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和風建築の技術を受け継いだ若棟梁の1棟目/北一タカハシ建設(札幌)

このお宅を手がけた棟梁は、若手大工の宮西徹さん。こちらの家で初めて棟梁を務めました。

1gaikan.jpg 道内で初めて瓦屋根に太陽光パネルを設置。夏季は余った電気の売却分で光熱費の収支がプラスになる計算

畳でくつろげる家がいい

家の老朽化が目立ち、建て替えることになった自営業のAさん。築40年を過ぎており、冬になると浴室は露天ぶろかと思うほどの息の白さ。
それでも、ご夫妻は奥さんの父親から引き継いだ家がお気に入りでした。特によく使っていたのは8畳の和室。友達や親せきが集まってはにぎやかに過ごし、夜にはゴロリと寝ころんでリラックス。
ところが、「どの住宅会社でも、和室といえば4畳や6畳の小上がりといった提案ばかり。畳部屋はまるで付け足しのような扱いだったんですよね」(Aさん)。不満を持ったご夫妻は、和風建築を扱う会社をいくつか探した結果、北一タカハシ建設さんにたどり着きました。
「ほかにも和風建築の会社はありましたが、提案プランが先にあるのではなくて、前に住んでいた間取りと同じようにしたいという私たちの希望をきちんと受け止めてくれたのが北一タカハシさんでした。それに、建てる皆さんが下請けではなく自社大工ということも大きな決め手になりました」(Aさん)。

キャリア十分、20代の棟梁デビュー

2miyanishi_tri.jpgさて、このお宅を手がけた棟梁は、若手大工の宮西徹さん。こちらの家で初めて棟梁を務めました。「指名された時は"とうとう来たか"と。自分にとっては楽しみでもありましたね」と、不安よりもやる気に満ちていたよう。

早い頃から大工になると決めていたという宮西さんは、地元の富良野から大工を養成する札幌高等技術専門校に進みました。建築現場での実習に励みながら「ただの流れ作業でやるような家づくりは嫌だ、大黒柱を自分の手で加工して組み立てる、本当の和風住宅をつくりたい」と、数ある求人の中から北一タカハシ建設に入社。若手とはいえ7年の経験を積んでいます。

「うちの会社では、まず自社工場でその家に使う木材の加工をするところから始まります」と、施工のプロセスを説明する宮西さん(右)。リビングにある柱を指して、「例えばこの八角形の杉材も、角材を自分が削って磨いたものです」。なお、この"刻み"と呼ばれる作業には10日ほどかかったそうです。

〈写真〉入社5年目に初めて棟梁を任された宮西徹さん。杉の八角形柱は会社の工場で自ら削り加工した

最高の家を目指す努力が、喜びに変わる!

そんな宮西さんに質問をしてみました。
――初めての棟梁はいかがでしたか?
「技術的には大棟梁の木村さんがいるので安心する部分はありました。また、先輩にも指導してもらいました」。
――それでは割とスムーズにいったのですね。
「いえ、棟梁というのは責任者であり"怒られ役"なんです。チェックに来るたび社長には『ここをやっていない』『ここはこう言ったじゃないか』と叱られてばかりでした。でも、たとえ若い大工がやったことでも自分の不手際ですから、責任者としてきちんと目配りをするように努めていきました」
――いちばん苦労したことは何ですか?
「そうですね、社長は建築中の現場を見ながら『ここはこうしよう』と、次々に新しいアイディアを出してくるんですよ」
――その場で、ですか?
「はい、突然言われるので、自分も『マジですか?』と思いますね(笑)。でも"より良い家を造りたい"という、仕事を超えたような社長の"美学"があるわけです。だから、それにこたえるためにも、どうやってつくるかを現場で相談しながら工程を合わせていきました」
4tatamiroom.jpg 〈写真〉宮西さんが最も力を注いだ和室。縁側の天井には当初の計画になかった屋久杉の板が張られている。
追加料金なしでできるのは、木材を豊富に在庫する宮大工の会社ならでは

――家が完成したときはどうでしたか?
「変更の苦労があった分、出来てから見ると最初の図面よりもやはりカッコいいんですよ!うちの社長はすごいと思います。竣工の時は自分もスッキリとしましたし、社長にも「大満足」と言われてうれしかったです」

オーナーさんにも社長にも"大満足"の太鼓判

「宮西さんや北一タカハシの皆さんはいつも笑顔でフレンドリー。建てている時から『いい大工さんだね』と、ご近所にも評判だったんですよ」とはAさんの奥さん。「できたおうちも想像以上にステキで、遊びに来る友達や回覧板を回しに来るご近所さんまで『すごいね』とほめてくれます」。Aさんも「和風住宅なのに暖かい。この家では蓄熱暖房を使っていますが、冬でもだいたい月2万円程度の暖房費で済みます。前の家では灯油代で月10万円ということもあったから、大違いですよね」と二重マルの評価。
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〈写真〉1階は家族で楽しく、お客を呼んでにぎやかに。2階はプライベートスペース

「本当にオンリーワンの家になったと思っています。宮西さんたちとのとの出会いは本当に幸運でした」と話すAさんご夫妻。「自分もこちらの家を手がけさせていただいて『やり切った!』という実感が持てました」と答える宮西さんは、昨冬にも新たな住宅を担当。ますます頼りになる棟梁として磨きをかけているようです。

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記者の目

Aさん邸は細部まで数寄(すき)を凝らしながらもシンプルな美しさに満ちていて、時間をかけてじっくりと眺めていたい気分になりました。高橋社長の家造りに対する"美学"もそうですが、そのイメージにきちんとこたえて形にする宮西棟梁もすごい。「ほかの会社だったら、これほど大工の仕事に面白みは感じられないと思う」と話す横顔には、確かな実力を備えた職人魂が感じられました。

2013年05月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。

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