Column いえズーム コラム

自由が丘のマダムが驚き、宮の森のお嬢様が感心する;HEMS(ヘムス)ってすごい!でもよくわからないのはスマートハウス(下)

「スマートハウス」「HEMS」など、聞き慣れない言葉が最近住宅業界で流行しています。不勉強な私も、東京の展示会で勉強しようと飛んで行ってきました。そこで感じたことの続き。

太陽光発電+蓄電池はお手軽版の「スマートハウス」と言えそう


太陽光発電+蓄電池はお手軽版の「スマートハウス」と言えそう

座るだけで心拍数などがわかるセンサーまで実用化されている。『スマートに』監視される時代!?


座るだけで心拍数などがわかるセンサーまで実用化されている。『スマートに』監視される時代!?

モデルハウスとして公開中のスマートハウスのパンフレット。スマートハウスの説明は最小限にとどめている


モデルハウスとして公開中のスマートハウスのパンフレット。スマートハウスの説明は最小限にとどめている

おまけ;横浜の全く別のモデルハウスの写真だが、室外機の設置位置がずいぶん波打っている。ひょっとして液状化の痕跡!?


おまけ;横浜の全く別のモデルハウスの写真だが、室外機の設置位置がずいぶん波打っている。ひょっとして液状化の痕跡!?

スマートハウスって何?

数々のインターネットサイトを見る限りでは、スマートハウスには
 1.創電 太陽光発電や燃料電池発電など自力で電力を生み出す
 2.蓄電 家庭使用量の1日分以上をまかなえる大容量の蓄電池を備える
 3.最適化制御 気象条件や時間帯などの条件も加味して家庭内の消費エネルギーを最小限に押さえる
 4.HEMS 消費エネルギーの見える化を行って居住者の省エネ意識を高める
といった4つの要素が必要なようです。


私が展示会で見たスマートハウスは、先ほどの4要素のうち、創電、蓄電、HEMSに関してはクリアしているようです。ただし、最適化制御に関してはまだ研究段階のようでした。

iPadに似たタブレット型端末を使い、その画面上に町内会のお知らせや最寄り駅の電車の時刻表、それから太陽光発電の発電量や家庭内の消費電力量などを1つの画面に表示します。さらにタブレット端末に内蔵されたカメラが家の床や照明などを映し出すと、たとえば床暖房や照明の消費電力を画面上にリアルタイムで表示することができます。


受けた印象を一言で言えば、コンピュータですべて制御される家と言っていいかもしれません。今まではコンピュータ同士がネットでつながっていましたが、これからは家そのものや家電製品もネットワークにつながるのです。今後普及する「IPv6」と言われるインターネット接続の新しい仕組みとも関係ありますから、インターネットが普及した時と同じくらい大きなインパクトがあります。

一方で、「そこまでやる理由は何だろう?ほんとうの目標は何?」という疑問も感じました。説明を担当していた人も「正直ここまで管理されることがいいのかどうか・・・」と言葉を濁す場面もありました。


メーカーはまだ本気でない?
展示会の後、大手ハウスメーカーが公開しているスマートハウスを横浜まで見に行きました。電車に乗っていると、自由が丘ではテニスラケットを抱えたマダムが乗り込み、到着したスマートハウスのある住宅展示場も、お金持ち向けそうな立派な家ばかりが建ち並んでいます。


驚いたのは、展示場でもらったパンフレットを見ても、「素材が魅せる極上の寛ぎ」「収納マジックのある住まい」など、スマートハウスを連想させるものが皆無と言っていいことでした。普通のモデルハウスの説明なのです。よく見ると、隅っちょに「新しいテクノロジーのある暮らし」という項目に「CO2削減にも貢献できるライフスタイルの提案を行います」と書いてあるだけです。細かな説明はありません。


モデルハウスを見ても、スマートハウスで重要な要素であるエネファームや蓄電池は「中身が入ってないので実際には動きません」とのこと。また、室内のエアコンなど、コンピュータから集中コントロールする機能も「節電のためコンセントを元から抜いている」ということで作動しませんでした。「私、使ったことないのでやり方もよくわからないんですよ」とモデルハウスの説明担当の女性。


「これがスマートハウス?」と思わず声を出しそうになりました。
メーカーからすれば、実験住宅ではないのでお金をかけたくなかったのかもしれません。でも、この姿勢からは「こんなことも可能ですよ」というぐらいの本気度しか感じられませんでした。

今後、スマートハウスを推進していくためにはコンピュータウイルスの混入で住宅の制御がうまくいかなくなるなどの危険性にどう備えるかなどの課題もあり、大手ハウスメーカーなどが集まって研究を進めるそうです。そうすると実用化にはまだ時間がかかりそう。

また、スマートハウス実現には多大な費用がかかります。たとえば蓄電。1日分の非常用電力を確保するのに100万円単位のお金がかかります。これに太陽光発電や燃料電池を装備したらもう大変な額です。これをコストダウンするのはかなり大変です。

ただ、エネルギー資源の奪い合いが始まっている今日、こうした省エネを電力供給側と消費側とを結びつけて効率的にやろうとする方法は、時間はかかっても普及させていくでしょう。

スマートハウス=お金持ちのための住宅-かもしれません。未だ小さなマンション暮らしの私からすれば、遠い国のできごとのような気がしました。


※ご参考
IPv6とは http://flets-square-guide.com/sp/what/page1.html
IPv6とHEMS・スマートハウスとの関係 http://www.soumu.go.jp/main_content/000124350.pdf (総務省:IPv6によるインターネットの利用高度化に関する研究会(第14回)配布資料)
スマートハウスの課題 http://yushimiura.blogspot.com/2011/01/blog-post_27.html

2011年10月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。