司会 住まいづくりは、その家族にとって快適な暮らしを実現させる仕事です。今回は新築、リフォームなど第一線で活躍中の皆さまにお集まりいただき、快適な住まいづくりのために何ができるか話し合います。まずは自己紹介をお願いします。
住宅業界で女性の活躍はまだまだ・・・
柳ゆかり ㈱アシスト企画でリフォーム事業部を担当している柳です。私はもともと旅行代理店に勤めていて、出産で退職した後は専業主婦でした。2人の子どもがいますが、下の子どもが7カ月ぐらいのころから"このまま専業主婦でいいのかな?"という思いが強くなり広告代理店や、建材メーカーを経て現在の会社に入社し必要な資格も取得しました。
最近では住宅業界も女性の活躍が大事と言われるようになってきましたが、実際はまだまだ。北海道の住宅会社の多くが一定性能以上の住宅を建てることができるようになってきましたが、重要なのは、お客様の価値観に寄り添い、住まいを手にした後の暮らしが充実する住まいづくりをすることだと思っています。
愛犬と一緒に暮らせる我が家を自分で設計
池田千夏子 愛犬家住宅コーディネーターをしている池田です。昔から大型犬を家で飼うのが夢で、独身の時に自分で設計もして新しく家を建てました。
今の住宅では犬と暮らすためには不都合がたくさんあります。もっとプランを工夫すれば、イライラが笑顔になるのにと思いが募り、「愛犬家住宅コーディネーター」の試験を東京で受けて運良く合格しました。お客様との打ち合わせやプランニングもさせていただき、ブログでの発信も頑張っています。
女性が活躍しやすい職場づくり
斎藤文恵 イネスホーム㈱で設計とコーディネートを担当している斎藤です。入社12年目です。以前は別の会社で事務職をしていました。もともとインテリアが大好きだったので、インテリアコーディネーター学校の夜間部に通い、次に設計も手掛けてみたいと思い転職したのが今のイネスホーム(当時・塚本建設)です。
入社した当時、社長は営業をしており、お客様のお宅に伺って打ち合わせをさせていただく際に、男性だけでは訪問しにくいという事情もあって営業補助的な役割で入社しました。同じ頃からうちの社長は「これからは女性の時代だ」と言っていまして、私もいくつもモデルハウスのプランニングを担当させていただいたり、私からの提案も自由に受け入れてくれました。我が社は"女性目線の家づくり"をスタンスに、設計、インテリア、現場管理などで4名の女性スタッフが活躍しています。
生活者目線からの住まいづくりを
篠崎正子 シノザキ建築事務所㈱の篠崎です。私もインテリアコーディネータースクールに2年間通いまして、卒業後は三井系列の会社で大手ハウスメーカーの仕事をさせていただきました。入社当時はインテリアコーディネーターの仕事は照明カーテンの打合せと販売をする人というような位置づけで、「もっと生活者目線からの提案もしたい」と先輩たちが社内で闘っていました。
その後、結婚をした相手が住友林業の設計士だったのですが独立したのを機に、私もインテリアコーディネーターとして数社のハウスメーカーの外部スタッフとして様々な仕事をさせていただきました。住宅会社も会社によって仕事の進め方が全く異なっており、私に多くの役割を任せていただける会社もありました。
当社は、最初は設計事務所でスタートし、その後建築を始め、自社物件を手掛けて2年目になります。コーディネーター歴は23年になりますが、小さな会社ですので、私は何でも話してもらえるようなお客様係でもありたいと思っています。うちは住宅を兼ねた事務所のせいか、来られるお客さまもリラックスしていただけるようです。
女性だけの建築士事務所
伊藤実枝子 「女性による女性のための建築士事務所」㈱コンフィで社長をしております伊藤です。
3人のスタッフも全て女性が頑張っています。
前職はパナソニック電工、その後ショールーム企画室に異動しました。そこで建築家の先生方と出会う機会があり、"建築って面白そう"と興味を持ったんです。退職しインテリアコーディネートを学び、さらに勉学のため預金を下ろしてサンフランシスコにも留学しました。しかし帰国したころにはバブル時代も終わっていて就職先もなく、「もうやるしかない!」と思い切って独立したわけです。この業界では30年のキャリアで、住宅から商業施設、ホテルなど千件を超える建築デザインの実績があります。
お客様と距離の近い住まいづくりを
蝶野陽子 ㈱三五工務店のコーラルハウス事業部で設計をしている蝶野です。高校卒業で進路を選ぶ時、建築の専門学校に進学しました。卒業後はハウスメーカーに就職しましたが、ハウスメーカーでの仕事を長い間経験した後、お客様との距離の近い、そしてもっと自由に設計が出来ればと三五工務店に転職いたしました。三五工務店の中でもっと北海道の材料や自然素材を使用するコーラルハウス事業部の創設、部長と共に2人で「いごこちのいい家」、「人にやさしい家」創りに取り組みました。今は3人体制で、お客さまと一緒になって家を創っていけることを楽しみながら頑張っています。
五感に気持ちの良いインテリアを
岩波 ノースファクトリー店長の岩波です。私は保母をしていて、憧れの専業主婦になったものの物足りなさを感じ、航空会社の予約受付やホームヘルパーなどの仕事をしていましたが、夫が脱サラで旭川の工房で家具造りを始め、私は販売を担当するようになりました。札幌に移転した現在はショールームを兼ねた店舗として無垢材のオーダー家具やキッチンのほか、「五感に気持ちの良い素材」をコンセプトに無垢材と相性の良い自然素材を中心にしたインテリア雑貨を揃えています。
札幌に来てからは当店のテイストを気に入ってくれる方からキッチンなどの注文が増えまして、今では住宅のリフォームも行っています。
男性中心の住宅業界
司会 住宅業界で働く人の大多数は今でも男性です。男性と女性の住まいづくりで思うことはありますか。伊藤 まず、お客様の側で言いますと、新築時はご主人の意見で家づくりが行われ、その後何十年と暮らしているうちに、奥様はいろいろ我が家の不便を感じ、その結果リフォームは奥様の不満を解消するプレゼントとして、ということが珍しくありません。最初から奥様の声も聞いて家づくりができればもっと幸せだっただろうと思いますが、奥様の夢は新築よりもリフォームの時に実現できる、というケースは多いですね。
住宅業界側の事情で言いますと、今でもまだ施工現場では「俺が現場を仕切っているんだ。女が何を言う」というような姿勢をとられる方がいらっしゃいます。このような場合こちらから頼りにしている事をお伝えしお願いする姿勢で接していますと、少しづつ打ち解け協力して下さいます。
柳 私は、入社してすぐ、リフォームの現場に配属になりました。当時は私の基礎知識が乏しかったため思うように行かなかったことがあります。お客様の家に養生もしないでいきなり工具を置くような、現場でお客様と接する専門職の方々が、お客様のご自宅で仕事をする上での配慮に欠けていることに遭遇するたびに驚き、そういう状態を少しでも改善したいと強く思いました。男性はお客様への気配りは苦手な人が多く、思いが上手く伝わらずに、疑問と悔しさで何度か泣きました。もちろん、最近はずいぶん改善できていますよ。
池田 私も外注の大工さんとのお仕事の際には同じような経験があります。
斎藤 当社は社員と施工を行う自社大工が会議で女性目線の家づくりなどを話しあっているので、その甲斐あって現場監督も大工さんも、手間のかかる造作などでも協力してくれています。そういう面では恵まれています。
柳 女性は、見えなくてもいい部分が見えてしまうことがあります。その点男性は、悪気があるわけでもなく本当に気付かない。男性は打たれ弱い面もあるので厳しく指摘もしにくいですし。
伊藤 ある建築家の先生が、女性スタッフしか使わないのでその理由を尋ねたことがあるのです。すると「男性は現場を見に行くにも、どこかでたばこを吸っているなど時間をつぶして帰ってくる。その点、女性はまじめにやってくれるからいい」と話していました。私自身は男性社員を雇った事はありませんが、下請業者さんをみていると、最近の若い男性は打たれ弱く、本気で頑張れない人が多いと感じています。
司会 建築業界だけでなく、むしろ「日本の男をどうしたらいいか」という問題ですね。
2012年01月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。