Story 取材記事

パッシブ換気&高断熱高気密の良さを実感 小樽・N邸/江田建設

「パッシブ換気」に辿り着いたNさん夫妻

小樽の江田建設は、高断熱高気密の高性能住宅、そしてパッシブ換気システムが特長の工務店です。

パッシブ換気システムは「暖められた空気は上昇する」という性質を活かし、床下から、地熱と暖房で温めた空気を各部屋に供給し、家全体にフレッシュで暖かい空気を循環させてから、最終的に屋根にある排気筒から排出します。

機械を使わずに換気を行う、換気と暖房を同時に行うという北海道の産学官連携で開発されたシステムです。



パッシブ換気システムは、室内空気環境の改善や結露・カビの予防、家全体の穏やかで快適な温熱環境が最小限のメンテナンスで安定的に実現可能な仕組みとして高い評価を受けています。

しかしパッシブ換気システムの技術・経験を十分に兼ね備えた住宅会社は、札幌・後志エリアでは数社しかいません。

今回、取材にお邪魔した小樽市のNさんご夫妻は、家の寒さと結露に悩まされる中で住宅の断熱・気密、そしてパッシブ換気システムの家を建てたいと考え、住宅会社を探し、最後にパッシブシステム研究会の副理事長でもある江田建設にたどり着きました。Nさん夫妻が新居で2年間過ごした体験を伺いました。


目次



小樽市内の住宅街にあるN邸です。この外観写真で一番の注目は、屋根の一番高いところに設置されている排気筒です。

換気は冬でも止めちゃダメ!掃除も必要

室内の空気は、呼吸や家事などで少しずつ二酸化炭素や水蒸気が蓄積し、家具やカーペットなどからのVOC(揮発性有機化合物)や、ペットの臭いなども溜まっていきます。

換気をしなければ住人の健康や住み心地に悪影響が及びますし、水蒸気が増えすぎると結露やカビも招きます。

そこで建築基準法は、1時間あたり室内の空気が全体の半分、つまり0.5回/h以上換気される換気設備の設置を義務付けています。住宅の換気装置は、毎日、常時稼働していなければなりません。

しかし、そこで問題が一つあります。北海道では冬になると最低気温がマイナス10℃、地域によってはマイナス20℃以下になることもあります。また、日中は暖かくても夜間はぐっと冷え込みます。

そうなると冬には屋外の冷たい空気が、換気用の給気口から入ってくることになります。それがイヤで、機械換気を止めてしまうケースも実際には多々あります。また、給気口のフィルターが汚れやほこりで目詰まりして、知らないうちに換気風量が減っているケースもあります。

パッシブ換気システムの具体例

こうした課題を解決する方策の1つがパッシブ換気システムです。仕組みをN邸で見てみましょう。



パッシブ換気システムを採用した住宅は、換気のために、この地中埋設管(アースチューブ)を設置し、ここから空気を取り入れます。これは換気のための仕組みですが、同時に、暖房エネルギーの省エネや地球環境対策にも貢献します。

まず屋外の空気はアースチューブに入ります。アースチューブは住宅の下、つまり地下部分を通過します。通過している間、地熱で温度調整できるのです。

気温がマイナス10℃以下でも、プラス30℃程度でも、アースチューブが埋設されている地下1メートル程度の土中の温度はおよそ5℃~8℃の間です。気温に比べ、安定した温度をキープしているのです。(北総研の資料より)

つまり冬は、換気用の空気がアースチューブ内を通過する間に地熱で温めることができます。夏は地熱で冷やしてから床下に入れることで家を涼しくすることができます。これによって暖冷房に必要なエネルギーを、地熱という自然エネルギーによって削減できます。



床下に入った空気は、床下の暖房機で温めます。そして1階の床に設置してある換気用ガラリなどから暖かく新鮮な空気として室内に供給されます。

換気のために送り出される空気が既に適温に温められているので、室内に暖房機を設置する必要もありませんし、換気によって室内に冷気が入ってくる不快感も解消できます。

室内に暖房機設置が不要ということは、室内を広く使える、やけどや火災のリスクを減らせるなどメリットがたくさんあります。

床下から供給されるフレッシュな空気は、1階のリビングやダイニングに設置されたガラリや、間仕切り壁の中などを通過して2階の床ガラリなど、さまざまな場所から室内に入ります。そして家全体を自然対流でくまなく循環します。



この図の左側は、一般的な住宅の暖房と換気、右側はパッシブ換気システムの暖房と換気の仕組みです。

パッシブ換気システムは、家全体の空気がもれなく循環し、最終的に屋外に排出される仕組みなのです。



この写真は2階のフリースペースです。天井に設置された白い排気口に注目してください。床下から1階、2階へと上昇してきた空気が、最終的にこの家の一番高い部分にある排気口にたどりつきます。

例えばエアコンやファンヒーターなどを設置している家であれば、空気の対流を肌で感じると思います。直接エアコンの風に当たると肌の水分が蒸発し、肌が乾燥しやすくなります。

ところがこのパッシブ換気システムでは、家全体を空気が非常にゆるやかに、全体的にむらなく移動しているので、人の感覚としては空気が動いているということをほとんど実感できません。知らないうちに換気がされているのです。

本当に換気されているのか、ちょっと実験をしてみました。



天井にある排気口の近くに、棒の先端にティッシュを載せて当ててみたのです。室内の空気がここから屋外に出ているのなら・・・



棒を離してもティッシュは落ちてきません!この排気口から少しずつでも絶えず空気が排出されていることが確認できました。ここから汚れた空気や過剰な水蒸気が屋外に出ていっているのです。

なおこの家の断熱性能は、
壁が内側にロックウール105ミリ、
外側にウレタン80ミリの複合断熱。
窓はトリプルサッシを採用する高断熱仕様で、
気密性能も測定の結果、 C値(相当隙間面積)が0.2cm2/m2

Q値(熱損失係数)が1.0W/m2K
UA値(外皮平均熱貫流率)が0.25W/m2K
と高い水準を確保しています。

ではそろそろN夫妻の家づくりを伺っていきます。

Nさんの家づくり



家づくりのきっかけは?

Nさん 以前住んでいた家は築30年位の家で、断熱性能が悪いのかとても寒く、結露にも悩まされていました。暖かく省エネで、室内の空気も綺麗な家に住みたいと思っていました。

また親の介護、そして子どもたちとの同居もしたい事情があったので思い切って2世帯住宅の新居を建てることに決めました。

住宅会社探しはどのように?

Nさん 最初はハウスメーカーのモデルハウスが建ち並ぶ総合住宅展示場なども見に行きました。そこで数社に、断熱や換気、結露のことなど疑問をいろいろ質問しました。特に換気に関しては機械換気である第一種換気と第三種換気の違いやメリット・デメリット、その住宅会社の換気に対する考えなどを聞きました。


建物の形状はコスト面でも合理的な総2階をベースにしたものの、エントランス廻りはタイルや石、木の質感のある建材で高級感を演出している


いろいろ説明を受け、同時に自分でも住宅の断熱・気密・暖房・換気などの選択肢で何が最善なのか、自分なりにいろいろ調べたのです。機械換気は掃除などのメンテナンスが必要で、十分な換気量維持に難点があるとか、古くなると騒音も発生しやすいといった課題にも気付きました。

そんな中で、インターネットを見て辿り着いたのがパッシブ換気で、パッシブシステム研究会の副理事長をしている住宅会社が小樽にあるということで、江田建設に興味を持ちました。江田建設を知ったのはパッシブ換気ができる会社だったからです。

ただし、他のハウスメーカーにも相談はしました。ある大手ハウスメーカーはこちらの要望を伝えても思い通りにプラン提案してはくれませんでした。もう一社の大手ハウスメーカーも同様に、間取りの変更などこちらの要望がなかなか通らない会社だと感じて回避しました。


郵便受けも断熱・気密性能が高い仕様になっています


江田建設を選んだ理由は?

Nさん 最終的に江田建設を選んだのは、江田建設の江田清三社長が断熱や気密・換気のことで私の質問にしっかり答えてくれたり、パッシブ換気を導入された住宅を実際に見学させていただけた点が大きかったと思います。住宅の基本性能に関わる部分で江田建設はしっかりしていると確信できました。

ですが、住宅の基本性能だけでなく、間取りやデザイン、無垢の床材など自然素材の活用、価格面などいろいろな部分で打合せをさせてもらい、その対応に納得できたのも大きかったと思います。

プランニングへの要望は?

Nさん キッチンや玄関などを一緒に使う完全同居型の2世帯住宅だったので、江田建設さんとの打合せも私だけでなく妻や娘も参加して週1ペースくらいで行いました。

要望は例えば・・・



リビング併設の和室を設け、座りやすいように掘りごたつも設置する



収納を適材適所で多めに確保したり、壁の一部をR形状にしてやわらかい雰囲気にする



玄関ホールからリビングにつながるドアも天井までのハイドアにすることで開放感を高める



2階にミニキッチンや造作の神棚を設置



リビングの床は無垢の床材を採用



ログハウスっぽい雰囲気が好きなので2階の天井は梁や木材を現しにして木の質感を高める



食品庫を設置するなどキッチン廻りの収納力を高める



外壁は年数が経過しても汚れが目立たない色で、質感が気に入った塗り壁を採用する

断熱性能を高めるためにトリプルサッシを選択
傾斜地でも土地を効率良く活用できる基礎工事

など住み心地などを踏まえて要望はたくさん伝えました。

2年暮らしての住み心地は?

Nさん 脱衣所や玄関、2階など家のどこに居ても寒い空間がないし、結露などの悩みも全くありません。トリプルサッシを採用したので窓廻りも冷気を感じません。



住み始め当初は、家の中に暖房機の炎が見えないので、暖かいのにダイレクトな暖かさを実感しにくいような感覚がありましたが、それはしばらくすると慣れで解消しました。逆に室内に暖房機がないので、暖房機の掃除が必要ないし、壁際に設置物がなく、室内がすっきりするし、家具などを置きやすいのも良かったですね。

パッシブ換気に加え、水回りは別途第三種換気も導入しているので、愛犬がいるのに臭いなどの悩みもありませんし住み心地は快適です。

この家は2世帯住宅ですし、小さな子どももいるので光熱費は、普通の家の倍近く掛かるのでは無いかと心配していましたが、一年間でトータル約25万円位でした。



2世帯住宅とは思えない光熱費で喜んでいます。

最後に一言

Nさん 2018年9月6日に北海道を襲った大停電では、我が家も停電になりましたが、自然エネルギーで換気するパッシブ換気なので、換気は停電でも稼働しました。食品庫などキッチン廻りに豊富な収納スペースがあるため、停電時に、慌てて食品の買い出しに行く必要もありませんでした。

パッシブ換気システムはその前提として高断熱高気密住宅でなければダメな仕組みだと聞いていますし、江田社長の住宅性能へのこだわりやこれまでの取組を知れば知るほど江田建設に家づくりを頼みたいと思いました。

新築直後はどの家でもクロスのしわや建具の建て付け、無垢床の乾燥収縮にともなう調整などがありますが、そういうときも、江田建設さんとの信頼関係があるので相談の電話もしやすいですし、逆に私も光熱費のデータなどを提供し、江田建設の家づくりの検証などに活かしてもらったりと、良い関係でいられるのが安心です。



写真:コトハ写

江田建設の公式サイトはこちら
札幌・小樽の注文住宅 株式会社江田建設



2020年06月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。

株式会社江田建設の取材記事