家もそろそろ古くなった、家族構成が変わった……そんなとき、建て替えもしたいけれど予算を考えればやはりリフォームと選択する方も少なくないのではないでしょうか。しかし、リフォームの程度によっては新しい住宅を建てることも可能かもしれません。今回はリフォームの予算で新築の注文住宅を手に入れることができた一軒のお宅をご紹介します。
リフォームで予想外の見積金額にビックリ
Iさんご夫妻は40代、ご主人は教員で高2、中2、小6と3人の娘さんがいらっしゃいます。奥さんの父親が長期療養中のため、5年前にご家族は空いていた実家に引っ越してきました。ところが、建ててから約25年経過した家はうす寒く、間取りは5人家族には手狭な29坪と、だんだんと住みづらさを感じ始めたそうです。
1階では、たった1台ある石油ストーブの前でみんなが固まっている生活だったとか。また、「2階には3室あったんですが、そのうちの1つは両親の物でいっぱい。残りの2部屋を娘3人で何とか使っていたんです」(奥さん)。外壁の古さも目に付き「これは何とかしなくちゃいけないな」とIさんも感じていました。
できれば新築を建てたいと思いながら住宅展示場も回ってみましたが、娘さんたちにかかる教育費などを考えると手が届かずあきらめることに。次に、大手や中堅の会社にリフォームの見積もりをしてもらいましたが、実はIさんたちが思っていたよりもかなり高い費用になることが分かりました。
これには、Iさん宅側の事情もありました。「うちには車が2台あって、古い家の時はそれが入りきらずに少し道路部分まではみ出していたんです」(Iさん)。除雪車がそこを避けて雪が残ってしまうことや、ご近所の迷惑になることも気になっていました。それをリフォームで解決するには、建物本体の前部分を引っ込めて後ろに増築する必要があるなど、大がかりになる分だけ費用がふくれ上がってしまうのです。
本当に希望通りの新築住宅がつくれる?
「とりあえず住宅にどのぐらいのお金をかけていいか分からなかった」というIさんご夫妻は、秋ごろ知人のフィナンシャルプランナーにライフプランの診断を依頼して、そこから住宅費用に充てられる金額を計算してもらいました。
その時に、今までのリフォームに関する見積書を見せたところ「この予算なら新築のほうがいいのでは」とのアドバイス。「新築はあきらめていたのに」と驚くIさんたちに、「この方ならいろんな研究をしているから低コストの家を上手につくってくれる」とフィナンシャルプランナーに紹介されたのが、白田建築事務所の白田さんだったのです。
白田さんと会ったIさんご夫妻は、家づくりに当たって"限られた空間の中でも子どもたち3人の個室やピアノ室をつくること、両親のものがたくさん残っているので収納を多くすること"等々、家族で話し合ったメモを持って希望を細かく伝えました。念のため、白田さんには新築とリフォームの場合での2通りで計算をしてもらいましたが、そこで出された見積額は大きな差はありませんでした。
「今までリフォームの方が安いと思っていたんですよ!」と奥さん。「それが、白田さんは同じような金額で私たちの希望に合った家をつくってくれるというので、びっくりしました。それに、新築なので基礎部分もしっかりとしたものができるのは、やはり安心ですよね」。
ちなみに、白田さんがIさんから見せてもらった大手会社のリフォームプランでは、同じ程度の価格でも暖房設備は含まれていなかったとか。もちろん、白田さんが手がけたプランでは一歩進んだヒートポンプ式暖房を採用して電気代を節約しながら暖かくなりました。
2月の電気代は、暖房、給湯、調理を含むすべて合計して2万5000円ほど。この安さにはIさんも驚いたそうです。
建築中でも対応してくれるきめ細やかさ
注文住宅の魅力は、なんといっても建てる側の自由度が高いこと。予算の範囲内だと大手住宅会社では制限もあるようですが、細部までの希望を相談しながら可能な範囲で提案・実現させてくれたのが白田さんでした。「造作家具は建具屋さんに頼むと高くつくので、大工さんの技術で可能な棚などはつくってもらいました。これがコストを抑えられる一つの理由です」(白田さん)。家の中を見わたすと、スペースにぴったり合う棚や収納があちこちにありました。
リビングと続きになった和室にも秘密が隠されています。正方形の畳を外せば、その下は3畳分がまるごと収納スペースに。深さも45センチとたっぷりです。「見たときは"まあ、なんてことでしょう!"という感じでしたね」と、笑う奥さん。白田さんによれば「Iさんのお宅では、たくさんあるご両親の物を何とか収納したいというご要望がありましたので、基礎断熱を採用して床下の空間を有効利用しました」とのこと。階段下にも大きな収納庫が設けられるなど、あらゆるスペースが無駄なく活用されています。
さらに、壁をくり抜いた飾り棚も便利な収納や素敵なアクセントになっています。よく見れば、キッチンカウンター横のわずかな部分にも本棚のスペースがありました。「ここに料理本が入ればいいなと思ったんです」(奥さん)。白田さんも「壁の厚さが約25センチありましたので、すき間をうまく利用できました」。このように、建てている途中にIさんたちが思いついたことで実現したアイデアも少なくありません。「白田さんは建築中もしょっちゅう来てくれまして、『こんなのがあればいいなあ』って言うと『いいですよ』って答えてくれるんです」。白田さんも「やはり、家がある程度できてからじゃないとオーナーさんも現実的なイメージが浮かばないでしょう?ですから、建てながら新しいアイデアが出てきてつくっていった部分もあります」と説明してくれました。
満足の注文住宅が完成
前は29坪だった広さも、新しい家では39坪に増えました。1階はリビングとそれぞれの部屋に間仕切りや段差がない広々とした造りで、2階には娘さんたちの個室も確保されています。寝室からは「山や公園が見えたらいいな」という奥さんのひとことで付けられた横長の窓から緑いっぱいの風景が見渡せます。また、周りを住宅に囲まれた立地ですが、窓をうまく配置することで光の差し込む明るい家になりました。
また、Iさんの希望とは違ったものの、こんな白田さんの提案もありました。それは、バスルームを2階に配置したこと。全体の間取りと面積のバランスを取るためもありましたが「これが、2階にしてちょうど良かったんですよ」と奥さん。「やはりお風呂は女の子たちの部屋のそばにあるのがちょうどいい。それに、娘たちが帰ってきて制服を着替えるときに出る洗濯物も2階で片付けられるから、とても動線がいいんですよね」。今は白田さんのアドバイスで正解だったと納得しているそうです。
「限られたスペースでよく工夫していただいたと思っています」と、うなずくIさんご夫妻。「本当にこの予算で注文住宅がつくれたんだ!という感じです。『白田さんじゃなくて、ほかで頼んだらこんなふうにはできなかったね』と夫婦でよく話をしています」。お年頃の娘さんたちも個室があって満足の様子です。それでも、勉強はみんなリビングのテーブルに集まってすることが多いのだとか。程良いプライバシーの確保とコミュニケーションが両立できているのは、ご家族の思いが隅々まで反映されている家であってこそのようです。
2011年03月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。