Story 取材記事

「昭和」な歯医者さんが明るくモダンに 札幌市・小林さん

今回は一般の方にはあまり馴染みのない歯医者さんのリフォームを取材しました。歯医者さんと聞くだけで憂うつな気分になる記者ですが、モダンで遊び心ある院内に入ると、気分が軽くなりました。

明るく改装された外観。看板もロゴもシノザキ建築事務所がデザイン。医院は2階部分だ
明るく改装された外観。看板もロゴもシノザキ建築事務所がデザイン。医院は2階部分だ
とても落ち着いた待合室。北欧調の雰囲気にぴったりなイスとテーブルは、カンディハウスの「HANACO(ハナコ)」を使用
とても落ち着いた待合室。北欧調の雰囲気にぴったりなイスとテーブルは、カンディハウスの「HANACO(ハナコ)」を使用
待合室の外にある、洗面所(左)とトイレ(右の赤い扉)。リフォーム前(右上の写真)に比べるて印象が激変。天井にはBOSEの埋込スピーカーが
待合室の外にある、洗面所(左)とトイレ(右の赤い扉)。リフォーム前(右上の写真)に比べるて印象が激変。天井にはBOSEの埋込スピーカーが
待合室入り口の扉はレトロモダンな感じ。改装前から使っているストーブも違和感なくおさまっている
待合室入り口の扉はレトロモダンな感じ。改装前から使っているストーブも違和感なくおさまっている
壁のところどころに遊び心を見せる。特にお子さんの緊張感を解くのに良さそう。奥の棚は改装前と同じレイアウト
壁のところどころに遊び心を見せる。特にお子さんの緊張感を解くのに良さそう。奥の棚は改装前と同じレイアウト
階段室から見た待合室の大窓。開業当初から使っている貴重なものだ
階段室から見た待合室の大窓。開業当初から使っている貴重なものだ
治療室の壁紙は心和む野鳥の柄。こんな素敵な柄もあったんですね
治療室の壁紙は心和む野鳥の柄。こんな素敵な柄もあったんですね
治療室の区切りは、下半分を曇りガラスにしてプライバシーに配慮。イスの数を減らしたのでリフォーム前(写真右上)に比べてゆったりしました
治療室の区切りは、下半分を曇りガラスにしてプライバシーに配慮。イスの数を減らしたのでリフォーム前(写真右上)に比べてゆったりしました

ポイントはリラックスできる雰囲気作り

札幌市豊平区内の国道36号線沿いに3階建ての白い建物が見えてきました。取材におじゃまする小林歯科医院です。

もともとは虫歯の治療などを行う一般的な歯科医院でしたが、矯正歯科を専門とする小林成匡さんがお父さんの後を継ぎ院長に就任したのを機に、築30年の建物を全面改修し、リフレッシュしました。

1階は駐車場で、左脇の階段を上がった2階が医院になります。リフォームしたばかりの待合室で出迎えてくれた院長の小林さんは、メガネの奥の目が優しげな方でした。

院内のインテリアは病院っぽくありません。受付カウンターや建具などを白木で統一した暖かみのあるモダンな空間。

待合室のイスとテーブルは「いいものを長く使う」という考えから、旭川の家具メーカー「カンディハウス」で揃えています。

正面はシダのような葉っぱを壁に這わせたような柄のクロスが使われています。奇抜な感じではなく、ナチュラルな室内の雰囲気に違和感なく溶け込んでいます。

「以前、勤務していた東京の歯科医院が観葉植物のたくさんある庭みたいな歯医者さんだったんです。真似してみたかったけど虫がついて手入れが大変だと思い、このクロスを探してもらいました」と小林さん。全体のイメージは一般歯科担当する副院長でお姉さんの小林佐季子さんの意向で北欧調にしたそうです。

リフォーム前の建物は真っ白な壁にピータイルの床。「病院っぽい無機質で冷たい感じが気になっていた」と小林さんはいいます。

「たたでさえ歯医者さんというのは普通の人にとっては怖いところだと思います。特に歯の矯正は1回の治療に1時間から1時間半かかるうえ、月1回ペースで通常2年くらいの通院が必要。リラックスできる雰囲気づくりがとても大切なんです」。

そういえば、お手洗いの入口にはBOSEのスピーカーが埋め込まれていました。BGMをただ流すだけでなく、その音質にもこだわっているようです。

看板位置、ロゴまでトータルデザイン

「患者さんに緊張感を与えない明るく現代的な歯科医院にしたい」。
小林さんから大まかなイメージを伝えてもらった上で、

「インテリアコーディネートやカラープラン、照明計画だけでなく、看板の位置、ロゴのデザインまでトータルでご満足いただけるような提案を心がけました」
と設計を担当したシノザキ建築事務所代表取締役の篠崎廣和さん。

国道を走行中の車からよく見える位置に新たに看板を設置したのも篠崎さんのアドバイスがあったからだそうです。

「歯科医院の改装を専門に手がけている業者さんを2社あたりましたが、ロゴまでは考えてくれませんでした」と小林さん。
「専門業者に頼むと他の歯医者さんと同じになってしまうのでは」という心配もあったとか。

「シノザキ建築事務所さんを選んだのは住宅など幅広いノウハウを持っている篠崎社長が思いもよらないプランを考えてくれそうだから。イメージ通りの『歯医者さんっぽくない歯医者さん』にしていただきました」。

すっかり雰囲気が変わりましたが、以前のままのところもあります。

「リフォーム前から勤務しているスタッフが戸惑わないようにカウンターの棚の配置は変えていません。治療室の収納など生かせるものは手を加えて生かしました」。

階段を上がってくると右手に見える治療室の大きな窓も前からあったもの。今では手に入らないガラスが使われているため残すことにしたそうです。

大柄のクロスで治療室を個性的に

治療室の壁にもカワセミ、ヤマセミ、キビタキなど北海道でもおなじみの鳥をモチーフにした個性的なクロスが使われています。

かなり思い切った柄ですが、使われている面積が小さいため奇抜な感じはしません。

くつろげる雰囲気にするため、照明も吊り下げ式から、天井面から出っ張らないダウンライトと埋め込み式ライトに変更しました。

「矯正治療では矯正器具の調整のほか、器具を装着している部分のクリーニングやカウンセリングも行うので普通の歯の治療より時間がかかります。ずっと口を開けているわけではありませんが、隣の患者さんが気にならないようにしなくては」と小林さん。

そこで4つあった治療用の椅子を3つに減らし、間隔を十分空けるようにしました。椅子と椅子の間には木の枠に下半分だけ曇りガラスをはめ込んだ目隠しがあります。

「座っている隣の患者さんの視線を遮りながら、立って治療する先生同士はアイコンタクトがとれるデザインにしました」と篠﨑さん。

「1つのフロアで一般の治療と矯正治療を効率よくこなせるので仕事がしやすくなりました」と小林さんも満足そう。

5月8日に開催された歯医者さんを対象とした完成見学会では「優しい感じで心が和む」などの声が聞かれたそうです。

患者さんの評判も上々。「父の代からの患者さんの中には『せっかくキレイになったから汚したら悪い』と気をつかってくれる人もいます。これからも皆さんに安心して治療を受けていただける歯医者さんでいたいと思います」。

記者の一言

「住まいも歯科医院も人が使う建物。使いやすく美しくなければ」と篠崎さん。住宅もお店も医療施設も基本は一緒のようです。

余談ですが「歯科矯正は歯茎さえ健康なら中高年でも可能」とのこと。還暦を過ぎた患者さんもいらっしゃるそうな。まだ間に合うか...?

<小林歯科医院>
ホームページ http://kobayashi-shikaiin.jp/
住  所 札幌市豊平区豊平4条2丁目5-2
電話番号 011-811-2382
診療内容 歯科・矯正歯科・小児歯科
診療時間 月・火・水・金曜 9:30~19:30
土・第2第4日曜 9:30~17:00
※お昼休み13:00~14:30
 休診日 木・第1第3第5日曜・祝日

2011年07月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。

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