築68年だった実家を建て替え、2023年11月に完成した平屋で暮らすSさん。慣れ親しんだ土地に「暖かく明るい、シンプルな平屋」を建てたいという希望からSさんの家づくりはスタートしました。
家づくりのパートナーに選んだのは、素材を活かしたシンプルなデザインと「アースチューブ」を利用した床下暖房システムで、エネルギー効率の良い住宅を数多く手掛けてきた白田建築事務所(札幌市)です。
オーナーのSさんと白田建築事務所・一級建築士の白田智樹さんに家づくりのエピソードをお聞きしました。
木がふんだんに使われた室内と朝日が差し込む吹上天井のリビング
Sさん 家を建てる時の一番の希望は、神棚に朝日が当たるような設計にしてほしいということでした。建て替える前の家は寒くて本当に大変だったんですけど、唯一良かったのは毎年1月1日の朝に神棚に朝日が当たることだったんです。
白田さん 一番の希望である神棚の場所から設計を考え始めました。採光のために吹上天井にして、現しにしたOSB合板の壁や松を使った柱は、時と共に色の変化を楽しめるよう素材そのままの色を生かしています。
窓から差し込む光は奥の仏間まで届きます。梁の裏には間接照明が配され、夜も柔らかな光が空間を包みます。
寒かった家が足元から暖かく快適な住まいに
1956年に建てられたというモルタルの住宅はメンテナンスしながら大事に使ってきましたが暖房が行き渡らない部分もあり、「次に建てる家は暖かい家にしよう」と考えていたと言います。
Sさん 家と同じように家具もメンテナンスしながら長く使っていきたいし、そういう要望も聞いてくれる住宅会社にお願いできるのであれば建て替えてもいいかなと思いはじめました。
古くからの知人に相談したところ「暖かくて明るい、木をたくさん使ったナチュラルでシンプルな家にしたい」のであればと白田建築事務所を紹介してくださったんです。
白田さん アースチューブから新鮮な外気を床下に取り込み、床下に設置した暖房で暖め、家全体に行き渡るようにしています。また、Sさんの住まいでは排熱をパイプに流して活用する融雪システムも作りました。
写真は建物正面。壁面沿いにパイプが見えます。冬期にはパイプを通る排気熱が融雪の役割を果たします。
「室温にムラがなく、初めての冬を暖かく快適に過ごすことができました」とSさん。融雪システムも限られた敷地内での雪の処理に重宝しているそう。
思い出の家具と調和・木の香りに包まれるナチュラルな室内
現しのO S B合板がナチュラルな風合いの寝室。以前の住まいから長く使ってきた和箪笥や本棚が白田さんのデザインする空間とマッチしています。
寝室の窓からは、見頃を迎えていたライラックやツツジが咲く中庭を望むことができます。手前の木はこの春に植えた桜です。来年花が咲くのが楽しみだと話すSさん。
扉を開けた瞬間に木の香りが広がる玄関。ガラスがはめ込まれた引き戸からも明るい日差しが差し込みます。
遊びに来るご近所さんにも「木の香りが良い」と好評です。
ガラス引き戸の奥には物干しスペースがありました。天気に左右されず安心して洗濯物を干すことができるスペースは、縁側のような趣のある空間です。
明るいリビングは近所の仲間が集まる憩いの場所に
音楽鑑賞やパン作りなど、多趣味なSさんの元には絶えず近所の友人が遊びにやってきます。
Sさん 天井が高いので音の響きがとても良いんです。近所のお友達は「毎日音楽を聴きに来て良いかしら?」っていうほどなんですよ。
白田さん OSB合板と杉の柱の凹凸や、傾斜天井の形状が、程よい反響を生み出し、音楽鑑賞するのにとても良い空間になりました。
「雰囲気が良いから毎日遊びに来たい」というご近所さんがいるほど評判の住まい。CDプレーヤーが故障した時は白田さんがコンポを直しにきたこともあるのだそうです。
住み慣れた場所で叶えた暖かく快適な暮らし
Sさん 前の家の寒さからは考えられないほど、暖かく快適に過ごすことができています。明るくてシンプルで、白田さんにお願いして本当に良かった。
内装について「ナチュラルにしてほしい」という要望だけを伝えて、細かなリクエストは特にしなかったというSさん。白田さんが要望を汲み取り形にすることで、Sさん好みの住まいになりました。
記者の目
建て替えに至る経緯や間取り、家具のひとつひとつが持つエピソード、お話を聞いている時に流れていた音楽に至るまで、Sさんの住まいは新築でありながら、家族との思い出が詰まった懐かしさを感じる空間でした。
オーナーに寄り添う白田さんの家づくり。その魅力を実感した取材となりました。
カメラ/スタジオスーパーフライ 大道貴司
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