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自然素材をふんだんに使った、十勝鹿追町の高気密高断熱住宅/ソトシロ建設

十勝・清水町に本社があるソトシロ建設((有)外城建設)は、外城晶啓社長が1986年に創業したツーバイフォー工法を得意とする工務店です。ツーバイフォー工法に取り組む地域工務店が結成した十勝ツーバイフォー協会に所属し、建築技術や最新情報を学びながら、30年以上続く会社です。地元・清水町はもちろんのこと、周辺の鹿追町や芽室町、また帯広市などでもこれまで多くの住宅を建てています。

息子の外城征教さんは、建築技術を学んだカナダから戻り、現在常務取締役として晶啓社長と一緒に働きながら営業、設計、現場管理などに忙しい毎日を送っています。

そんな征教さんが清水町の隣、鹿追町に自宅兼鹿追支店を2018年春に完成させました。外城建設の家づくりの魅力を採り入れたモデルハウスのようなできばえだと聞き、取材に行きました。


目次

清水町の隣町・鹿追町に支店を開設。自宅兼事務所を建てた



鹿追市街の中心部を抜けてすぐ、農地が広がる中に建つ外城征教邸。ダイナミックな勾配屋根の2階建てで、1階の少し出っ張った下屋部分が鹿追支店の事務所です。十勝らしい澄んだ青空に似合う、暖かみのある外観デザインです。



鹿追町に自宅を建てた理由について、外城征教常務に聞きました。

「十勝は北海道の中でも活気があり、帯広の人口はほとんど減っていませんが、町村部の人口減少は他の地域と共通の問題です。そんな中、町村部の工務店や建設会社は後継者難で廃業するケースも出てきています。建て替えやリフォームなど、住宅や木造建築全般で相談できる工務店が減っていくのは町が繁栄していくためにも大きな問題。そこで当社は、清水町に事務所を構えるだけではなく、周辺地域にも根を下ろした存在になり、地域のみなさまに頼っていただける工務店になりたいと考えており、清水町の隣・鹿追町に支店を出すだけでなく自分も実際に住んで地域に溶け込みたい、と自宅を建てることにしました」

海外に留学して日本や和の良さを知る


モダンなフチなし畳と、ダイナミックな床柱が個性的な和室


外城常務と奥さまの未来さんは、2人とも北米に留学した経験があります。そこで発見したのは日本の良さ。奥さまは、「アメリカに行って和服の良さ、奥深さに気づきました。今は着物を着るのが大好きです。だから和室は欲しかったし、せっかくだから雪見障子も欲しかった」と言います。フチなし畳もおしゃれ。



外城常務も、「畳も最近は樹脂系素材を使ったものが扱いやすさで人気なのですが、あえて本い草にこだわりました。小さな子供たちに本物に触れてほしいし、体にも良いと思うからです」
 


広々したウッドデッキ(写真下)でいろいろ楽しめそう


ツーバイフォー工法は、北米を開拓した人たちが質の高い住宅を自分たちで建てるために考案した合理的な工法。カナダと似た寒冷な気候の十勝でも主流になっています。しかし、暮らし方は日本人の感性や嗜好を重視したいと外城常務は考えています。本格的な和室を作ったのもそのためだとか。和室に縁側もほしかったぐらいですが、北海道なので冬のことを考えてあきらめたそうです。その代わり、LDKには大きなウッドデッキがあり、夏は焼き肉などいろいろ楽しめそう。



このほか和室には、特徴的な床柱が使われています。ムロ(榁)を磨き上げたもので、帯広の木材問屋で仕入れてきました。また、床の間にはおばあちゃんが書いたという素敵な絵や書が掛かっています。

60坪もある家なのに冬の灯油代は月2万円以下!


暖かな日差しが入るリビングの大きな窓


外城常務が家づくりで一番大切にしているのは性能。十勝は、夏は最高気温が30度以上、冬は最低気温が氷点下30度近くに達することもある寒暖差の激しい地域。冬暖かい家はもちろんですが、暖房費がかさむ家は不満の大きな原因に。

「結露、すきま風などの問題が生じないよう、高断熱・高気密を特に意識しています」社長も常務も「お客様の満足があってこその家づくり」と考えており、そのためにも住宅性能は優先しています。


見晴らしの良い2階の寝室


外城常務の家は、外城建設がお勧めする住宅性能の見本として建てています。たとえば外壁の断熱は、ツーバイシックスの140mmの柱の間にロックウール断熱材を吹き込み、さらに柱の外側に繊維系断熱材の2倍近い断熱性能を持つフェノールフォーム断熱板を50mm張っています。
 
窓は、冬の日照時間が短い北側と西側には熱が逃げにくいトリプルガラス入りサッシを採用。逆に冬でも十分に日があたって太陽熱を室内に取りこみやすい南側と東側はペアガラスサッシを採用。夜はカーテンやブラインドを閉めることで熱が逃げにくくなります。



断熱性能を表すUA値は0.28W。国の省エネ基準0.46Wより大幅に断熱性能が高くなりました。ここまで性能を高めることで、冬の暖房費を大幅に減らすことができます。また、住宅のすき間面積C値は0.3cm2/m2。このすき間面積が大きいとせっかくの断熱性能が生きません。一般的なツーバイフォー工法の住宅では1cm2以下であれば十分と言われますが、その3倍以上の気密性能です。

暖房と給湯は灯油ボイラー・エコフィールを採用。事務所部分を入れると、約60坪もあり、LDKの天井高は最大4.4mもある大きな建物ですが、真冬でも灯油代は月2万円以下。電気代も月1万円台半ばで収まっているそうです。「大きな窓から日光が入るため、真冬でもウソのように暖かいんですよ」と奥さま。それまで住んでいたアパートとのあまりの違いにびっくりしたそうです。


エコフィールはユーティリティーに設置


また、室内をクリーンに保つ換気システムは、カナダ・ライフブレス熱交換換気を採用。これまでは室内を換気するときに、暖房で暖まった熱も一緒に外に捨てていましたが、ライフブレスは熱交換器で外から取り入れる冷たい空気を暖め、室内に取り入れます。汚れた空気は冷たくなって排気されるので無駄がありません。氷点下30度が当たり前の地域も多いカナダで長年の使用実績があるシステムで、採用を決めました。

使いやすい設計はお客様満足につながる


天井はレッドシダー材の羽目板を張っている。右のドアがパントリー(食品庫)


現在、未来さんも外城建設の仕事を手伝っています。さらに英語力を生かして起業し、輸入販売なども行っています。お子様が2人いる中、2つの仕事を抱えて忙しいため家事動線や手間を最小限に抑えるプランにこだわりました。

外城常務「カナダで住宅建築を学んで帰国後、日本で建築系の大学に入り直して卒業後、東京の設計事務所に勤めていろんな設計に従事しました。ビルでも住宅でも建て主様の希望、ご意向をしっかり汲み取って設計提案することの重要性を学びました。ですから、この家は奥さんの要望をほとんど聞いて作っています」


玄関ホール脇のシューズクローゼットは多くの衣類やベビーカーまで収納


玄関を入ると広い玄関ホール。右手奥すぐに2畳分のパントリー(食品庫)が。また、玄関ホールの隣は約4.5畳もあるシューズクローゼットがあり、お出かけ着だけでなく、ベビーカーや除雪道具などもいっしょにしまえます。



玄関ホールすぐ左手のドアを開けると、22.5畳もあるLDKが広がります。買い物から帰って買い置きしたい食料品などはパントリーに直行。そして、LDKはキッチンが手前にあるため、冷蔵庫へのアクセスも最短距離で済みます。



食洗機から食器を収納するまでの動線が最短で済むキッチン


キッチンの食洗機と、背後にある食器棚の扉を開くと、一歩も動かずに食器を収納できるために、毎日の家事がスムーズにこなせます。



ユーティリティーは7.5畳もある広さ。洗濯物をたたまずにハンガーにかけて収納できたり、ゆとりがあるため使いやすくなっています。

外城常務は、「家づくりの打ち合わせの時、奥さまは家事を知り尽くしているので、ゴミ箱の位置まで指定されることもありますが、そういったご要望にもこまめに対応します。一方で頑丈な建物を作るためにできないご要望をお断りすることもあります。できることはできる、できないことはできないと、優しく話しますが、伝えるべき事ははっきり伝えます」

自然素材をたっぷり使って安心な家に


塗り壁と木をふんだんに使った室内


外城常務が自然素材にこだわる理由は、「人工的な素材をたくさん使うと、シックハウスの原因になるかもしれません。自然素材を使った建材は、アレルギーやアトピーなどを持つお子さまにも優しく、また木をふんだんに使うと人に癒やしの効果があります」からだと言います。


家づくりの記念に、珪藻土塗り壁を塗るときに手形をつけた


室内の壁も、ふつうの家ではビニールクロスを使いますが、常務の自宅ではほとんど珪藻土塗り壁を使っています。調湿作用や消臭効果などが期待できるほか、色やコテムラのつけ方などで表情が変わり、デザインの変化もつけられます。


サブウェイタイルも素敵なキッチン収納


ご夫婦とも「家に入ると、空気の良さを感じる」と口をそろえて言います。お友達が遊びに来たときも「この家、なんかいごこちがいいね」と言われるそうです。

「外城建設の住宅には、企画住宅はありません。一軒一軒お客様のご要望を丁寧に聞いて設計するオーダーメイドの注文住宅です。性能というハード面はもちろん、間取りや使い勝手といったソフト面でご満足いただけること、また顔の見える家づくりで地域に密着して仕事を続けることが大事」と外城常務は話しました。

記者の目



奥さまは、「ホームページをリニューアルするときに、社長と常務にそれぞれお話を聞きましたが、仕事に対する姿勢、価値観はほんとにそっくりでした。唯一違ったのが『お客様満足度の追求』で、社長は『オレはお客様に120%満足してほしいと思っている』と言ったのに対し、常務は『やるからには200%の満足度を目指す』と言ってました」と笑いながら話してくれました。

工務店の後継者不足が言われる中、家づくりの考え方や価値観も2代目にしっかり受け継がれようとしている工務店は応援したくなりました。


2020年01月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。

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