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SUDOホーム、持続的なものづくり会社目指し 札幌と伊達の大工17人を社員化

棟梁:宮口孝好さん


札幌・伊達・ニセコで住宅事業などを展開するSUDOホーム/須藤建設(株)は、大工を正社員として雇用する仕組みを整え、大工グループを設立して17人を社員に迎えました。子会社の(有)スドウホームに在籍していた大工のほか、専属大工も雇用し、一方で希望しない大工は専属として今まで通りの雇用形態も守りました。

ものづくりの伝統をどう守るか


棟梁:土門 勝博さん.窓から内浦湾・太平洋を望む伊達の常設モデルハウスkai gan


住宅づくり・建物づくりは、大工やその集合体である工務店が担っています。大工の親方である棟梁(とうりょう)はこれまで、間取り(設計)から始まり、基礎や建物構造だけでなく、ドアや収納をつくる建具職人、屋根職人、壁を仕上げる左官職人、水道などの設備にも目を配り、つくり手の責任者であるとともに家を完成まで導く責任者でもありました。

その後、営業と設計を担当する会社が誕生し、実際のものづくりは下請と呼ばれる工務店が行う体制が生まれます。大工職人がたくさんいた時代は、それで家づくりがうまく回っていました。


豊浦神社(完成時)。棟梁:須藤幸次郎さん(初代)


噴火湾に面した道南・豊浦町で1918年に豊浦神社の普請(新築工事)を請け負ってから、2019年で創業101年を迎えたSUDOホーム/須藤建設は、コンクリートの大型建築を主にしていた時代にも職人をグループとして雇用し、ものづくり・施工力を維持してきました。
常に一定の施工力を自社・グループ企業で確保し、ものづくり集団であり続けることが須藤建設のDNAでした。


コンクリート外断熱の実験住宅


創業から67年後の1985年にコンクリート住宅の外断熱工法で、室蘭工業大学・鎌田紀彦研究室(当時)らによる実験住宅の施工を担当し、その後木造住宅を再開したのは、鎌田教授が開発した新在来木造構法にいち早く取り組み、結露やスガモリといった悩みから解放された、あたたかくてオープンな間取りをつくることができる木造住宅の技術を習得したからでした。

ものづくりの技術とともに設計・デザイン力にも取り組み、傾斜地でもコンクリート建築でも複雑な間取りでも、自社設計と自社施工でつくりあげる力を高めてきました。ただ、この先も施工力を維持していくためには、グループ会社ではなくSUDOホーム/須藤建設本体として木造住宅づくりでもっとも大切な大工を直接雇用することが必要と考えたといいます。

凝った設計も苦にしない大工たち


棟梁:関 誠さん


SUDOホーム/須藤建設の大工育成の取り組み開始は20年以上前にさかのぼります。
大工職人の不足が徐々に問題となってきた21年前の1998年に「匠塾」の名称で大工育成を本格的にスタートさせました。同社の家づくりはその後、お客さまのこだわりを形にする凝った室内空間や木外装など、本格木造注文住宅へと進化し、ニセコ地区の高級別荘の受注も増えて、デザイン力とそれをかたちにする施工力が人気を集めています。


屋根の図面を指さしながら木材の加工について説明する棟梁統括の杉山勝朗さん


難しい案件を一手に引き受けるのは、棟梁統括の杉山勝朗さんです。同社の設計はこう配屋根を中心に60度でも30度でもない複雑な角度がからむ設計が少なくないそう。そういった住宅を大工が現場でスムーズに工事できるように、パソコン上で木材の加工図面を書いているのが杉山さんです。現場仕事は数年前に卒業しましたが、70歳にしてパソコンで図面に向かっています。「加工図を数点書いてあげれば、工場はわかってくれる」と杉山さん。設計と工事をつなぐかなめの仕事を楽しそうにこなします。

お客さまも働き手も安心・満足できる仕事を目指し


大工朝礼でスピーチする社長の須藤正之さん


大工はこれまでも子会社のスドウホームが雇用し、SUDOホームの工事を引き受けていました。ただ、高卒の新人を採用する際に、SUDOホーム/須藤建設なら就職先として安心できるという保護者の声があったことも事実。「役員会で子会社・スドウホームの吸収合併をお願いし、今期から実現しました」と担当役員である深瀬正人専務は語ります。

「今年からは求人のための企業パンフレットにも大工を盛り込むことができます」と須藤正之社長。「設計も生産も一体でSUDOホームの家づくりを進めていきたい」と深瀬専務。

1人ずつ丁寧に説明し選んでもらった


月初に開かれる大工朝礼の席上で専務の深瀬さん


社員化は、じっくり時間をかけて慎重に進めました。前年の12月から大工1人ひとりにこれまでの会社の姿勢と今後の取組を説明した上で意思を確認。会社のイベントへの参加も今年から始まり、10月には恒例のSUDOの森づくり会には大工グループも参加し、OB施主たちといっしょに汗を流して植林したり食事を取ったりして、森の中で楽しい時間を共有しました。

札幌に根を張るSUDOホーム


棟梁:宮口 孝好さん.札幌初の常設モデルハウス「dandan」


「本社がある胆振・伊達地域に加え、札幌とニセコへの進出が、結果として大工の正社員化に間接的につながった」と振り返るのは、深瀬専務の前任で、大工育成の取組を開始した当初から大工会社を担当し現在は相談役の須藤芳巳さん。冬場に工事が少なくなりがちな北海道で、各拠点が協力しながら施工力を維持することができるようになったそうです。


棟梁:宮口孝好さん


札幌支店の大工は、本社がある伊達から異動で札幌に暮らしています。兄とともに札幌の大工6人を引っ張る宮口孝好棟梁(40歳)は「嫁が札幌転勤を後押ししてくれました」と当時を振り返ります。昨年札幌で家を持ち、根を下ろしました。


札幌の大工たち


棟梁:宮口孝好さん


須藤建設は、SUDOホームの名で注文住宅を提案する住宅部門のほかに、一般建築部門も持ち、千葉県にも支店を持つ総合建設業。支店の独自性を維持しながら、各部門の協力体制を固めています。ものづくりへの情熱というDNAを大切に、札幌やニセコ、伊達エリアで楽しい家がつくられています。新しい体制のSUDOホームに期待がふくらみます。


2019年12月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。

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