高断熱高気密の性能を生かした、パッシブ換気の家づくりに定評がある小樽の江田建設。1965年に創業して以来積み重ねてきた技術と、江田清三会長の人柄を信頼して設計・施工を任せたのは、ご主人がエンジニア、奥さまがデザイナーのMさんご夫妻。夫婦共に在宅で仕事をしながら、3歳半の娘さんと暮らす新居を訪ねました。
ワークスペースのある1階は、仕事も家事もはかどる回遊式
M邸の大きな特徴は、仕事や家事にまつわるワークスペースをまとめた1階と、和室、寝室などのリラックススペースをまとめた2階でゾーニングしている点です。寝室以外は個室を作らず、部屋の用途を限定しない可変性の高い設計です。
板張りの玄関ポーチ。ドアを開けると、土間とホールの両方に石目調タイルを施したシンプルな玄関が現れます。ウーテンシロの隠さず見せる収納は、使い勝手も良いそう。
LDKの中心に仕事場があります。
奥さま 仕事場でもあるリビングの仕切り壁の裏には、洗面所とトイレ、洗濯機や物干しができるユーティリティーとクローゼット、浴室を、一直線に配しました。洗濯が済んだら天井から吊り下げた物干しで乾かし、ハンガーにかけたままクローゼットへ収納できる便利な動線です。
物干しにはホームセンターで見つけた竹を使用。片側の壁に取り付けた有孔ボードは、フックの位置が変えられ、子どもの背丈に合わせて使うことができます。
洗面台とミラーボックスはサンワカンパニー製を採用。シンプルなデザインで、掃除のしやすさを実感したそうです。
ご主人 仕事中でもすぐに洗濯物を干しにいけるなど、フロアを移動せずに仕事と家事が進められる点が便利ですね。在宅ワークなので、1・2階でオンとオフを切り替えられる造りにしました。
2階は和室、フリースペース、寝室を備えたくつろぎの場です。
色数を抑えたシンプルな空間に雑貨や家具で遊び心をプラス
キッチンの冷蔵庫や収納ラックは無印良品、ステンレスのシステムキッチンはサンワカンパニー製です。
壁のホワイトや床のグレーをベースに、外壁などに部分的に使った木材、キッチン回りはステンレスと、使う色数を抑えました。その分、カラフルな雑貨や家具などのポイントづかいが効いています。
左/リビングの天井で揺れる、イッタラの「アテネの朝」。中古店で見つけた掘り出し物です。右/階段上のコーナーに置かれたピエール・ポーリンデザインのオレンジスライスチェア。
寝室には、竹素材で温もりのあるイケアの照明を選びました。
小上がり風の和室。足元にはA4サイズのボックスが収まる奥行きを作りました。地窓やアオヤの手すき和紙ランプが良い雰囲気。
「長期優良住宅」申請のために寝室近くに設置したトイレは、色づかいで遊びました。古道具屋で買ったものの使い道がなかったクネットを手すりにしようと思いつき、床には黄色に合うオレンジ色のカラー目地をチョイス。海外のインテリアを思わせる楽しい配色です。
ライフスタイルの変化に対応し、自然の力を取り入れる暮らし
そもそも家づくりの気持ちがふくらんだのは、以前住んでいた福岡で、無印良品の「陽の家」を見学したことがきっかけだったそうです。
奥さま 無印良品のモノづくりの思想が好きなんです。サイズを吟味して作り込んだ商品を長い間売り続け、モジュールのように組み合わせながら使い続けられる考え方が素敵だなと思っていて。
ご主人 無印良品の家を見て、家の断熱によって自然のエネルギーを活用する仕組みに惹かれました。妻の出身地である北海道で家を建てると決めてから、北国の住居について調べる中で見つけたのが、寒冷地の自然エネルギーを活用する「パッシブ換気システム」でした。
高断熱・高気密の家だからこそ採用できる仕組みを取り入れている会社は、性能のよい家が造れる会社です。江田建設のホームページを見て、よい意味での“オタクっぽさ”を感じて、直接話を聞きに行ったことがご縁になりました。
家の構造や通風、窓の位置、景観を生かす設計などは、江田建設の技術を信頼して全て任せました。設計のベースとなる間取りのイメージは、デザイナーである奥さまが作成。意見を交わしながら、家づくりを進めたそうです。
江田さんは「できる」「できない」が明確。家づくりで大切なのは信頼できること
江田さんからの提案で付けたフリースペースから出入りができる2階のベランダは、公園の緑を借景にしたプライベートゾーン。ここでお昼ごはんを食べることもあるそうです。
江田建設で家づくりを行う際は、最初にヒアリングシートの記入から始まります。
奥さま 新居に置くモノを書き出す項目には驚きました。家具をすべて書き出して、サイズもすべて測って。
ご主人 衣類の量も書きましたね。
江田会長 昔は2枚でしたが、今では10枚にもなってしまいました。これは、施工を進める中で本当にオーナーさまのご希望に添えているかどうかふり返るための資料です。オーナーさまとの関係がよい時ほど、作り手の僕らはうまくいっていると錯覚しがち。だからこそ、シートを見返しながら原点に立ち返る作業が必要だと思っています。
見晴らしの良い2階フリースペース。眺望の良さを確保するため、階段の仕切り壁を窓台の高さに揃えています。
ご主人 建築途中で構造の枠組みが出来ている状態で現場を見せてもらい、そこで出した要望でしたが、江田会長は柔軟に採り入れてくれました。
また、我が家の屋根には太陽光発電のパネルが載っています。江田会長に相談した時は、「金銭的なメリットを求めて付けたいなら小樽は日照時間が少ないから反対する。元が取れなくても、自給自足の暮らしをしたい思いがあるならいいと思う」と、ごまかさずに意見してくださいました。
「ハッキリと意見してくれるからこそ、江田さんを信頼できました」とふたりは口を揃えます。
【記者の目】
「自然が身近にあり、散歩が楽しい場所で暮らしたかった」という理想の生活を、小樽の海遊びで小麦色に日焼けした娘さんが体現しているように感じました。
カメラ:スタジオスーパーフライ 大道貴司
ライター:布施さおり
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