建築関連をはじめ造園、和裁・洋裁、理容・美容、調理など、ものづくりのプロフェッショナルが一堂に集う「第8回札幌技能フェスティバル」が8月9日、札幌コンベンションセンターで開催されました。第1回から中核的存在として運営に携わってきた丸三ホクシン建設では今年も社長の首藤一弘さん以下総勢8名が参加しました。
人気の体験コーナー 夏休みの宿題もこれで解決
日常生活の中で工具を手にする機会がなくなった今の子供たちに、ものづくりの素晴らしさを伝える年に1度の技能の祭典。職人さんたちが腕をふるった工芸品の展示・即売のほか、プロの指導でオリジナルの作品づくりができる体験コーナーや丸太切り競争、昔なつかしい餅まき、はしご乗りなどが行われ、大人も子供も夏休みのひとときを楽しんでいました。アンケートに答えた人の中から沖縄旅行やコンサドーレ札幌観戦チケット、温泉宿泊券等が当たる抽選会もあります。
中でも子供たちに大人気なのが各ブースに設けられた「職人さん体験コーナー」。「夏休みの自由研究が一気に片付く」とお父さん、お母さんにも評判です。
「宿題には皆さん苦労してるみたいですね。だから今年のテーマは『大人も子供も自由研究しよう!』です」と首藤さん。去年は課題を決めましたが、今年は準備したパーツを使って好きなものを作れるようにしました。自分の手で作品を作り上げる喜びを味わってもらうため、なるべく子供に手を動かしてもらうことを心がけたといいます。
ブルーシートが敷かれたブース内では小学生の男の子が数人、真剣な表情で作品づくりに取り組んでいます。お父さんと参加する子もいれば、大工さんとマンツーマンで黙々と作業を続ける子も。椅子づくりに挑んだ小学3年生は完成したばかりの作品を前に「釘がうまく打てなくて手が痛くなったけど、楽しかった」と最高の笑顔を見せてくれました。
理屈じゃない!技能の奥深さ実感
記者もカンナかけに挑戦。大工さんの指示に従い、刃を押さえながら木材に均等に力がかかるように引いてみます。が、カンナは貼り付いたみたいに全く動いてくれません。リベンジを試みるも、また失敗。あまりの不器用さに見かねた大工さんが軽く手を添えると、スイスイと木の上を滑り始めました。「理屈で教えることはできません。それが技能なんです」と首藤さん。大工さんの世界では道具を使いこなせるようになるのに何年もかかると言われていますが、その意味が実感としてわかりました。
なつかしい手作りの木製品
大工さんの手作りの木製品が並ぶ展示・即売コーナーには、お孫さんを連れた年輩のご夫婦や主婦が足を止めています。テーブル、シーソーなど大きなものから、まな板、なべしきといった小物類まで、どれも木のぬくもりがいっぱいの長く使える品々です。丸三ホクシン建設の大工さんが総出で作ったというスツールは座面にモザイクタイルを貼ったり、カラフルなカット畳を乗せてアレンジすることができます。
なぜか1本200円の「包丁とぎコーナー」も。「皆さんに喜んでいただけることをしようと始めましたが、好評なんですよ」(首藤さん)。
大工の技能が途絶えないように!
「実はこのお祭りの言い出しっぺは私なんです」と首藤さん。大工さんを志す若者が年々減少する中、「このままでは技能が途絶える」という危機感から前身となるイベントを企画、関係者の注目を集めました。その後、札幌市などの支援を得て2002年に札幌技能フェスティバルがスタート。試行錯誤を繰り返しながら現在の形に発展しました。
大工さんたちは毎年、休日返上で準備に追われます。時間的にも肉体的にもハードな活動を続けてきた理由をたずねると、こんな答えが返ってきました。
「大工などの技能職は勉強ができない人の仕事というイメージがあります。現場で汗だくになるよりパソコンを駆使する方がカッコイイですよね。でも、ものを作る仕事は人間の生活の根本をなす仕事。それを若い人たちに伝えたい。参加してくれた子供たちが1人でも大工になってくれたら言うことありませんが、違う職業を選択しても、ものづくりの大切さがわかる大人になってほしいと思います」(首藤さん)。
記者の目
「長引く不況から、どこの会社も大工見習いの若者を育てる余裕がなくなってきています」と首藤さん。いい大工さんがいなくなれば、いい家が建てられなくなります。1番損をするのは消費者。大工さんの世界の話では済みません。私達にとっても身近な問題です。(ライター 佐野結花)
2009年08月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。