札幌のYさんは公務員。共働きの奥さんと団地住まいでしたが、奥さんのご両親の家を建て替えて一緒に住むことになりました。
傾斜地を生かしたプラン
限られた予算の中で難航した住宅会社探し。数社に絞ったものの、ハウスメーカーは「いくつかのパターンの中から選ぶお仕着せの感じがイヤ」(Yさん)で、誠意を持って相談に乗ってくれる白田建築事務所さんに決定しました。 家の外壁は深みのあるグリーンのガルバリウム鋼板で落ち着いた印象、加えて目隠しにもなるウッドフェンスのオレンジ色が明るさを感じさせます。 また、傾斜地であることを活用してウッドデッキの下にタイヤ収納庫を設置し、カーポート側から取り出しできるようにしました。傾斜地なので、道路側からリビングまで90cmの高低差があります。写真で見ると、ウッドデッキの床面あたりがリビングの床の高さになります。通常は玄関前に外付けする階段を、積雪時の安全を考えて屋内に造りました。それが下の写真です。玄関の両わきには、家族4人の靴を収納する引き出しが造作されています。奥行きもたっぷりで「冬靴も全部入るからありがたいですよ」とお父さん。
親娘のアイディアで便利な収納がいっぱい
写真右手の壁面収納のうち、色が濃い部分は、靴をはくときに座面を引き出せる収納いすです。これらはYさんの奥さんとお母さんが希望したもの。「温泉施設で見かけたいすを『これ便利!と思って付けてもらいました」とお母さん。こんなふうに、母娘ペアで白田さんにどんどんアイディアを出していったそうです。
こちらはリビングルーム。テーブルやテレビを置くローボード、壁面の棚なども造作ものです。小上がりスペースは「いすのように、隅に座ってくつろぎながらテレビを観たい」というお母さんのリクエスト。中は収納部分として活用し、来客時にメインテーブルと簡単につなげられるサブテーブルも入っています。
こちらは、2階から階段を見下ろしたところ。踊り場のスペースを少し広めにとって、家族全員が使えるパソコンスペースにしました。左側の壁にある小さなのぞき窓からリビングの様子を見渡すこともできます。
また、階段を上った先には、カウチソファとテレビを備えたYさんご夫婦の「くつろぎコーナー」を設けました。Yさんご夫婦もよく過ごすお気に入りのスペースだそうです。
Yさんの家は延床面積が43坪。二世帯住宅としてはコンパクトですが、空間を上手に使いながら、1階にはリビングとご両親それぞれの個室、2階はYさんご夫妻の寝室と客室、それに部屋としても使える納戸も確保しました。
家に仕事を持ち帰ることも多いYさんですが、軽い仕事の時はパソコンスペース、集中力が必要な時は客室と使い分けています。
電気代タダの融雪槽
昨年12月から住みはじめて1年近く、「冬はとにかく暖かくて、家の中では半袖で過ごしていましたよ」と振り返るYさんご夫婦。ご両親によれば、建て替え前の家では灯油代が月10万円になることもあったとか。この冬の暖房費は、同じ二世帯でも最大3万円ちょっとで済んだそうです。
白田さんが重視しているのは、ローコストで維持費も安く快適な家。壁には105ミリ、外側には45ミリのW断熱方式で十分な断熱性能を確保。暖房と給湯はエコジョーズ。床暖房を採用して室内には放熱器がなくてスッキリしています。
「暖房費が安いのは、これが利いているんだと思います」と白田さんが紹介してくれたのが「アースチューブ」という省エネ換気部材。これは、新鮮な空気をそのまま室内に取り入れるのではなく、地中にダクトを通して地中熱でプラス気温になるまで暖めて室内に入るもの。「家の中に氷点下の空気が入らないのでエネルギーを相当節約できる」とのこ と。地中の温度は年中安定しているため、暑い夏には逆に空気の温度が下がり、除湿効果もあるそうです。
カーポート前には、ランニングコストがゼロになる融雪槽を設置しました。これは、換気システムの排気熱を利用するもので「タダで雪がどんどん溶けるんですよ!」と、お父さんも感激の様子。
建築時の費用もそうですが、コンスタントにかかる光熱費もローコスト。お財布にも優しい、白田さんの腕が存分に生かされた二世帯住宅です。
造作のベンチが3台もある広いウッドデッキ。暖かいシーズンには、皆さんでジンギスカンを楽しんだそうです。
初めは「同居するYさんが気を使うことになるのでは」と心配していたという奥さんのご両親。1階にキッチンやバスルームを共有しましたが「家族全員で食事をする生活なので、特に分けるこだわりもありませんでした」とYさんご夫婦は話します。リビングでは、4人でおしゃべりやゲームなどをして過ごすことも多いとか。
二世帯住宅であれば、なおさら「設定されたお仕着せのパターン」ではなく「我が家らしい暮らし仕様」にしたいもの。Yさんファミリーが笑顔で話す向こうの窓に、前の家から残したというモミジの紅葉が映えていました。
記者の目
「夏は思ったより暑いんです」とYさんファミリーは話していたのですが、白田さんは状況をよく聞いてから「窓を開けるのではなく、換気量を増やして地中の冷気をたくさん入れるほうが快適ですよ」とアドバイスしていました。こうしたアフターフォローがあることも、住宅会社選びでは大切だと感じました。
2013年11月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。