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家族のコミュニケーション深まる、4層スキップフロアの家/札幌市 Iさん 北渡建設

北渡建設で新築し、今年9月に入居したIさん。最大の特徴は4層のスキップフロアプラン。このプランに至るまでは、6年にわたるIさんと北渡建設との「縁」があります。

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玄関土間とペットスペースの不思議な関係

床から土間の高さまで掘り下げた階段下のペットスペース、1階、吹き抜け階段の踊り場、踊り場から出入りできる書斎、そして2階と、Iさんのお宅は内部が4層構造のスキップフロアになっており、玄関を入ると大工さんの丁寧な仕事ぶりが感じられる造作収納家具や建具が出迎えてくれます。
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玄関からすでに木の温もりたっぷりなI邸。上がり框(かまち)はステップがついており、小さな子どもでも上り下りしやすい造りになっています。左手には一面に大容量の靴収納があります。右手にも靴収納...と思っていましたが...。
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玄関側の扉を開くと、中には愛犬のトイレスペース!ここは、リビングの吹き抜け階段下を利用したペットスペースにつながっているのです。ペットの排せつ物をトイレに運ぶ際に、なるべく室内を通りたくないという要望からこの形が生まれたそう。これなら部屋を汚す心配もなく、スムーズに処理が出来そうです。

吹き抜け階段と三角形のダイニングがつくり出す伸びやかで明るい1階

P1090917_ccrs.jpg リビングに入ってすぐ右手にある吹き抜け階段。ここで縦への視界が一気に開けます。大きな採光窓からの日差しはさらし階段を通して1階まで届いています。階段下には収納棚を介してペットスペースが設けられています。 PC014744_ccr_s.jpg デザインチェアが置かれている土間には、いずれ電子ピアノを置く予定なのだそう。 P1090936_ccr_s.jpg リビングはダウンライトや間接照明でムーディーな雰囲気。テレビは壁掛けにしてスッキリと。テレビボードも奥行きを出しすぎずシンプルな造りです。階段や棒状の柱に使われているブラックが空間を引締め良いアクセントになっています。 P1090934_ccr_s.jpg キッチンからの眺め。テレビや吹き抜け階段の踊り場まで見渡すことができます。2.5畳ある吹き抜け階段の踊り場は「多目的スペース」。お子さんの遊び場としても活用する予定です。また、キッチンの天井にはスピーカーが付いており、台所仕事をしていてもテレビの音が聞こえるように配慮されています。 P1090964_ccr_s.jpg 三角形のダイニングはひときわ心地良い空間。特注したという大きな窓からはうっすらと雪化粧した山々を望むことができ、南に突き出た三角の形状のため、日の出から日没まで日差しが入ります。

吹抜け階段の踊り場に謎のドア。まるで秘密基地のような書斎でした!

P1090894_ccr_s.jpg 吹き抜け階段を上って踊り場まで来ると、右手に不思議なドアを発見しました。ステップが一段置かれており、踊り場よりは高く、2階よりは低い位置にそのドアはあります。 PC014759_ccr_s.jpg ドアを開けると、中はIさんの書斎になっていました。1.8畳という超コンパクトな広さですが、本棚も設置されており、何より生活空間から離れたこの場所は書斎にぴったり。お仕事を持ち帰ることも多いというIさん。家族との生活リズムも異なっているため、独立した空間を希望していたのだそう。

敢えて床の高さを踊り場より高く、2階より低くした遊び心を感じさせる設計は、まさに「大人の秘密基地」といった趣です。

2階は収納を完備した個室をしっかり確保

P1090896_ccrrs.jpg 設計の工夫で大変大きく感じられるI邸ですが、実は延床面積36坪(約120m2)の一般的な大きさ。2階には収納を完備した個室がゆとりをもって確保されています。こちらは子ども部屋の1室。就学前の息子さんが使っています。隣家とのプライバシーに配慮し、窓は高窓にしています。

腕の良い大工さんが集まる北渡建設。デザインの工夫と共に、高級感のある美しい仕上がりには目を見張るものがあります。まずは実感されている「暖かさ」についてうかがいます。

床暖、北面トリプルガラス、日差しが入る設計で「暖かさ」実感

P1090960_ccr_s.jpg 日中家で過ごすことの多い奥さまは、「午前中に暖房器具の設定を一番低くしても、午後には切ってしまうほどLDKは窓から入る日差しで十分に暖かい」と言います。リビングにはパネルヒーターの他に温風が出るファンコンベクターが設置されていて、寒いときは併用することで一気に室温を上げられるのも安心です。

また1階ダイニングの腰窓、キッチン、洗面脱衣室、2階主寝室など、北側の窓にはトリプルガラスを採用し、開口部からの冷気対策も万全。キッチンと玄関土間には床暖房が入っています。

暖房費についてうかがうと、以前住んでいた2LDKのアパートの時と比べても、同時期で同程度ということです。本格的な冬を迎えても快適に過ごせそうです。

「隠す」だけじゃない!機能性・デザイン性に優れた造りの良さに感激

P1090931_ccrs.jpg 対面式のキッチンカウンターには全面に扉付きの収納をプラン。こちらには普段使っていない食器などが収められているそうです。 P1090978_ccr_s.jpg キッチンの背面にも収納が充実。下部のカウンター収納はメーカー既製品ですが、上部の吊り下げ収納はすべて大工さんによる造作です。横線のスリットで統一感を出しています。そしてこちらにも驚きの仕掛けが... P1090925_ccrtts.jpg 吊戸棚の一部がクーラーの目隠し収納になっているのです!クーラーの風が通り抜けるよう、底板はルーバーになっています。存在感のあるクーラーが棚に仕込まれているなんて、まるで高級ホテルのよう。デザインへの強いこだわりが感じられます。 PC014801_cc_s.jpg 炊飯器などの家電も引き出しに仕舞う徹底ぶり! PC014791_ccr_s.jpg こちらはゴミ箱を入れるため、引き出しをキャスター付きのボックスにリメイク。前側に倒れないよう、背面底部には重りが入っているそうです。一見すると気づかないほどキレイに収まっていました。 PC014838_ccr_s.jpg カウンター収納の横には奥さまの家事コーナーが。台所仕事の合間に一息ついたり、PC作業をするのに便利。お子さまのスタディースペースとしても使う予定なのだそう。 PC014835_ccr_s.jpg 家事コーナーの隅にはPCやスマートフォンの配線が仕舞える配線孔キャップが。「見せない」スタイルへのこだわりはこんなところにも。

要望以上の出来栄えに満足。随所につくり手の想いを感じる家

I邸では、北渡建設ならではの腕の良い職人の仕事をあらゆる場所で確認することができます。次はそんな事例をいくつか見ていきましょう。 PC014788_ccrr_s.jpg キッチン背面の壁を飾るのは名古屋モザイクのCREUZ(クロイツ)。「クロイツは表面に細かな凹凸があるので、目地を塗った後、何度も何度もふき取る作業が必要でした」と担当の老川さん。老川さんは初回のプランニングから施工管理、実作業までをトータルで担当されています。収納に施した横スリットのデザインを汲んで、タイルも横長に貼っていったそう。苦労の甲斐あって自然で美しいタイル壁が完成しました。 PC014821_ccr_s.jpg ダイニングの窓辺には便利な飾り棚をプラン。ダイニングテーブルを収めるなら、ティッシュや調味料が置ける棚があったほうが便利という話になり実現したそう。奥さまのご希望で採用したのは土の風合いがやさしいクレイタイル。手前に広がる棚と壁の形状にも工夫を感じさせます。

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リビングドアは担当の老川さん自らがデザインした制作ドアで、ドアノブには南部鉄を使ったハンドルを採用しています。こちらもスリットが入ったデザイン。
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テレビの壁面照明の受け台やダイニングの照明レールも老川さんによるオリジナル。豊富な経験と老川さんの抜群のセンスで、唯一無二の作品を生み出しています。
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唯一、プラスの要望で来客用の手洗いスペースを希望していたIさん。玄関ホールのトイレ手前に、こちらもタイルをあしらった手洗いスペースが設けられています。

函館の地がつなげた不思議なご縁。6年かけて築き上げた信頼関係

まるでカフェの特等席のような居心地の良いこちらのダイニングで、北渡建設さんとの家づくりについて、Iさんと担当の老川さんに改めてお話をうかがいます。 P1090966_ccr_s.jpg いつかは新築一戸建を建てたかったというIさん。出張で函館に行った際、ふらっと立ち寄ったお寿司屋さんで、運命の出合いが待っていたと言います。

「僕が家を建てたいと大将に話したら『俺が家建てた会社の社長さん、紹介してやろうか?』と言われて。札幌なんですと伝えると、『いやいや、息子さん札幌でやってるから』と。そんな経緯で出会ったのが渡部社長です」。

北渡建設は、東京の有名工務店で日本の伝統的な建築技法「数寄屋造り」の腕を磨いた渡部会長が、約30年前、函館で腕利きの大工と2人で創業した工務店。小樽の老舗旅館・銀鱗荘の大規模改修工事でも中心的な役割を担い、多くの邸宅や有名旅館、料亭などを手掛けてきた本格和風住宅を得意とするビルダー。地元函館でもその腕の良さには定評があります。

「僕も函館出身。そして函館は仕事でも担当エリアだったので、行く機会も多くて。出会いから6年ほどの間、家づくりや土地について、色々相談させてもらいながら個人的なおつき合いが続きました。最終的にはこの土地を決める際にも相談させてもらい「すこし変形土地だけれど、環境はベスト(奥さまのご実家の隣で自然豊かな閑静な住宅街)。それは即買いでしょ!」と社長に太鼓判をもらいました」。

元から北海道の気候に合った家づくりができる地元ビルダーに施工を依頼するつもりだったというIさん。数社にプランを出してもらった中で、最終的に北渡建設に依頼を決めた理由についてうかがうと、社長とできた信頼関係に加えて、札幌の担当者が「見ている方向性が一緒で、寄り添ってくれたことだった」とIさん。

「実際に住み始めてからも、『こういう家が欲しかったんだね、私たち』と改めて実感しているくらいです」という言葉に、その真意がうかがえます。

シンプルな要望の奥を探り、その先を引き出す提案力が施工依頼の決め手に

PC014833_ccr2_s.jpg 「家をつくるにあたって、具体的に何がしたいのかがわからなかった」とIさん。 具体的な要望は、「暖かい」家であることと、物を「隠せる」よう収納が充実した家であることの2点だけだったそう。

「ご要望がシンプルだったので、初めのプランは本当に試行錯誤、苦労した記憶があります」とは担当の老川さん。プランを見ることで、「気づき」が出てくるのではということで、初回打ち合わせから1か月後に老川さん渾身のプランが提示されました。

老川さん「コンセプトは「山」。景色の良い山の中腹に建つ家なので、窓からその風景を眺めることができるよう、大きな窓のあるダイニングと階段ホールを提案しました。また、予備間が必要ない、書斎が欲しいというご要望があったので、吹き抜け階段に子どもが遊べる広めの踊り場を設け、書斎にいるお父さんと会話をしたり、奥さまがキッチンからその様子を見守ることができたら、家族のコミュニケーションが生まれるのではないかということで、吹き抜け階段のあるこのプランをご提案しました」

ご夫婦ともにこのプランが気に入って、施工の依頼に至ったそう。その後、プランは様々な変更があったものの、このダイニングと吹き抜け、書斎などの基本形は変わらなかったと言います。

老川さん「結果的にミルフィーユのような家になりましたが、それも、山が連なっているイメージに合っていて、良い家が出来たと思います」。

Iさん「担当者が老川さんで本当に良かった。『暖かい家』くらいの要望しか出していない中で、本当に良い家を考えてつくってもらいました。大事に住んで、永いおつき合いをさせてもらえればと思いっています」。

記者の目

PC014734_ccrrt_s.jpg 三角のダイニングをプラスすることで変形した土地を十分に活用したI邸。就学前の息子さんに加え、近々、新しい家族が増える予定です。おしゃれなルーバーの向こう側で、食卓を囲むIさんご一家の楽しそうな姿が目に浮かびます。

ニレの床材や木の収納など、温もりたっぷりな中にもモダンで凛とした要素を感じるのは、和風建築で磨いた「日本の伝統美」が自ずと表現されているからかもしれません。お父様も日本家屋の大工さんだったというIさん。Iさんと北渡建設さんとの出合いに深いご縁を感じた取材でした。


2018年12月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。

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