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ほどよい距離感にこだわった店舗兼2世帯住宅 石狩市・鎌田さん/白田建築事務所

2世帯住宅のポイントはお互いに居心地のよいスタンスを保つこと。同居するお母様と一緒に酒屋さんを営む鎌田さん夫妻が選んだのは、リビングとキッチンは別々だけど玄関は1つの住まいで、親世帯と子世帯が行ったり来たりしながら、それぞれの生活を楽しむライフスタイルでした。

1階は木の羽目板、2階はガルバリウム鋼板で張り分けたスタイリッシュな外観
1階は木の羽目板、2階はガルバリウム鋼板で張り分けたスタイリッシュな外観
玄関ホールから2階にまっすぐ上がる階段は、親世帯用。左のトイレの天井が斜めなのは、そこに子世帯の階段が通っているから
玄関ホールから2階にまっすぐ上がる階段は、親世帯用。左のトイレの天井が斜めなのは、そこに子世帯の階段が通っているから
2階にある親世帯のリビング。眺めが良くて明るいから2階を希望したそう
2階にある親世帯のリビング。眺めが良くて明るいから2階を希望したそう
娘さんの部屋は、ロフトスペースが自慢。天井は、蓄光塗料で夜になると光る星空となる
娘さんの部屋は、ロフトスペースが自慢。天井は、蓄光塗料で夜になると光る星空となる
子世帯の階段は、壁をウォールラック風にアレンジ
子世帯の階段は、壁をウォールラック風にアレンジ
鎌田さんご家族が使う1階LDK。合板を白く塗ったのが効いている
鎌田さんご家族が使う1階LDK。合板を白く塗ったのが効いている
上の写真のカウンターテーブルは、来客時には大きなテーブルに変身する
上の写真のカウンターテーブルは、来客時には大きなテーブルに変身する
1階キッチンからリビングを見る。明るく落ち着いた空間が広がる
1階キッチンからリビングを見る。明るく落ち着いた空間が広がる
1階の店内で鎌田さんご家族4人が揃って記念写真。背後の業務用冷蔵庫は白田さんが設計・制作したオリジナル品
1階の店内で鎌田さんご家族4人が揃って記念写真。背後の業務用冷蔵庫は白田さんが設計・制作したオリジナル品

ムダだらけの家を暮らしやすく

石狩市花川南1条5丁目にある「鎌田本店」は全国各地の地酒を扱う酒屋として、長年地域の人たちから親しまれてきました。昨年、10月1日の「日本酒の日」に合わせて築41年の店舗兼住宅を和モダンな建物に建て替えました。

酒蔵をイメージした和のたたずまいの店構え。モノトーンの店内には日本酒ファンなら思わず手をのばしたくなる銘酒が整然と並んでいます。

以前の店舗兼住宅は延床面積175坪もありました。普通の家の4~5軒分です。もともとスーパーだったため、店舗部分も大きすぎました。お店の2階は全くの空きスペース。使っていない居室もあったそうです。

奥様もお母様も口をそろえて「ムダな部分が多すぎたんです。使い勝手が悪いうえ、光熱費がかかってたいへんでした」。

親世帯と子世帯の玄関が別々にある家の造りもお店が忙しい時、お母様に子供を見てもらわなくてはならない鎌田さんには不向きでした。「お店のことがあるし、せっかく2世帯で住むんだからコミュニケーションがとりやすい家じゃないと」と奥様。

お母様もお孫さんと距離感のある間取りが不満だったようです。「孫たちが私の顔を見に来るのに、いちいち建物の外に出なくてはなりませんでした。お店から居住空間に出入りすることもできなかった。増築を繰り返しているうちに迷路みたいな家になってしまったんですね」。

老朽化も進んでいました。「3年ほど前からリフォームを考え始めたんですが、広すぎてコストがかかるため、条件の合う業者さんがなかなか見つかりませんでした」。

そんな悩みを親身に聞いてくれたのが、お店のお得意様として10年以上お付き合いしている、白田建築事務所の白田智樹さん。「使っていない空間を残したまま、断熱・気密性能も耐震性も不十分な古い建物をリフォームで思い通りにするのは難しい。お金もかかります」というアドバイスで思い切って建て替えることにしました。

付かず離れず、にぎやかに

新しい建物は前の半分以下の75坪。お店を切り盛りしながら2世帯6人が暮らすにはちょうどいい広さです。レジカウンター近くのドアから店舗と居住空間を行き来できるようになり、プライベートで急な来客があっても慌てることがなくなりました。

玄関ホールのまっすぐな階段を上ると、お母様とご主人の妹さんが暮らすスペースがあり、小上がりのあるリビングや客間、寝室があります。キッチンと客間の間に引き戸が見えます。「納戸かな?」と思って開けると、なんとそこには別の2階ホールが。

ホールの先は、子世帯の鎌田さん夫妻のベッドルームと子供部屋です。そのホールにも階段があります。さっき上がってきた階段とは別です。どうなってるのでしょうか?実は、親世帯の階段と子世帯の階段とが隣り合わせになっているのです。2つの階段は、壁で仕切られているのでお互いは見えません。2世帯がプライベートを確保しながら気軽に行き来できる白田さんのアイディアです。ちなみに、子世帯の階段を下りると、1階の子世帯のリビングにつながっています。

「音で『あ、いるんだな』とわかります。孫たちが遊びに来やすくなったおかげで毎日が賑やか」とうれしそうなお母様。「子供がリビングを通ってから自分の部屋に入るようにしたい」という奥様の希望も実現しました。

コストを抑えた無駄のない空間

居住空間は柱や梁、構造用合板を表しにした白田さん独特の設計。柱と柱の間に板を渡せば欲しいところに棚が造れます。石こうボードやクロス仕上げの壁をなくすことでコストを抑えられるだけでなく、自由に壁を収納スペースとして使えるメリットがあります。

また、建て主が積極的に家づくりに参加するきっかけにもなります。
「リビングや寝室の壁は白い方がいいと思って夫婦でペイントしました。途中でくじけそうになったけど、今更やめられないと自分に言い聞かせ、気合いで塗り上げました」。ナチュラルモダンな空間に変身です。

11歳と7歳の娘さんの部屋はどちらも収納力タップリのロフト付き。小屋裏を利用できる屋根断熱の良さを生かした三角の天井には天窓が付いています。いつもは間の引き戸を開けて仲良く過ごす2人ですが「ケンカした時は閉めちゃう」。

鎌田さん夫妻の寝室のウォークインクローゼットも、小屋裏空間まで収納スペースとしてフルに活用しました。

子世帯のリビングには階段下のデッドスペースを利用した愛犬・ゆずちゃんのお部屋が。「ホントにムダのない家なんです」。

家ができていくのが楽しい

建替え前は暖かいのは暖房機の周りだけ。特にお店は奥様が凍傷になるほど寒かったといいます。新居の暖房は、空気熱ヒートポンプを使った床暖房にしました。エコポイント対応の断熱性能ももちろん確保しています。
「今は家中どこでも暖か。仕事もしやすくなりました。暖房パネルがないから窓下がスッキリ」。ストーブのそばを離れようとしなかったゆずちゃんも活動的になったそうです。

「工事中は仮店舗と現場を何度も往復した」という鎌田さん。心配した白田さんが「無理しないで」と声をかけたことも。「忙しすぎて体調を崩すんじゃないかと思ったんです」。当の奥様とお母様は「家が少しずつできあがっていく様子を見ているのは楽しかったですよ」。

気になることは白田さんに確認し、すぐに対応してもらうようにしました。「ここに棚を造ってとか...。今にして思えば結構うるさいお客さんでしたね。細かい要望にも丁寧に応じて下さった白田さんや大工さんたちのおかげで、いい家になりました」。お母様の感謝の言葉に白田さんは少し照れたような表情を浮かべています。

記者の一言

「施工してくれたのが近所の工務店。職人さんの中にお客さんが何人もいたんです。店に来てくれる時とは違う『プロの顔』を見せていただきました」と奥様。顔馴染みの多い現場はいつもなごやか。住宅は地域の中で建てられるべきものだということを改めて実感しました。

【鎌田本店】
石狩市花川南1条5丁目67番地
http://www.e-kamada.com/
TEL 0133-73-0416

2011年04月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。

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