Story 取材記事

住宅の品格、暮らしの"うつわ"としての家づくり ~渡部一博会長~ 北渡建設

品格のある上質で美しい住まい。北渡建設の建てる高級注文住宅にはそうした評価が数多く寄せられます。創業者・渡部一博会長が数多くの商業施設や邸宅を手がけ培ってきたデザイン・施工技術が住まいの美しさ、風格を高めており、現社長の渡部一生氏を中心とする北渡建設札幌支店にもその魅力はしっかりと受け継がれています。

 

創業者・渡部一博会長が住まいづくりで大切にしているのは、家の美しさや風格以上に、家族の“幸せ”を守り、品格ある住み継がれる家です。今回は、渡部会長に「住み手が末永く幸せになる家づくり」について伺いました。

170208hokuto_kaityo7312.jpg

 

見えない部分も細心の配慮で、いつまでも美しく健やかな住まい

―これまでに建てられた家づくりのお話を伺っていると、一通りではいかないというか、非常に手間ひまをかけた上質な住まいという印象があります。それもお施主さんの要求というよりは、施工側にとって少しでも納得できない部分は許せないといった、ある種のストイックな面も感じるのですが。

渡部会長 建材や設備はお客さまと決めるもので、こちらの思いで勝手に変えることはありません。しかし、施工面では良い施工法があればそちらを優先する。見積りに含まれないような細かな工事であっても丁寧にやります。すべては大工や職人の手間になりますが、それは大事なこととわたしは思っています。

―それは、なぜですか。

渡部会長 建ててから後々の不具合が少なく、10年、20年とたっても美しい家を保つことができるからです。お客さまは、家を建てる時に普通は35年のローンを組みますよね。定年後も5年、10年と払い続けることになります。そんな貴重な大金をいただいていることに対して、家を造る側は責任を持たなければいけない。ご家族の人生すら左右してしまいますから、「ものすごいことに携わっている」という責任感があります。

 

 

170208hokuto_h_living1.jpg

 

―心豊かに暮らすための住まい、とよくおっしゃっていますね。

渡部会長 はい、住み手が心豊かになれるように、私はさまざまな仕掛けを考えます。毎日座るテーブルから植栽の緑が見えれば、いつも豊かな気持ちになれるでしょう?そのために窓の大きさ、位置は5センチ上げるか下げるか、それだけでも全然違うんです。

それから、階段ひとつでも、気持ちよく上り下りできるように工夫する。造作する棚は、機能性はもちろん必要ですが、視界のじゃまにならない位置や高さを考える。棚にわたす板の位置ひとつでも、ものすごく検討します。

 

 

170208hokuto_dining1.jpg

―そうなると、図面通りではなく現場で決めることもあるんですか?

渡部会長 こういったことは現場で決めることもあります。設計者が書いた図面は、線で表しているだけで、その意図がすべて書き切れているわけではありません。ですから、実際に建てる現場の職人は、設計者以上の能力が必要と思っています。

私は、会社で大工さんたちを名のある建築物へ見学に連れて行くこともしています。店舗の施工もするので、高級な料亭に連れて行くこともある。それは、お客さまの立場にならなければわからないこともあるからです。建物は、お店の“もてなしの心”の手助けをしてくれる。それが分かれば、大工たちの気持ちも違ってくる。造る建物にも魂が入ります。

 

住み手の一生を引き受ける“うつわ”としての家づくり

―店舗と住宅に求められるものの違いは何でしょうか。

渡部会長 商業施設は、たとえば人の目を引くような奇抜なものでもいいんです。非日常空間であることが商業的に宣伝にもなるし、そのことで利益にもつながる。しかし、住宅という建築は「個人が使う」という特殊性があります。完成した時から、その中で1年365日、24時間使い、夫婦2人暮らしから出産、子育て、さらにその先へと人生の過程を営んでいきます。人生には喜びだけでなく、悲しみや怒りもあります。住宅という“うつわ”の中でお客さまが一生を過ごす、そういったことへの責任を、設計者は考えなければいけないと思っています。

 

 

170208hokuto_h_patio1.jpg

―もう少し具体的に教えて下さい。

渡部会長 住宅という暮らしの“うつわ”を造るためには、ご家族がいかに幸せになれるかを考えなければなりません。ある意味、どんな建材や素材を使っているかは二の次といってもいいでしょう。それよりも、どういう建物であればご自身が心豊かに暮らせるかという視点が大切です。

人間ですから、長い暮らしの間には、たとえば憂鬱になったりストレスがたまったりするような、負の部分を感じる時もあるでしょう。でも、リビングで自然とのつながりが感じられるスカイコート(中庭)を眺めていたら、いつの間にか気持ちが和んでくる。または、家の中に各自の部屋があっても、それぞれが孤立するのではなくて家族のつながりが感じられる。そういった、暮らしが順調なときも、そうでないときでも、人生のもろもろを受け止めてくるような“うつわ”=家をつくることが重要だと私は考えています。

 

 

170208hokuto_h_hall1.jpg

―スカイコートなど、自然と共存する北渡建設さんの家づくりは、会長が高級数寄屋建築を手掛けられてきたことが大きいのでしょうか。

渡部会長 各国の建築も視察してきましたが、わたしは、やはり強い主張をするのではなく、外から見ても心が休まるような、品格ある和風建築がいいと思っています。自然のなかで、私たち人間も生活していると思える感覚があるんですよね。ですから、せっかく太陽の光や外の景色が採り入れられる窓に、目隠しでカーテンを引いてしまうような家に対しては、私はとても残念に思います。

 

品格がある家には、住む人の生き方も変える力がある

―うつわである住まいが、人を変えるというお話も聞きましたが。

渡部会長 賃貸アパートや団地暮らしだからと、掃除もあまりしないで花も飾らないような生活でいると、普段の動作も自然とぞんざいになったりしますよね。ところが、きちんと造られた家で暮らしはじめると、絵や花を飾ったりしたくなるし、部屋もきれいにしたくなる。自分の家に愛着、愛情を持つんですね。すると、歩き方ひとつも変わってくるんですよ。

このように、上質な家に住むことで暮らしが変わり、その人の心も豊かになれば、いっそう仕事にも励めるといった良い循環が生まれてきます。人生、良い時も悪い時もありますが、それらをすべて受け止めて豊かな暮らしができるように、私たちは責任を持ってお客さまの家を造っていきます。

 

--------------------------------

 

さて、ここからは、これまで取材してきた札幌支店の家づくりではなく、渡部会長が手がけてきた函館本社の住宅事例をご紹介します。今回のインタビューでうかがった考え方が随所に生かされた家です。

函館市都市景観賞を受賞、パティオのあるゆとりの住まい/函館市・H邸

平成28年度の函館市都市景観賞に選ばれたH邸。長い歴史があり、景観に配慮した街並みを大切にしている同市が設けた、年に数件だけが選ばれる賞です。

品格を感じさせる家へ。第二の人生を謳歌する住まい

170208hokuto_h_gaikan.jpg

H邸の受賞理由は、大きさがありながらも水平に広がるフォルムで、近隣に威圧感を与えない街の景観に配慮した建物であること。道路沿いの植栽の緑も、道行く人にうるおいを与えると評価を受けました。

白い塗り壁と黒のアルミのルーバーが端正なたたずまいを見せるH邸は、車庫にあるアプローチから玄関へ入るようになっており、中へ入ると訪れる人をあっと驚かせる仕掛けがあります。 以前のH邸は、間口が20m幅で総2階建ての大きな建物。「前を歩くと、そびえたつような威圧感がある住宅でした」と渡部会長は話します。土地はゆるやかな勾配があり、高い方を土台の基準にしたため、ほかの家よりも1mほど高くなったことも圧迫感を与える原因でした。

渡部会長曰く、「Hさんは社会的立場のある人で、周りに住む人たちもそれを知っているわけです。だから、いかにも高級・立派と思われるような建物では、住み手の人格までそのように思われてしまう。ですから、Hさんとお立場についてどうあるべきか、どんな住宅をつくるべきかについて、率直にお話しさせていただきました」

 

170208hokuto_h_approach.jpg

表玄関アプローチを歩いていくとガラス越しにパティオの眺めが。床には札幌軟石を使用

 

パティオを建物の中心に据えて、いつも自然を感じる暮らし

170208hokuto_h_patio3.jpg

左手前から大きな窓に沿って水鏡がある

渡部会長とHさんが知り合ったのは15年以上前のこと。ある集まりの後にお酒を飲みながら歓談したとき、「『住宅とはなんぞや』という話になり、私の住まいに対する考え方を話しました。そこでHさんと話が盛り上がり、『定年になったら建て替えをするから頼む』と言われましてね。定年になられる2年前にご依頼いただきました」。

Hさんのお宅に打ち合わせでおじゃました時、渡部会長が気になったのは、立派な庭が眺められる窓にレースのカーテンを引いて暮らしていたこと。「せっかく植栽の手入れもしているのに、非常にもったいない。『外から見えてしまうから』と、窓にレースのカーテンを引く家は多いですが、豊かな暮らしのためには窓から山が見えたり、どんなに小さくても植物を周りに植えたりする。そうやって自然とのつながりを大切にした暮らしが私は必要だと思っています」

 

 

170208hokuto_h_hall2.jpg

Hさんが希望したのは、多忙な仕事の疲れを癒やし、周囲の視線を気にすることなく内でも外でもゆっくりと羽を伸ばせる家。それを解決したのが、四方を建物に囲まれた約37坪のパティオ=中庭です。玄関に入ったとたん視界に入るこの中庭は、すべての部屋からも見渡せるつくり。空の雲の動きや、四季の移ろいを感じることができます。

玄関ホールからリビングなどに沿ってL字型に水鏡も設けました。日中には水の揺らぐさまを眺めたり、光のきらめきが室内に反射する様子を楽しんだり。夜には月や星々の姿が水面に映し出されて、眺める人の心にゆとりをもたらせてくれます。

 

趣味を生かして休日はゲストをもてなし、大いに語らう

170208hokuto_h_patio2.jpg

大きな家ですが、中庭を回遊する造りにしたことで動きやすいプランになりました。お母さまの部屋も、リビングからお部屋の様子がさりげなくうかがえる造りで安心。おもてなしが大好きなHさんご夫妻のために、中庭にはバーベキューコンロを設置しています。

 

 

170208hokuto_h_kitchen1.jpg

料理が趣味というHさん、ゲストをもてなすときには3日前から献立を考え、周到に準備しながら、本格的な料理でゲストをもてなすのだとか。そんなHさんの希望で、LDKの隣にはプロ用の調理機器を備えた厨房も造りました。 一方で、いろいろとプランニングする中で、Hさんが難色を示したこともありました。

「Hさんもそうでしたが、建てるお客さまも本当に一生懸命です。インターネットで情報を集めたり、住宅関連の本を10冊も読んでこられたりした上で、リクエストやダメ出しをされる。そこで、『なぜこのようにしたいのですか、ダメだと思われますか 』と尋ね、話し合いを重ねることで、例えば『こういった感じが好き』とか、お客さまの真意が見えてきます。そうやって、こちらもお客さまの希望を踏まえた提案ができるわけです」(渡部会長)

 

 

170208hokuto_h_LDK1.jpg

訪れたゲストは「美術館に来たみたい」と笑顔を輝かせ、Hさんの本格的な手料理を楽しみながらお酒を片手に語らう。そんなHさんの豊かで上質なライフスタイルが実現しています。息子さんが帰ってくるときは、ルーバーの目隠しが付いた中庭をのぞむ、まさに露天のようなお風呂に入ることを何よりも楽しみにしているとか。「仕事で疲れていても、うちに帰ってくるのが何よりも楽しみ。120%満足しています」とHさんも太鼓判を押す、まさに心豊かに過ごせる家です。

 

 

続いては若いご夫婦の住まいを手がけた事例です。

 

若い二人がこれからの物語を紡ぐ、癒しと安らぎに満ちた家/函館市・T邸

 

170208hokuto_t_gaikan.jpg

共働きのT様ご夫妻は、ご結婚にあたって新居を建てることになり北渡建設に依頼しました。奥さまの勤務先の都合もあって、交通の便が良い場所を希望されたご夫妻と、まずは土地を一緒に見て回りました。二つの土地候補に対して、それぞれプランを考えて住宅模型を作り検討した結果、現在の土地に決定しました。

 

建物前面にカーポートを設置し、高さを抑えたモダンな落ち着いたデザインは、周囲の環境との調和もはかったものです。

 

星空を見ながらハンモック、スカイコートで朝食を

 

170208hokuto_t_LDK1.jpg

奥さまの「家の中から空や星が見えるようにしたい」というご希望から、吹き抜けの上部に大きな開口部(窓)を設け、青空が視界いっぱいに入る開放感にあふれたリビングが生まれました。木の梁からは、ブランコモック(チェアハンモック)を吊るしてリラックスできる楽しい空間に。

 

 

170208hokuto_t_terace1.jpg

 

170208hokuto_t_terace2.jpg

ご主人は「縁側のような場所が欲しい」というご要望で、スカイコートとの間にテラスを設けました。日差しが差し込むこの空間で、出勤前の朝食タイムを過ごしているというご夫妻から、「とても気持ちいいですよ」と好評だそうです。

 

 

170208hokuto_t_terace3.jpg

収納も各部屋につくってあるので室内はいつもスマート。将来の子ども部屋を想定した洋室は、今はご夫妻の書斎として活用しています。 「仕事から帰ってきても、家に入るとすぐリラックスの時間に切り替えができます。想像以上の家になりました」と話すT様ご夫妻。

 

これからお二人で紡ぐストーリーもやさしく包み込んでくれる、そんなお住まいです。

 

170208hokuto_t_LDK2.jpg

 

 

 

記者の目

「心豊かになれる生活を、家が手助けしてくれる」。そんなポリシーを持つ渡部一博会長が創業した北渡建設の家は、会長をはじめ現場の大工さんたちの決して建前でないストイックさで造られていました。その誠実さはまた、オーナーさんたちにその人柄で支持される札幌支店の渡部一生社長にも引き継がれているようです。四季折々の自然を愛でられるスカイコートやパティオが心のゆとりを生み、長い人生で気分が沈むような時も心を癒してくれる。これはいつの時代も変わらないことなのかもしれません。

 

 

 

 

 

 

 

2017年03月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。

株式会社北渡建設の取材記事