静かな住宅街の中に佇むO邸は、ご夫婦とお子さんが暮らす平屋住宅。設計・施工は芽室町のカントリーヴィレッジです。
30℃を超える真夏日の取材にもかかわらず、部屋の中はさわやかな心地よさ。リビングの大きな窓は、格子を閉じるとほどよく光を遮ります。
家づくりにあたり、Oさんには明確なイメージがありました。それは「余計なものを削ぎ落とした、シンプルな家」。
「シンプルだけれど格好つけるわけではなく、素朴さも残した家にしたいと考えていました。暮らしの場である家そのものが目立たないような家、というか。装飾を加えるのではなく、むしろ無駄なものを引いていくような家づくりがしたかったんです」(Oさん)
シンプルを追求した「引き算の家づくり」
「ホテルのようなスタイリッシュさではなく、家が主張しすぎない心地よさを」。
そう望んだLDKは、目を奪う装飾や視覚的ノイズの少ない自然な佇まいです。照明は部屋全体を照らすものではなく、必要な場所のみに配置することで陰影ある空間になっています。
存在そのものが生活感を漂わせがちなシステムキッチンは、リビングに溶け込む色とスタイルを選ぶことで主張を抑えました。
「アイランド部分にレンジフードやレンジガードを付けるとどうしてもキッチンが目立ってしまうので、Ⅱ型にしてコンロを壁付けにしました。リビングの延長という雰囲気にしたかったんです」(Oさん)
「鉢植えの重さに耐えられるものを」とリクエストしたキッチンシェルフは、鉄工所と相談して作ったぎりぎりの薄さ。さらに棚受けをつけず、壁の裏側で支えることで棚としての存在感を消しています。
冷蔵庫や家電製品は奥のパントリーにまとめました。
造作のハイドアには取手がなく、端に入れられた一本のスリットに手を掛けられるようになっています。見た目のシンプルさとつかみやすさを兼ねた仕様です。
外観は住宅地という環境に馴染むデザインを望んでいたOさん。「焼杉を使った三角屋根の家」と要望しました。
完成したのは、焼杉や漆喰といった素材で和の趣を感じさせる外観。同時に軒先(破風)を薄くし、和テイストを主張しすぎないデザインにもこだわりました。
窓でデザインする光と空間
O邸の大きな魅力となっているのが各部屋の窓です。
「北海道の家はしっかり断熱する必要があるので、窓の断熱性能や日射取得に注目した設計になりがちですが、室内側の空間演出という意味でもその位置や形は重要です」と、設計・施工を担当したカントリーヴィレッジの朝日良昌社長は語ります。
リビングに採用したLIXILのLW スライディング。室内側からは窓枠が見えないので、閉じていても開いていても景色を遮るものがありません。
「室内から屋外へ継ぎ目なくつながっているような感覚が魅力ですね。オプションの縦格子のアウターセットはカーテンがなくても視線や日射を遮ることができ、すっきりとした窓辺を演出できます。和の外観にもマッチしますね」(朝日社長)
和室の窓は、本格和室の雰囲気が漂う障子の内窓。一方で内窓を開けると高断熱の樹脂サッシがあり、意匠性の高さと性能が両立しています。
「くつろげる場所を」とつくった和室。障子ごしに柔らかい光が入ります。奥の机は裁縫などに使っているそうです。
隣家と面するリビングには、視線が交わらないように地窓と縦長の窓を配置。部屋の隅々まで明るくするのではなく、陰影をつくることで落ち着きのある空間になっています。
LDKの天井から差し込む光も四季や天気により様々に表情を変えます。
日差しの量はシェードの開閉で調節し、時間によって表情を変える美しさを楽しんでいます。
寝室は外からの視線や光の量を絞り、安眠しやすい環境に整えました。
細かな部分も意図を汲んだ家づくり
家づくりについてのお話を伺いました。
初めから建てたい家のイメージがあったということですが、建築会社選びはスムーズに進みましたか?
好みやイメージが固まっている中で選ぶのは難しかったです。Webサイトを見ても、「いいな」と感じる家はだいたい都会の建築事務所の設計だったりして、設計費がかさんでしまうのではと心配でした。
そんな中、家づくりの自由度が高い工務店を探していて出会ったのがカントリーヴィレッジです。
選んだ決め手はどこにあったのでしょうか?
考え方が自分と近いなと思ったんです。カントリーヴィレッジのWebサイトに載っている朝日さんの文章に「カントリーの家に日本のサッシは合わない」というのがあるのですが、私も周りの風景やインテリアと「合う・合わない」という感覚を大切にしたかった。
実際にお会いしてみたら好きな建築士さんが同じで、こちらの要望を分かってもらえそうだなと感じました。
打ち合わせはいかがでしたか?
とてもスムーズでした。朝日さんは、例えば「サッシのこの部分をこうしたい」と伝えた時にその感覚を理解してくれるんです。だからキッチンのシェルフも造作のドアも、1から10まで指定しなくても、きちんとイメージに沿ったものを作ってもらえた。
ただ建主の言う通りにするというのではなく、しっかりと意図を理解した上で家づくりをしてくれるので、安心感はすごく大きかったですね。
この家でお気に入りのポイントを教えてください。
そうですね、和室にリビング……家の中に好きだなと思うところがたくさんあります。
この家は、例えばポーチひとつとっても、「和風になりすぎないように」と朝日さん自ら業者さんの作業に立ち会うなど、「私ならどう感じるか」と細やかな配慮をして建ててもらえたんです。そういったひとつひとつの仕上がりが、家全体の満足度につながっているかなと思います。
写真 Commercial Photo / Movie SWITCH
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