Story 取材記事

換気排熱利用の融雪システム・採光が心地よい街中の一軒家 札幌市


ワインブラックの幅広ガルバリウムに三角とフラットの複合屋根。スタイリッシュな中に温かさを感じさせるこちらのお宅は、札幌市白石区の住宅街に建つMさん邸です。築50年が経っていた奥さまのご実家を建て替え、二世帯住宅にしました。ご夫婦と小学生の2人のお子さん、奥さまのご両親の2世代・6人家族が暮らしています。

今回は奥さまとお母さま、そして設計を担当した白田建築事務所の白田智樹さんに、家づくりについてお話をうかがいます。



玄関にたどり着くと、素敵な表札が迎えてくれました。札幌軟石でつくった白田さんのお手製です(実際はアイアン製の表札が付いています)。

石板は石切り場に出向いて調達したものです。赤茶色の木製ドアと、金属のガルバリウムに天然石の表札。異素材の組みあわせが楽しく、個性的なエントランスに仕上がりました。それでは家の中を拝見していきましょう。

居室配置と動線の工夫が光る1階



吹抜けを設けた明るくオープンなLDK。吹き抜けからの採光が、柱やOSB合板を優しく照らし出し、心地よい空間が広がります。



奥には和室も備えています。右手廊下の突き当りにはトイレが、右に曲がるとご両親の寝室へとつながっています。



ご両親の寝室に向かう右手側にはユーティリティがあります。奥の引き戸から出入りができ、浴室・洗濯脱衣室・洗面室が一直線に配置されています。

手前の洗面室は玄関ホールにつながる回遊式で、お子さん世帯は主に玄関ホールから出入りをする動線。2世代がそれぞれの暮らしのリズムを大切にできる造りです。



こちらがご両親の寝室です。寝室の上には居室が無く、2階の生活音に影響されない設計。壁際にはお母さまがミシン掛けをするための作業デスクも備えています。右手に見えるガラス戸は建て替え前の住宅で使っていた建具をリユースしたもの。

ガラス戸の向こうは、換気扇を備えたお父さま専用のたばこ部屋です。テレビを見ながらソファでゆっくりと一服ができる、お気に入りの場所になっています。

2階子世帯はフリースペースやファミリークローゼットが大活躍



明るい階段室を上りきったホールにも、洗面台を造作。手洗いや朝晩の歯磨きに使っています。



屋根傾斜を生かした2階フリースペース。今はお子さんのプレイルームになっていて、お友達にも好評です。



手すりからはリビング・ダイニングの様子が見下ろせます。上下階でも家族のコミュニケーションが取りやすいのも安心です。



向かって正面に子ども部屋が2部屋、廊下の途中にはファミリークローゼットがあります。



三角屋根を半分ずつ共有するような形で配置された子ども部屋。今は小6のお兄ちゃんとご主人が使っています。「机を造作した4.5帖の広さがちょうどいいんです」と奥さま。



子ども部屋がコンパクトでも過ごしやすいのは、廊下途中に設けたファミリークローゼットがあるから。3帖大の広さに、家族の衣類や道具がきれいに収まっています。2階にはこの他に、ご夫婦の主寝室があります。

南隣に4階建て集合住宅・日射取得が大きなテーマに

家づくりにあたっての希望や、プランの上での課題や工夫などについて、Mさん親子と白田さんにうかがいます。



Q 設計の上で工夫された点は何ですか?

白田さん 南隣に建つ4階建てアパートの影響で、南からの採光が困難だったため、日射取得が大きな課題となりました。



日中光が入らないLDKを明るく保つため、吹き抜けをプラン。昼間の光を最大限に生かせるよう、建物正面(南西)から2階フリースペースの窓に入る光が、そのまま1階のリビング・ダイニングまで届くようにしています(矢印1)。昼を過ぎると今度は吹き抜け窓(北西)からの採光になります(矢印2)



階段室も採光を確保する重要な空間です。ここの吹き抜け窓から入る光が、玄関まで届くように設計しました。


集合住宅に隣接する玄関は、SCLや玄関ドアの採光窓、階段室からの採光で充分に明るい


Q 家づくりの要望は?

奥さま 両親が暮らしやすいよう、寝室の近くにトイレ・水回りがある間取りを希望しました。それから収納も多くお願いしました。玄関横のSCLや、2階のファミリークローゼットはとても重宝しています。



お母さま 大きな仏壇があるので、和室も必要でした。引き戸付のフラットな仏間をつくっていただき、普段はスッキリとした空間になるのも気に入っています。



奥さま 明るいキッチンも希望していました。それから、6人家族の配膳や片付けがしやすいよう、作業カウンター付の食器収納も。キッチン側からは食器を出し入れしやすく、電子レンジなどの家電もきれいに収まるように造ってくださいました。



左/ダイニング側は片引き戸にして、新聞や本、スマートフォンのちょっと置きにも便利な収納になっています。白田さんのオリジナルです。

右/パントリーは階段下に造ってもらいました。家事動線がよく、こちらもとても気に入っています。

Q 地熱利用のアースチューブを使った換気システムや床下暖房について感想は?

奥さま 高気密・高断熱なので、設定温度は20℃で十分。新鮮な空気を取り込んで循環しているので、空気環境もとてもいいと思います。何より、玄関からお風呂の床まで家中が温かく、足もとから快適そのものです。


玄関に向かうアプローチの途中に設置した融雪プレート


奥さま 室内の快適性もそうですが、冬は融雪プレートが大活躍してくれています。室内換気の排熱だけを活用して雪を融かす、エネルギーを使わないエコなシステムなので、高騰するエネルギー価格の心配もなく、とても助かっています。


アースチューブの吸気口。このパイプを通じて屋外の新鮮な空気を床下に取り込む


記者の目



「息子がトランペットの練習をしていても、外からはほとんど聞こえなくなりました」と奥さま。高気密・高断熱に加え、アースチューブから給気する換気システムは外壁に換気口が必要ないため、音漏れの心配も無くなったということでした。



お子さんたちもこの家をとても気に入っており、息子さんは作文に書いて、コンクールで入賞したそう。それを聞いた白田さん。「何より嬉しい事です」と感激しきりでした。

カメラ 村川写真事務所
取材・記事 iezoom編集部 松下綾

白田建築事務所さんのアースチューブの換気システムについては過去の記事で詳しく紹介しています。

真っ白な三角屋根の一軒家
田園風景広がるカフェ併設の家


2023年02月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。

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