住宅業界の第1線で活躍されている女性にお集まりいただき、快適な住まいづくりのために何ができるか話し合う女性座談会の第3回です。第1回はこちら
自社の差別化策は?
司会 他社との差別化、特色を打ち出す必要が出てくると思いますが、池田さんの愛犬家住宅というのは面白そうですね。池田 愛犬家住宅と言うと「お犬さま?」と思われがちですが、決してそういった発想ではないんです。犬と暮らす人が、世話をするにも安全面でも使いやすく、イライラを感じずに楽しく暮らせる、そんな家づくりをしています。それに、犬が暮らしやすい家というのは基本的にバリアフリーの家を造るということなので、小さな子どもや高齢者の方にとっても暮らしやすい家でもあります。
蝶野 コーラルハウスという住宅の特長もありますが、我が社は営業部門を置かないというのが社長の方針でして、お会いした最初から最後までお客さまと設計が接することができるのが強みと感じています。
斎藤 うちの会社では、先ほども女性目線を大事にすると言いました通り、社長が何でもやらせてくれるんですよ。例えば私たちが設計したモデルハウスは担当に任せ完成を楽しみにしています。また、モデルハウス内で講師を招いて奥様向けのハンドメイド教室を開いたり、私も子ども服づくりの上手なOBのお客さんに「モデルハウスを使って委託販売してみない?」と声をかけたりと、ネットワークを広げています。
篠崎 私自身は、これから整理収納アドバイザーや最近よく聞く「片付け」についても更に勉強し、引っ越す際の片付けのお手伝いや引っ越し後の収納についてなど、小さな会社ならではの気配りを大切にしていきたいと考えています。当社では、プランの打合せもお客さまにご納得頂けるまで何度も繰り返します。パースや展開図・模型などさまざまなツールを使う。詳細部になるほど私たち女性スタッフが力を発揮できると感じます。
また、ホームページで「しのカフェ」という企画も告知しています。このきっかけは、うちの事務所へ打ち合わせに来るお客さまが、いつも"おうちへ遊びに来る"感覚で楽しみながら過ごされるので、そのお客さまから「カフェだったらいいのに」と言われて企画してみました。予約制でまだ始めたばかりですが、家造りを考えているお客さまが気軽に寄れるきっかけになればと考えています。
学ぶ機会づくり
司会 それはいいですね。皆さんも自身のスキルアップやモチベーションアップを学べる機会が会社にはありますか。柳 私の事業部では、年始めに一年の目標を持ってもらい私がそれを達成するためサポートする形を取っています。昨年はその1人が整理収納アドバイザーの認定講師資格を取りまして、今では社内外でセミナー活動を行うなど、活躍しています。
伊藤 メーカーの勉強会や講習会、また現場でくじけたり自分で限界になったりしないように精神面を強くするメンタルトレーニングのセミナーなど、「こういうのがあるよ」とみんなに言うことで、最初のきっかけだけはつくっています。そこからはスタッフが興味を持つかどうかですね。
蝶野 個々で学ぶ講習会等はありますが別に三五勉強会という勉強会があり当社の歴史を語り部として話していただいたり、また先日は消防署の方に来ていただいてAED(心肺蘇生法)の使い方の講習を受けたりしました。木材屋さんの木のお話や設備屋さんをお招きしての最近の設備動向などの勉強会もあります。お題にあまり興味がなかった時でも、ひとまず耳に入れてなるほどと思うことや知識が広がります。私も勉強になっています。
宣伝手法も女性目線で
司会 皆さんは社内でお客さまのニーズにピントを合わせながら活躍されていますが、ぶっちゃけ住宅会社に足りない魅力って何でしょうね。
伊藤 住宅会社さんが出すチラシや雑誌を見ると、高気密・高断熱やハイスペックといったハード面に関するものがとても多いですよね。でも、本屋さんに行ってどの雑誌が売れているかよく見てください。大型書店ではインテリア雑誌が女性、趣味、建築の三つのコーナーに置いてあります。実はお客さまが見ているのは、住宅性能の本ではなく「こういうおうちに住みたいな」と思いながら眺められる雑誌です。そういったことに気づかない会社は「家族のための4LDK、坪58万円」といったチラシを相変わらず出してしまう。消費者が買いたいものと建築サイドが売りたいもののギャップがあると思います。岩波 高気密・高断熱という性能がベースにあって、なおかつインテリア性が高ければ、それがお客さまには一番ですよね。やはり小さな住宅会社さんでも、センスの良い女性社員を採用するといいんじゃないでしょうか。
斎藤 うちの会社はスペックとしては十分なものを造っていますので、ソフトの部分を宣伝媒体では打ち出していますが、逆に「インテリアは可愛いけど性能は大丈夫なの?」と心配される男性もいらっしゃいます。ですから、うまく両方を出さないと今のお客さまは納得しないのかなと思っています。
篠崎 うちでもチラシを作る時に、夫とは意見が分かれます。私は素敵な写真をドンと入れたいんですが、夫は性能面をメインにしたい。とはいえ、最近は夫も女性目線の大切さを充分に感じており、アイデアや意見を求めてくれるようになりました。うまく折り合いを付けながらと思っています。
自社センスが分かる方法
司会 それでは最後に、皆さんの目から見た「住宅会社・工務店が生き残るためのアイデア」はありますか。蝶野 やはり、お客さまに満足してもらえるようなプラスアルファの提案を、最初の段階でできるかどうかだと思います。「この会社は大丈夫なの?いつまであるの?」と不安があると思います。お客様が会社にお問合せの段階で訴求力が高ければ、もっともっと話を聞いてみたいになります。最近のお客さまはパソコンでの評判サイトなどを見て安全と判断してから話を聞きに行く。住宅性能は、今は当たり前、見て楽しめてそして肌で感じられるというのが今の住宅ニーズかなと思います。ファーストコンタクトでどのぐらいのものを発信できるか。さらに、重要なのは対応するスタッフの印象です。最初の30秒で決まってしまうと思います。それが会社の印象にもつながるわけです。例えば年齢が高くメガネをかけたキリッとした男性に「社長です」と名刺を出されても、若いお客様には話しづらくなってしまい、自分達の思い描く住宅計画の希望や夢を話しづらいものにしてしまっているかもしれません。たとえば女性を窓口にして、お客様の思いを話しやすい空間を創ってあげるのも良いのではと思います。
司会 住宅業界も高齢化し、住宅購入層と年代差が生じていますのでその点の気配りは必要でしょうね。
伊藤 ある工務店の社長さんに「社長の奥様は社長の会社の住宅に住みたいと思っていますか?」と尋ねたら「いや、ウチのはセンスがないから嫌だと言うんだよね」と堂々とおっしゃっていました。いちばん厳しく本音を言ってくれる奥様に聞いてみるべきだと思います。「いや、あいつは素人だから当てにならない」とおっしゃいますが、お客さまは素人さんですから。
斎藤 奥さまに自社の住宅を嫌だって言われるなんて、何だか悲しいですよね。
伊藤 これが最も簡単でローコストなリサーチです。このような経営者の場合、おそらく会議でも反論する社員がいないでしょうから。
池田 住宅はまず基本性能が重要ですが、同時に間取りや収納、デザイン、インテリアなどによってライフスタイルもより良く変わることにお客さまも気付いてきたのだと思います。
さらにお客さまでは想像できないことを私たちの立場で提案することで、家族が集い、仲良く楽しく住むことのできる家になる、それがひいては社会も変えられるような影響を持っているのではと思います。
司会 住宅性能といったハード面と同時に、インテリアなどのソフトも重視して家づくりや宣伝に活かしていく、そのためにも生活者である女性の目線は必要ですね。また、いくら優れた住宅をつくっても会社がお客さまの目に留まらなくては意味がない、そのための工夫もいくつか教えていただきました。新年に当たっていろいろと考えるヒントになったと思います。今回は皆さん、ありがとうございました。(終わり)
●女性の気配り・生活者目線が理想の住まいを実現する-女性座談会その1
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