Story 取材記事

家の中にこだわり、質の高い暮らしを 札幌市・Tさん

心地よい空間を手に入れるためには、一切妥協をしない。これが札幌市東区のTさん夫妻のいちばん大切にしたことです。天井、壁、床から収納にいたるまで高いクオリティを求め、気に入ったものだけをそろえることに徹底してこだわったことで、納得のいく住まいが実現しました。

まわりを住宅に囲まれているため、窓を多めにして採光を十分にとっている
まわりを住宅に囲まれているため、窓を多めにして採光を十分にとっている
入り口を入ってすぐ吹き抜けと階段があり開放的。2階には高校生の長男の部屋と、寝室がある
入り口を入ってすぐ吹き抜けと階段があり開放的。2階には高校生の長男の部屋と、寝室がある
「澪工房」の一枚板のダイニングテーブルは、奥様の夢だった。澪工房は、その家具を「北海道モダン」と呼び、開拓に欠かせなかった「木・馬・斧」の象徴として「木・革・鉄」を組み合わせたデザインが持ち味
「澪工房」の一枚板のダイニングテーブルは、奥様の夢だった。澪工房は、その家具を「北海道モダン」と呼び、開拓に欠かせなかった「木・馬・斧」の象徴として「木・革・鉄」を組み合わせたデザインが持ち味
玄関ドアには、北欧から輸入した木目に特徴のある一枚板を使用
玄関ドアには、北欧から輸入した木目に特徴のある一枚板を使用
フラットなシンクの洗面台は、一見浅すぎるように見えて使いやすく、掃除もしやすいのだそう。塚本氏のオリジナルデザイン
フラットなシンクの洗面台は、一見浅すぎるように見えて使いやすく、掃除もしやすいのだそう。塚本氏のオリジナルデザイン
現代的な雰囲気の和室は、余計な飾りがないミニマムな作りがおしゃれ
現代的な雰囲気の和室は、余計な飾りがないミニマムな作りがおしゃれ
押入れの引き手の部分。目立たないように手をかけるくぼみがある
押入れの引き手の部分。目立たないように手をかけるくぼみがある
奥様の趣味の古伊万里が、アンティークのキャビネットに並ぶ
奥様の趣味の古伊万里が、アンティークのキャビネットに並ぶ
リビングには、さりげなくアールヌーヴォーを代表するガレのランプと、ビアズリーの絵画が飾られている
リビングには、さりげなくアールヌーヴォーを代表するガレのランプと、ビアズリーの絵画が飾られている

外見より、中身が大事!

家づくりの基準は人によってさまざまですが、昨年10月に施工したTさん宅は、とにかく室内に重点が置かれています。奥様が大好きだという札幌市内の注文家具メーカー「澪(みお)工房」に木製のドアやダイニングテーブル、収納家具を特注し、理想どおりの空間を作り上げました。澪工房の家具とは、奥様がモデルハウスめぐりをしている中で出会ったとのこと。木を活かしたシンプルでモダンな雰囲気が好みにぴったりだったと言います。実は建築士も、澪工房から紹介された「ティーサイズ」塚本高正さんに依頼しました。

ご主人は、インテリアより機能性を重視し「暖かい家」が必須条件でしたが、塚本さんが提案した床下蓄熱暖房を気に入りました。「モデルハウスを見て、パネルだとジャマだし掃除も大変そうだなと思っていました。床下のコンクリートの基礎に熱線を入れる蓄熱暖房なら、壁伝いに暖気がまわるので基本的にストーブがいらず、パネルも必要ないのでシンプルなのがいい」。

お二人の視点はまったく違うところにありましたが、共通していたのは"どう心地のよい中身の家にするか"ということです。「二人とも、外観にはこだわらなかったんですよね。どうせ家の中にいたら見えないし」と奥様は笑います。何をいちばん大切に考えるかで、家づくりは大きく変わるようです。

人の良さで決めた!

サンケイ建匠がT邸の施工を担当することになったのは、湯浅岳雄代表取締役と、設計を依頼した塚本さんが知り合いだったことがきっかけです。以前一緒にカフェを作ったこともあり、お互いの仕事をよく知っている同士です。実は、Tさん夫妻は他の建築士と施工業者も検討していました。

デザイン自体は他の建築士の作品も気に入っていたのですが、最終的には「人柄が決め手だった」と口をそろえます。「私にまかせていただければ必ず良い家にします、と自信たっぷりに言われた建築士さんもいましたが、塚本さんは、夢をかなえるお手伝いをさせてください、という姿勢だったので好感を持ちました。

サンケイ建匠は、やってほしいということにすぐ対応してくれる点がよかった。一般的なハウスメーカーでは『できない』と言うことを、建築士と工務店の場合はどうすればできるか、代案も含めて考えてくれます。さらに言えば、作るものより、作る人が重要だと感じたのです」。

たとえば和室は、建築士の工夫が存分に発揮されている場所のひとつです。ふすまに通常あるような引き手を付けたくない、という奥様の希望を汲み、くぼみをつけて引き手としました。またリビングとの境目には、和紙を貼ったパーテーションのようなふすまを取りつけ、シンプルでモダンな雰囲気を好むTさん夫妻の希望に沿ったデザインとしています。

時間をかけて作りだされる上質

内装に関しては、特に奥様が細かい希望を持っていて「リビングは、白木のフローリングに赤茶の木材の作り付け収納、トイレはこげ茶の木材の収納」とオーダー。何年もかけ雑誌やモデルルームなどを見てイメージを固めたそうで、簡単には妥協できません。

そうして実現したのは、床はカバザクラ、収納はヤマザクラという組み合わせです。まったくの白木よりカバザクラのほんのりピンクがかった色で、やわらかな印象になりました。ヤマザクラは、リビングは無塗装なので今は明るい色をしていますが、暮らすうちに赤茶色へ変化します。時間をかけて塗装の色には出せない深みを生み出すことで、ワンランク上の上質な空間が作られていきます。

「自分たちが気付かないところまで考えてデザインされていることに満足しています」とTさん。さらに時が経ったとき、本当の魅力ある家になっているに違いありません。

記者の目

Tさん夫妻はそれまでの社宅住まいから、50代で一戸建てを新築しました。社宅が寒かったことから、冬の暖かさを重視したと言いますが、大きく開け放てるベランダなど夏の涼しさも考えて作られています。伺った日は雪もよいでしたが、中はほかほかとした温もりに満ちていました。 また、お二人ともかなりの趣味人で、ご主人はビンテージの腕時計、奥様は古伊万里やウェッジウッドの食器を集めていらっしゃいます。その貴重なコレクションに見られるように「本物」にこだわり、質の高い暮らしを実現されていると感じました。

2011年03月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。

株式会社SANKEI(サンケイ建匠)の取材記事