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遊びの部分がたくさんある、猫とおばあちゃんのための家/札幌市・高野さん/アウラ建築設計事務所

仕事しながらでも寝室の様子を感じられる

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131101auar_3451.jpgドアを開けた瞬間、美術館のように椅子が置かれた縦長なガラス窓に、吸い込まれていくような錯覚に陥りました。よく見ると壁が斜めに設計されています。さらに床が完全にフラットになっているため、とても開放感のある明るい空間が広がります。

この家はマラソンと洋裁が趣味のお母様とジャズシンガーである娘さんが、お祖母様が将来車いす生活になっても、快適に暮らせるよう心を砕きました。でも、入ってすぐ左手に大きな柱が1本立っていたり、リビング奥に高さのある和室があったりと、一般的なバリアフリーの家とは少し趣が違っています。

「柱はなくてもいいものですが女性ばかりの家なので、シンボルとして大黒柱を立てたんです。もちろん車椅子で移動する際に十分な空間を取ってあります。和室はお祖母様が腰掛けるのにちょうど良い高さ。お好きな庭の花を眺めながら、娘や孫娘とおしゃべりができるといいな、という思いもありました」この家の設計と監理を担当しているアウラ建築設計事務所の代表・山下一寛さんはそんなふうに話します。

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和室の奥はお祖母様の寝室で、ふすまのような窓は開けられる造りに。お祖母様は横になっている時間が長いそうですが、この窓を開けておけばお母様や娘さんは仕事しながらでも様子を感じることができます。35年間、手直しなしの1階が車庫、2、3階が住宅という2世帯住宅に住んでいたという高野家。

お祖母様が足腰を悪くされてからは階段の昇降が大変なうえ、すっかり分断された2世帯でもあったため、物音すらしない、誰が起きていて寝ているのかさえわからないような状態だったのだとか。ずっと建て直したいと思いながらできずにいた状態から、1年ほど前、ついに一念発起。

 

玄関前の、車いす用スロープ
   

雑談の中から、きめ細かく家族の要望に応えていく

131101aura_3469_ov3_EV+01.jpg娘の雅絵さんは言います。「最初は母がハウスメーカーや住宅展示場を回って見積もりを取ったりしていたんですが、テーブルの上でただ話をしてるだけのように感じたみたいで。そこがおばあちゃんに優しいのか、疑問が生まれたそうなんです。それで一回話を真っ白にして。私が高齢者住宅をやっている方をインターネットで探していたら、山下さんを見つけたんですね。インスピレーションできっと話を聞いてくれそうな人だと感じました」    131101aura_3460_ov3.jpg 131101aura_3371_ov3.jpg

その勘は大当たり。山下さんとのミーティングは楽しい雑談の中から、きめ細かく家族の要望に応えていくというもの。

最初は「あたたかくて段差のない明るい家」だけだったリクエストも「洋裁のための作業スペース、キッチンが広いこと、というようにどんどん広がっていったんです」とお母様。

     

1階は和風、部分2階は洋風モダンというデザインも素敵ですが、特に目を惹くのがリビングの床材。畳のような薄いグリーンのクロス貼りになっているのです。もともとは無垢材のフローリングにするはずだったところを、後半に山下さんが「これにしたくて」と持ってきたものの中から家族で選んだのだそう。

山下さんによると緑の床材はなかなか好まれないしいいものがなく、ずっと探していたので「見つけたときは嬉しかった!」。おかげで明るく個性的な居心地の良いリビングになり、お祖母様も「こんな家はない」としきりに言うほど気に入っていらっしゃる様子。

2階は趣味スペースにも。トルソーに、お母様が作った洋服が

縁ある知人の協力によって無事に完成

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猫のふーたん

また、同居する2匹の猫にも優しい家になっています。「キジトラの"ふーたん"は11歳の高齢で私に懐いていて、まだ若いアメリカンショートヘアの"のんちゃん"は母の担当なんです。打ち合わせのとき、よく猫の話をしていたんですが、山下さんは猫のこともよく考えてくださって。猫が通れるところ、顔を出せるところをたくさん作ってくれてるんです。家じゅうがキャットウォークのよう。遊びの部分がたくさんある、猫とおばあちゃんのための家ですね(笑)」とお母様は笑います。

山下さんは何でも気さくに話し、家族の何気ない言葉もきちんと聞いてくれたため、初めての家作りは"一緒に作っていっていると感じられる"楽しいものになりました。唯一、予算が大幅にオーバーしていることが発覚したときは肩を落としたそうですが、トタンの屋根は山下さんと付き合いのある建材屋に娘さんの親しい友人がたまたま勤めていたため、安く購入できたりと、縁と協力によって無事に完成。関わったすべての人に愛情があるから、この家はあたたかな空気に包まれているのかもしれません。

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そう言えば、お母様の最初のリクエストは"あたたかい家"でした。もうじき、この家で迎える初めての冬がやってきます。そう差し向けると「全部の部屋にオイルヒーターが設置されてるんですけど、ストーブと違ってほわっと暖かいですね。冬が楽しみなくらいです」と雅恵さん。お母様とお祖母様も、微笑みながら頷いていました。

記者の目

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魅力ある個性的な3世代が揃った、高野家の女性たち。物をつい増やしてしまうと言うお母様と、とにかく物を少なくしたい娘の雅絵さん。お母様が話すと、すかさず雅絵さんがツッコミを入れ、それをお祖母様はふんわりと微笑みながら聞いていらっしゃいます。タイプは違ってもとても仲良しで、尊重し合っている。そんな関係性がそのまま家のもつ空気に現れているように感じました。

 

2013年11月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。

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