三角屋根のtaloは2011年に登場した
三五工務店のtalo(たろ)は、モデルハウスの仕様をそのまま別の敷地に建てることで、注文住宅よりも価格が抑えられた「企画型住宅」の第1号だ。4年前の2011年6月に初めて披露された。
札幌の一般住宅は落雪処理の問題もあって平らなスノーダクト屋根が主流だが、同社の注文住宅を建てたオーナーの半分は、三角(切妻)などのこう配屋根を希望するという。三角屋根でも雪が落ちない無落雪屋根なので、ひと昔前のように雪の落ちるスペースや隣家への迷惑を心配する必要もない。三五工務店オーナーの希望を集約させたtaloは人気を集めた。
肌触りが心地よい無垢のフローリング、天井の梁や造作家具など木のぬくもりが感じられる室内、暮らしやすさを優先した間取りや住宅性能、そして札幌の土地事情にあったちょうどいい大きさ。
さらには、同じものを注文住宅でつくるよりも200~300万円安いというコストパフォーマンスの高さもあって、多くの家族に支持された。企画型住宅をスタートさせてからの建築件数は、この4年間で35棟に上る。
新taloは旧バージョンと比べてどう変わった?
talo(たろ)はフィンランド語で「家」のこと。三五工務店は、企画型住宅の「長男」の意味も込めて「たろ」と名付けた。その後も、スノーダクト屋根の「neliö(ねりお)」、寄棟屋根の「tricoro(とりころ)」と、さまざまなタイプが登場している。今回は、主に断熱がグレードアップした「Q1.0 talo(キューワンたろ)」のモデルハウスが完成。正直なところ、外観は旧taloとあまり変わらないように見えるが、三五工務店によれば大小のバージョンアップを図っているそうだ。
モデルハウスを案内してもらいながら、その実力をまとめた。
1.北海道の木材や資材をたくさん使った家~
2014年に、三五工務店は地元北海道の木材を骨組みに使う取り組みを開始。"地産池消"をモットーとする「カラマツ宣言」を行っている。Q1.0 taloでも北海道産の木材をふんだんに使用した。1階のフローリングは木の町として今や全国レベルでも有名になった道北・下川町産のナラ無垢材、節のほぼない良質なものを採用。
余談だが、下川町は「木の町」としての面と、葛西紀明選手をはじめとするオリンピックのメダリストを何人も輩出する「スキー・ジャンプの町」の面がある。
コンパクトな市街地からメダリストが子どものころに練習したジャンプ台が見える。そんな下川町を三五工務店は社員や取引先あわせて20名近くで視察・研修に訪れ、木材の生産設備や施工した建物などを確認した上で床材などの採用を決めたという。
階段は道産タモの集成材で、木の質感たっぷりの「三五工務店らしい」造りだ。
内装の塗り壁は、仁木町のゼオライトを採用した。
普段は隠れて見えない構造材にも、北海道産のカラマツを使っている。これらの木材は、伐採から製材・加工に至るまで道内で行われたもの。北海道に住む人間として、よりいっそう愛着を持てる我が家になりそうだ。
2.暮らしやすさをさらに追求~2階を使いやすく!
好評のtaloだが、「ここをもうちょっと○○できたら」というオーナーの声もあった。そこでこれまでの企画型住宅に対する意見や感想を受けて、Q1.0 taloではいくつかのマイナーチェンジも行っている。
例えば、2階の空間にゆとりを持たせたこともそのひとつ。
旧taloは、三角屋根で勾配がついた桁側の天井高さが、最低1メートルだった。ベッドや机を置くスペースなどに使えるが、やはり狭く感じる人もいたそうだ。そこで、今回は最低天井高を1m30cmにアップすることで、小屋裏らしさを残しながら圧迫感を解消した。
キッチンには、冬に助かる食品保冷庫を標準装備。また、収納はゴミ箱を置くスペースを広く取れるようにした。小さなことかもしれないが、毎日のことであればストレスになりかねない部分だ。
さらには2階ホールのフリーカウンターや玄関収納など、三五工務店らしい造作があちこちに見られるのもうれしいところ。手作り感あふれる造作ものはやはり人気で、実際にクローゼットや本棚、化粧洗面台などを追加注文するオーナーも多いそうだ。
3.「冬暖かく、より省エネに」断熱性能をさらに強化~
さて、今回のtaloにはQ1.0(キューワン)という言葉が加わった。
Q1.0は現在の省エネルギー基準に沿って建てた住宅の暖房費に対して、その半額で住む住宅を指す。同社も加盟する一般社団法人新住協を率いる鎌田紀彦博士が提唱する超省エネ住宅だ。taloは札幌でいち早くQ1.0を企画型住宅として採用したわけだ。
札幌市が推進している「札幌版次世代住宅・SAPPORO ECO-E HOUSE」では、スタンダードをクリアするレベルとなる。
冬が寒くて雪も降る札幌での暮らしは、暖房や融雪、ガソリンなどエネルギーへの依存が本州の都市よりも大きくなる。
Q1.0taloはそういった札幌から、住宅のエコを発信したいという思いもこめられている。
断熱性能をQ1.0のレベルにするため、新taloの壁には通常の2倍となる21cmのグラスウールを入れた。さらに、換気によって捨てられる熱を再利用する熱交換型の換気システムを設置した。
taloのカスタマイズについて
企画型住宅であっても、やはり「こうできたら・・・」という部分はあるだろう。三五工務店によれば、例えば2階にトイレを増設したり、住宅の幅を90センチ延長したりもできるそうだ。相談によってできる部分、できない部分があるというので、聞いてみる価値はあるだろう。
なお、Q1.0taloの販売が始まった。場所は札幌市北区太平。見学もできるので、問い合わせてみてほしい。
記者の目
三五工務店らしさが凝縮された「Q1.0talo」は、かなりのお買い得とみた(本体価格2050万円・税別)。もともと注文住宅を考えていたお客が、企画型住宅を見て「これで十分満足」と気に入って購入するパターンもあるという。 今回のQ1.0taloで特徴的な住宅性能の良さや道産材の使用については、10年暮らしてからジワッとわかるありがたみであり、うれしさだと思う。企画型住宅にそういった10年後の暮らし提案を感じた。2015年11月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。