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札幌の建築家が自邸をリノベーション 江別市文京台・笠井啓介建築研究所


近年、建て主が好みの外観や内装をインスタグラムで自ら見つけ、取り入れてもらう注文住宅が増えています。施主のイメージ通りの家を実現するという意味では良い方法ですが、それは家づくりのプロに一から考えてもらう家づくりではありません。プロのセンスやコーディネート力を存分に発揮してもらう家づくりに興味があるなら「建築家」に相談するというのも有力な選択肢です。

今回ご紹介する建築家・笠井啓介さんのご自宅兼オフィス兼モデルハウスは、

・築36年の祖母の家をリノベーション
・施主のライフスタイルや趣味を軸にした設計
・リビングやダイニングなどを独立空間として演出
・オーダーの建具やテーブル、家具など造作の充実

が見どころです。さっそくお邪魔します。

ご提案したい外観の色を採用



改修前と後の外観の違い


「赤茶色のガルバリウム鋼板は、少し派手ではないかと思われがちですが、選択肢としては素敵な色味なので、実物を見ていただきたくて、自宅で採用してみました」と笠井さん。



江別市文京台は積雪量が毎年5mを超える寒冷地ですが、冬は薪ストーブ1台で過ごすため、自宅の周囲には沢山の薪がストックされています。

吹き抜けをまっすぐ伸びる薪ストーブの煙突


日本製ホンマ製作所の薪ストーブ


吹き抜け、薪ストーブがあるリビングには、四方八方へと元気に育つビカクシダ(樹木に着生しているシダの仲間)が有孔ボードの壁に取り付けられています。



道行く人から家の中は見えない、そして採光や、夜空が見えるように、リビングの窓は高窓を選びました。開放感のある吹き抜けと相まって、ゆったりした時間を過ごせる空間になっています。

空間を分けるために天井に施した複雑な「段差」



手前のリビング、左側のアクアリウムスペース、中央奥のダイニングは、それぞれ天井の高さや素材が異なり、それぞれの空間の違いを演出しています。住宅を間取りやデザインだけでなく、立体的な視点で構築する笠井さんらしい設計手法です。

ご夫婦で共通の趣味を楽しむ空間



左は幅90センチのアクアリウム(熱帯魚水槽)。流木や水草の中をレモンテトラやコンゴテトラが悠々と泳いでいます。中央はパルダリウム、右は水中部分と陸地部分を混在させたアクアテラリウムで、美しい葉を持つ原種ベコニアなども導入しています。水槽の設置や初期レイアウトは、札幌市中央区のアクアショップ「BRIGHA GREEN」さんの協力を受けています。



ネイチャーアクアリウム(水草や魚などによる生態系を再現し美しい水景を作り出す)を楽しむ人は多いですが、ろ過器や照明、ミドボン(二酸化炭素のタンク)、電気配線や餌、肥料などで周囲が雑然としてしまうケースもあります。

そこで笠井邸では、水槽上部にはLED照明等、水槽下部には外部フィルターなどが見えないように収納。水槽が家のインテリアとしてもデザイン性を高めています。

観葉植物専用の場所を確保したダイニング


マダガスカル原産のものが多く、中には「火星人」とついた植物も。


コロナ禍に、自宅で過ごす時間を楽しむために育て始めた多肉植物が増えたので、太陽光があたりやすくインテリアとしても綺麗に並べられる棚をダイニングに設けました。


イスは、飛騨産業の「森のことば」。


リノベーション前は、階段の踏み板に使われていた無垢の木材をダイニングテーブルに再利用しました。

「程よくサビれた快適な住宅」を目指して

家づくりの経緯について笠井さんにお話を伺いました。

リノベーションの狙いは?



築36年の家は、最近は賃貸住宅として使っていたのですが、賃料より修繕費の方が高い状況でした。良い木材や建具などが使われていて、壊してしまうのも惜しい。大学の建築学科で同級生だった妻とも相談し、この家を「程よくサビれた快適な住宅」としてリノベーションしようと決めました。

主なリノベーションのポイントは?


改修前と後の図面を比較。右下の車庫は、エントランスに。右上の和室は、書斎に変更。


夫婦2人の暮らしであることを踏まえ、今回のリノベーションでの大きな変更は、1階の一体化していたLDKを、リビング、ダイニング、キッチンという別の空間にしたこと。2階は、和室を撤去してリビングの吹き抜け空間にしました。



リノベーションでは、基礎と主要構造部分を活かしました。週末は工事に参加し、元野幌にある創業80年の米澤煉瓦製のレンガを使用した薪ストーブの土台は、夫婦で3日かけてセルフビルドしました。



住宅の意匠面では、壁や床などの素材や色だけでなく、窓枠や室内扉、巾木、照明スイッチなど、細部の部材などを造作するなど、きめ細やかな配慮を含めてデザインしています。



2階の寝室は、窓からの景色を美しく見せるために、室内側からは窓枠の上端が見えないように設計上の工夫をしました。

奥に見えるクローゼットの天井には、ダクトを設置。薪ストーブから2階に上昇してきた温かい空気を1階の書斎とUTに移動させることで家全体の温度を均一化させています。

最後に一言お願いします。


趣味はフライフィッシング。フライタイイング中の笠井さん。


今回は自邸に夫婦の趣味やライフスタイルを多く取り入れました。住まいにデザインのこだわりや、趣味、ライフスタイル、インテリアなどを取り入れた家づくりがしたい方の参考になると思います。住宅会社グループが東北から見学に来たりもしています。ハウスメーカーでは実現しにくい家づくりも可能です。ぜひお問い合わせください。
https://iezoom.jp/company/company-1282.html



2024年12月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。

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