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あなたが太る原因~健康な食への道  天使大学看護栄養学部教授 荒川 義人さん

天使大学看護栄養学部教授 荒川 義人さん


天使大学看護栄養学部教授 荒川 義人さん

荒川教授監修の野菜ブック


荒川教授監修の野菜ブック

食べ過ぎに気をつけているのにどうしても太ってしまう。
皆さんが毎日食べている食事は、はたして健康的な正しい食事でしょうか?
食品栄養と食育の専門家、天使大学看護栄養学部教授 荒川 義人さんにお話を伺いました。

太らないために「食事を抜く」はダメ
 中高年に多く見られるメタボリック症候群は内臓脂肪が原因です。その内臓脂肪をためないように注意が必要なのは過食です。例えば、晩酌のアルコールはエネルギーが大きいので気をつけたい。しかし、太らないために食事を抜くという人がいます。
 ひょっとすると1回分のエネルギーを少しは減らせるのかもしれませんが、人間の体というのは不足していたら貯めようと働きます。2回しか食べなかったら1回で食べたものをしっかり貯めようとすることもあります。
 3回分のエネルギーのうちの2/3を2回でとるのなら、やせていく可能性はあります。しかし人間は、ある程度お腹をいっぱいにしないと満足できないものです。余計なものを食べたり1回の食べる量が増えたりするとダイエットも意味のないことになってしまいます。
 
危険な誘惑!脂肪と甘いもの
 近年、とり過ぎが問題になっているのは脂質です。文明が進んでくると、どこの国でも高脂肪食になります。簡単に言うと食生活の欧米化で、裕福になると必ず肉が増えてくる。
 ここで誤解しないで欲しいのですが、肉は悪くありません。肉は動物性たんぱく質が豊富なすばらしい食べ物です。しかし肉には脂が一緒に含まれており、知らないうちに脂肪を多くとってしまうため、肥満などの原因になります。
 同じ重さのものと比較すると脂の方が倍以上のエネルギーを持ちます。非常時の食物としては、脂を含んでいる食品はとても有効で命を救うことができます。しかし普段の食事ではとり過ぎると逆に危険です。
 脂というのはコクがあっておいしい。これは生きていくために必要なエネルギーなので、私たちの体は積極的にとるように作られているのです。
 甘いものも同様です。脂や甘いものが食べる量の50~60%を占めていても、私たちの体は受け入れてしまう。塩や酢が50%なんて絶対に受け入れない。よく母親が子どもに言うのは「なんであんたは甘いものばっかり食べるの?」。その問いかけは間違いなのです。

健康な食は生活リズムから 

 20歳代、30歳代の方は朝食を食べない割合が高く偏食が多い。これでは生活習慣病へまっしぐらです。1日に必要な栄養素は3回の食事でようやくとれるもの。2回では当然足りなくなるので、栄養バランスが崩れてしまうのは明らかです。
 もともと、私たちの生活リズムは「BREAK FAST」(朝食)をとるようになっています。BREAK とは(破る)、FAST とは(断食)。BREAK FASTは(断食を止める)という意味です。
 私たちは前日の夕食から次の食事まで断食状態が続いているわけです。そのような断食状態のまま朝食をとらずにいると、体の機能が午前中は十分な働きができなくなってしまいます。
 今、なぜ朝食を抜く人たちの割合が増えているのかといえば、夜遅くまで起きているからです。夜中に食べたり飲んだりしていて朝起きたときに断食状態ではないので食欲がない。また、ギリギリまで寝ているため朝食をとる時間もないのです。
 「早寝早起き朝ごはん」は、まさに健康を守る生活リズムです。この生活リズムを整えることで「お腹がすいて食べる」という人間本来の「食べる」意味が出てくるのです。

美味しい食の経験を子供たちに
 味覚は慣れです。小さい頃から何が本当においしい食なのかを理解していなければ、慣れている味を安心して受け入れてしまいます。脂っこいものや塩分の多いものを小さい頃から食べ続けていると、それがその人の食習慣になってしまう。それは本当に怖いことです。
 成長段階に体験する価値は計り知れないものがあります。子供の好き嫌いも体験に基づく場合がほとんどです。私がコメンテーターとして関わるHBCの「森崎博之のあぐり王国北海道」というテレビ番組が今放映されています。
 そこで子どもたちは畑に行って、実際、野菜の収穫などを体験すると、ピーマン嫌いな子が「本当においしい」とピーマンを食べ始めます。体験を通して、食べることの大切さを伝えるということがとても大事です。
 それが「食育」ですが、机の上で写真を見ながら伝えてもなかなか効果は得られにくい。学校の授業でも、生産者と学校が一体となると体験型のプログラムが組みやすくなります。
 こういうことも含めて食育は単独の部署で行う縦割り行政ではなく、教育委員会、農政、保健行政などがネットワークを作り、系統だった食の指導を行うと、より効果的な食育が推進できるのです。

「あれが食べたいな」が理想
 食欲というのは体と心に反映するものです。どうしてもこれを食べなくてはいけないという義務感を持ってしまうと食事ではなくなってしまいます。食べることに無理は好ましくありません。
 むしろ自然に食べたいものがたくさん浮かんでくるということが大切だと思います。それが食欲です。「あれが食べたいな、これが食べたいな」といった、明確な食べものが浮かんでくるような体調や状況を生活のなかで作って欲しいのです。
 「お腹がすいたからなんでもいい」という単なる空腹は動物の世界です。食べたいものが浮かんでくるということは、食事のいろんな経験から育まれます。
 ともかく食べるということを意識して「自分にはこういうものがいい」「こういうものが美味しい」などの経験がたくさんインプットされていると、バラエティに富んだ適切な食事ができます。


荒川義人(あらかわ・よしひと)氏のプロフィール
農学博士。天使大学看護栄養学部教授(食品栄養学)。
札幌市食育推進会議会長ほか。 著書/報告書「地産地
消」の発展をめざして(北海道)、報告書" 食料生産地"
における「食育」の推進(北海道)、テキスト「北海道フー
ドマイスター」(札幌商工会議所)など。

編集者:山田淳子

2009年10月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。