先日、日本建築家協会(JIA)による「JIA建築家大会2013北海道」が札幌をメインに行われました。探検家の関口吉晴さんによる「人類の旅・グレートジャーニー」の講演や、地下歩行空間(チカホ)でのパネルや模型展示など、9日間の会期中には私もワクワクする催しがたくさん!
そして9月8日には、日本の代表的な名建築のひとつといわれる上遠野(かとの)邸(札幌市南区)が1日限りで一般公開されると聞き、さっそく行ってきました。
北海道を代表する建築家の上遠野徹氏(故人)が約45年前に建てたご自宅で、DOCOMOMO100選(携帯電話会社じゃアリマセン。近代建築の記録を残そうという国際組織の略称)にも選ばれています。この100選の中で北海道の建築は上遠野邸のみ。ほかには、フランク・ロイド・ライトや、丹下健三、ル・コルビジェ、磯崎新らの建築が選ばれています。
見学者もたくさん訪れていました。建築科らしい学生さんのほか、普通の若い女性や主婦といった感じの方々も。しゃがみこんで家のディテールを観察したり、携帯やカメラで接写したりと皆さん熱心です。
剥き出しにしたコルテン鉄骨の柱梁とレンガ外壁、そして平行に並んだガラスの造形。車通りの激しい国道近くにありますが、庭園に囲まれたその静かなたたずまいはまるで別世界に来たかのよう。
私も、すぐにその1人となりました。外壁のレンガや鉄骨が同じようでありながら、よく見るとすべて違っている。約半世紀という年数を経てさらに風合いを醸し出した、いわば芸術品といったおもむきです。
そのレンガは札幌産のもので、わざと不ぞろいモノを集めて組み合わせたものだそう。ちなみに鉄骨は室蘭産。
こちらは建物内部、公開されたリビングです。なんと優雅な空間!反対側にはあの開放的な窓とテラスがあります。庭園の眺めが素晴らしく、特にカラマツが黄葉するころは見事だとか。
使われている木材はやはり道産もの。見た目も素晴らしいですが、地場産建材の積極的な使用、北の寒さに耐える十分な断熱、快適な全面床暖房・・・と現代の住宅がめざす方向性と一致しているのはさすがですね。
こちらに写っているのは、息子で現在JIA北海道支部長を務める上遠野克さんのご自宅と事務所。上遠野さん(画像右)は見学者の方たちとも気軽にお話ししていました。
こちらは桂離宮の月見台を模したというレンガ敷きのテラス。庭園も広く、こんなところでゆっくりできたら贅沢な気分になれそう・・・
美しさだけではなく、どことなく親しみを感じさせる上遠野邸。「これは真似できないよなぁ」と言う建築家らしい人の隣を、家族連れがあちこち指さしながら楽しそうに歩いていく。季節によっても印象が変わりそうなこの貴重な建物とガーデン、ぜひ再度公開される日を願っています。
2013年09月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。