㈱トキメキデザイン・アトリエの天道涼子社長は、以前は札幌の不動産会社に勤めていた。2014年に同社を起業したのは、学生時代の同級生で、設計事務所を運営する石原英祐さんが行うリノベーションに衝撃を受けたのがきっかけだった。
不動産会社の新築住宅は土地の大きさや家族構成などに基づいて間取りを決め、画一的にプランすることが多い。中古住宅の販売でも、壁紙を貼り替えたりする程度の、いわゆる『表面補修』で、できるだけコストを掛けずに利益率確保を目指す傾向がある。
ところが石原さんは、オーナーとのヒアリングを重視。奥様が料理をする時に、棚や調理器具をどう使うか、ご主人が冷蔵庫からビールを取り出す際に奥様とストレスなくすれ違えるか、テレビやソファーの配置など家族の動線も緻密に検討し、プランに落とし込んでいた。天道さんは「石原さんは男性とは思えないほど女子力が高く、暮らしの組み立てやインテリアコーディネートなども徹底的に考えている。こんな丁寧な家づくりがあるのかと驚きました」と振り返る。
(写真撮影:光写真事務所)
一方、石原英祐専務は、30代の大半をリフォーム業界で有名な工務店で勤務しスキルと経験を磨いた。設計事務所として独立後は、マイホームの取得コストを抑えたい子育て世代によるリノベーションのニーズが増える一方、不動産会社が物件の建物状況調査(インスペクション)を拒む、明らかに雨漏りしているのに告知しない、仲介手数料とは別のバックマージンを要求するといった商習慣に不満を感じていた。自身の事業については、オーナーの要望を実現しようと頑張るあまり、利益率が下がってしまう課題も抱えていたという。
物件紹介と住まい提案で差別化
そこで天道さんと石原さんはお互いの長所を活かし、既存の会社を社名変更する形で㈱トキメキデザイン・アトリエを2014年に起業した。集客・広報戦略の軸はウェブサイト。言葉の意味が浸透しつつある一方、まだ競合が少なかった「リノベーション」というキーワードで、Google検索で上位表示を実現し、集客につなげている。土地や中古住宅の物件探しから関わるケース、リノベーションの依頼から始まるケース、マンションリノベーションの依頼など要望は様々で、老朽化の進む物件では性能やコストを比較して新築も提案することもある。
同社の特長は不動産業とリノベーションを合体させた事業内容にある。「インスペクションをしたい」と売主に打診するとあら捜しをしようとしていると思われるのか、敬遠されることもあるが、不動産業者の立場で鍵を借りに行くと、じっくり物件のチェックができる。住宅の改修で思わぬ追加工事の発生リスクを減らせるので買主のメリットも大きいという。
リノベーション需要の高まりに合わせ、今後はリノベーション済みの中古物件のモデルハウス展示・再販など新たな事業やウェブサイトの強化などにも取り組む計画だ。
㈱トキメキデザイン・アトリエの公式サイト
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