※公開は終了しました
三五工務店が、この5月に新たなフラッグシップモデルとして提案型住宅「kita35」を札幌市内に登場させた。2階まで突き抜けた大開放の窓に、明るく塗装されたカラマツ板が特徴的なファサード。道路からやや奥まった位置にもかかわらず、そこを通れば思わず目を惹かれてしまう。
「これまでの三五さんとは違う!」内覧会でもそんなざわめきがあったというkita35を、設計室班長の石塚氏に案内してもらった。
それはまるで、リゾートのような。
ギャラリーのように広大な窓と吹き抜け。ソファに座って窓を眺めれば、床から天井近くまで、視界はほぼ外の景色だけという圧倒的な開放感だ。「家の中と外がひと続きになったような、オープンな空間」を目指したkita35。確かに、玄関からフロア、ウッドデッキまで段差の無いフラットなつくりは、家でありながら外とのつながりを感じさせる。
京町家のような構成を採り入れた「通り土間」もそうだ。まるでリビングとダイニングの間を流れる川のように、タイル床の土間が続いている。自転車も置けるしDIYもできる、庭のような使い方が可能だ。
例えばハワイでは、同じ室内にサンダル履きの人と裸足の人がいてサーフボードを持ち込んだりもする、そんな大らかさをこの家は持ち併せている。
"ここではこう振る舞わなければならない"といった日常の決まり事が取り払われるのを感じる。
Kita35のお披露目となった内覧会では、タモ材の無垢フローリングにぺたりとお尻をついて木の触感を楽しむ人、ダイニングのスキップフロアのふちに座る人、階段の途中に腰掛けて眺めている人と、見学者はソファだけでなく好きな場所でくつろいでいたという。
ふれあう、交流する~次世代ライフスタイルへの提案
Kita35の設計に当たって、三五工務店は架空のモデル家族を想定した。それは、近年見られるようになったファミリーの傾向のひとつだという。「例えば、キッチンに立つのが苦にならない、むしろ料理好きなお父さんが増えてきましたよね。それから、家族同士や気の合った友達、仲間とのつながりを大切にして、みんなで集まって楽しむようなライフスタイルも増えています」と石塚氏。
このようなライフスタイルの傾向を取り込みながら、モデル家族の世代、職業、趣味などを細かく設定し、kita35のデザインやインテリアを緻密につくり上げた。例えば、キッチンカウンターは対面式が人気だが、kita35ではあえて欧米に多い壁向きで、L字型に配置している。キッチン部分の壁は、古いレンガを加工したシックなタイル張りだ。
みんなが談笑しているテーブルに、ご主人が焼きたての手作りピザを運んでくる。そんな光景がとても似合う家。
ほかにも、Kita35には暮らしを楽しむデザインが随所に見られる。
2階には、ガラスで間仕切りしたオープンなバスルーム。朝に景色を眺めながらシャワーを浴びればテンションも上がる。その隣にはミニガーデンで、好きな花や野菜を植えるのも楽しい。
道産材で魅せる本物の美しさ、超高断熱を注文住宅に生かしてほしい
会社として掲げた「カラマツ宣言」も、そのひとつとして投影している。カラマツに限らず多くを北海道産の素材でつくり上げた。構造材は道産のカラマツ集成材、フローリングは下川産のタモ材、外壁の羽目板も下川産のカラマツ材、塗り壁は仁木町のゼオライトを使用。家具などの造作も、地元の職人が北海道産の素材をメインに製作している。
一方で、現実的な価格帯を考えながら、無駄なスペースを極力なくすなどして家の広さを40.5坪におさめた。最初の写真は正面ではなく、実は反対側に玄関がありカーポートも備えている。こちら側から見た外観はホワイトがメインで、表情が異なるのも面白い。
自由な設計を実現するために、今回は最新の断熱技術が投入されている。
積雪が多く寒冷な札幌の冬に、大きなガラス張りの空間から太陽エネルギーを取り入れるガラス開口部の技術や暖房方法、そして住宅全体の断熱性能などだ。
新住協代表で室蘭工業大学の鎌田紀彦名誉教授の意見も仰ぎながら、壁の断熱材は35センチもの厚さに施工(外側24.5センチ、軸間10.5センチ)。さらにキマド社との協働による「木製クワトロ(4重)サッシ」を採用した。
三五工務店が企画型住宅において断熱の標準とするQ値は1.0W/m2・Kだが、このkita35ではなんと0.675/m2・Kの数値 を実現。性能までも、次世代クオリティーを実現させた形だ。
カフェもオープン、地域交流のスペースに
三五工務店は、カフェもオープン。地場工務店として、地域の人たちがつながる拠点をつくりたいという思いは、kita35のゆるやかで自由な空間、人の集まる家というコンセプトとも共通している。そんなライフスタイルの提案は、地域の人たちに向けても発信されていくのかもしれない。
三五工務店のモデルハウスはこちら(外部リンクです)。
記者の目
住宅にかけられる金額が下がっている中で、「kita35」は逆の路線を行っている。まるでドラマに出てくるような、ある種のラグジュアリー感も漂う。
大開放の窓やオープンバスルームを見て「丸見えはイヤ」という声もあったらしい。確かに、好みは分かれるところだろう。しかし、この『提案』型住宅には、あえて既存イメージを変えようとする、三五工務店の挑戦的な意志が含まれているようにも見えた。
取材して感じたのは、1階のフロアはとにかく居心地が良かったことだ。好き勝手なところに腰を下ろして、家族と、仲間とここで過ごせたらどんなに楽しいだろう。そして1人のときも、この空間を独り占めする贅沢を静かに味わいたいと思う。
個人的なことでいえば、Kita35はたまたま所用でよく通る道路沿いにある。特徴的な木のファザードを見るたびに、あの中でくつろげたら――、という思いが頭をよぎる。
安らぎを求める気持ち、それにこたえる場所。それが「kita35」ではないか。
※公開は終了しました
2015年08月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。