家づくりの大切さを教えられました。

ちなみに、札幌の降雪量が平年値で587cmに対し、岩見沢は1.5mも多い745cm。最近は札幌と岩見沢の差が拡大しているともいわれ、記録的豪雪となった2012年には、最も多く雪が積もったときの積雪量が岩見沢は208cm、札幌が73cmほどでした。

岩見沢恐るべし。でも、岩見沢って春から秋が最高に美しく、この街の良さを満喫できるのです。中村さんは岩見沢在住の経験を生かして、札幌でもとても素晴らしい雪対策のおうちを設計しています。
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2015年09月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。