Story 取材記事

建築家ととことん話し合ってつくった収納豊富&中庭がある札幌・手稲のコートハウス/拓友建設

長く社宅にお住まいだったSさんは奥さんと娘さんとの3人家族。ご両親の土地に家を建てることになり、住宅会社探しを始めました。Sさんと奥さまは暖かく堅牢な家を望んでいました。「札幌良い住宅」も活用した家づくりの全貌をご紹介します。

北向きの土地に中庭を設けて採光を解決

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Sさんは技術系の会社員で、「高断熱・高気密で暖かく、堅牢な家」を基本条件としていたそう。奥さまも同じ考えでした。

住宅展示場を回りましたが、ピンと来る住宅がなかなかなく、仕事が忙しいSさんの代わりに奥さまがインターネットで検索して「札幌良い住宅.jp」(現:いえズーム)の記事に行き着き、暖かくて構造のしっかりした家を建てている拓友建設さんを知りました。妻沼社長は高性能な外断熱住宅を推進する北海道SHS会の会長も務め、道が進める北方型住宅の建設経験も豊富。過去の記事まで遡って読み込み、「この会社はいいかも」と気に入りました。

設計は建築家、施工は自社という役割分担を行っている拓友建設さん。Sさんにとっては、「建築家といえば、性能よりもデザイン重視で自分の設計を押し付けてくるようなイメージがありました」。しかし、性能面では拓友建設がこれまでの実績から一定レベル以上の性能が出ると約束したこと、設計打ち合わせは3回までは無料という話を妻沼社長から聞いて、「まずはお願いしてみよう」と話を進めました。

会社を訪ねたとき、近くにあったオーナー宅を見学でき、「思わぬところに収納があるなど、それまで見てきた住宅とは違う設計の自由度の高さに驚き、拓友建設さんとなら、きっとワクワクする家づくりができるのでは」(奥さん)と、魅力的に感じたそうです。

実際に会ってみると、建築家の志賀さんは「設計のプロとして譲れないところはある」という考えの持ち主ですが、「お客さまの満足につながるようにご要望をしっかり受け止める」という柔軟な思考の方でした。Sさんは、何度か打ち合わせを重ねていくうちに意気投合していったとか。「主人と志賀さんは、考え方が似ているせいか、話が合うようです」と奥さま。

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外壁はシルバーのガルバリウム鋼板でスタイリッシュな印象。木製フェンスの先に10坪の中庭があります(写真上)。建物はその周りを囲んだコの字型の形状になっています。

土地が北入りであることや、周りの家との関係から、日差しが入りづらくなることが予想されました。他社のプランは、どれも家を道路側ギリギリに寄せて背後に庭を確保するプランで「ありきたりの、柔軟性のない設計」(Sさん)に見えました。

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設計者のAtelier Coa・志賀克巳さん

「通常の設計では、北入りの土地では建物の背後=南側に庭をつくることになりますが、それでは決まった時間にしか家に日差しが入りません。ですから、庭を中心に配置して周りを建物で囲むような住宅プランを提案しました」と語るのは、建築家の志賀克巳さん。拓友建設さんの紹介です。

リビングにも温かな光が入るこのゾーニングをSさんご夫妻も気に入って、建築に至るまでの基本プランとなりました。中庭は、娘さんを1人でも安心して遊ばせられる、また道路からのプライバシーを保てるというメリットもあります。

家具要らずの豊富な収納スペース

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玄関ホールからは階段を真ん中にして右手はトイレ、ユーティリティー、キッチンというプライベートな通路になっています。左側は中庭が見える廊下になっていて、奥のリビングまでつながっています(写真右)。こちらのほうにお客を通すことができるので、不意の来客でも安心。玄関ホール左脇には、客間として使える小上がりのような和室も(写真左)。窓側にフリーカウンターもあり、チェアを置いて景色を眺めながらくつろぐこともできます。

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こちらがリビングルーム。中庭に面した大きな窓も設けてあります。「タンスなど余計なものはまったく置きたくない、すべて収納できるように」というSさんご夫妻の考えで、このようにすっきりとした空間が実現しました。

実は、テレビの左側にも納戸の入口があります。一見、壁のように見えるので教えてもらったときは「これ、開くんですか?!」とビックリ。そんな箇所が、階段下やキッチンの背面など家の中にいくつもありました。

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玄関わきのシューズクロークはお店のコーナーのような広さと収納量

打ち合わせは納得がいくまで時間をかける

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拓友建設の妻沼澄夫さん

拓友建設の妻沼社長が話します。「打ち合わせにお互いが納得するだけの時間をかけるのは、非常に重要だと考えています。別のお客さまで『消費税アップ前に家を建てたい』とご依頼いただいたことがありましたが、私は『お客さまの満足するプランをつくり上げるまでには期間が足りないので、申し訳ありませんが承れません 』とお断りしました。なぜなら、家を建てた後で不満が生じてしまうケースは打ち合わせ不足によることが多いからです。そういった悲劇を起こさないためにも、打ち合わせを大切にしています」。施工は自社で、設計は建築家にというスタンスを取っているのも、それぞれの役割を最大限に発揮するためだとか。

「なんとなく居心地がいい」と思えるのが最高の家

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Sさん邸の浴室は2階にあり、化粧洗面台やトイレなどのユーティリティーもそろっています。寝室には、ひと部屋分ほどのウォークインクローゼットや納戸を配置。ご主人の隠れ家的な書斎スペースも、Sさんご夫妻の意向を入れながら練りに練ってプランニングされたもの。フリースペースも広々としていて、夜はこちらでご家族が過ごすことも多いとか。

また、Sさん邸ではヒートポンプ温水暖房を使っていますが、パネルの高さを低く抑えており(写真右下に見える長細いのがそうです)、圧迫感がありません。

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広々した2階のフリースペースは第2のリビング

夏に入居されてからの住み心地をSさんに尋ねたところ、「気分が違いますね。何をするにも余裕がある」というお答え。さらにお気に入りの場所を聞いてみると、「この場所や部分というよりも、感覚的に暮らしていて『いい』と感じるんです」。その隣で志賀さんが口元を緩ませました。「私としては、例えばキッチンのような"モノ"が良かったと言われるよりも、何か分からないけれどいいなあ、というSさんのような言葉がうれしい。本当に『やった!』と思いますよ」

さらにSさんが話します。「家は一生に一度、何十年もの借金を背負う覚悟で建てるものですから、出来たときは『満足です』としか言いようがない。でも、本当に満足と思える時間を過ごしてきているかどうか、それが大事ですよね」。

オーナーさんと建築家との出会いを「お見合いから恋愛、結婚に至るようなもの」と例える妻沼社長。相性が合わなければ別の建築家を紹介することもしているそうですが、Sさんご家族と志賀さんは理想的なマリアージュ(結婚)をされたようです。

記者の目

志賀さんをはじめ拓友建設さんとタッグを組む建築家は、オーナーの要望に耳を傾けながらもプロの目線で一緒に考えてくれる心強い方たち。失敗しない家づくりのためにはオーナーと建築家、工務店がとことん話し合った上で折り合っていく、その時間と手間を惜しんではいけないと感じました。


2014年11月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。

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