今や家づくりのスタイルとしてすっかり定着した「リノベーション」。新築住宅で培った施工技術と提案力をベースに、暮らしにマッチした美しく機能的なリノベーションを提案するサンケイ建匠(株)リノベーション室長の入山俊文さんにお話を伺いました。
新築主体の会社がなぜリノベーション?
入山 10年ほど前から新築の経験とノウハウを生かしてリフォームに取り組んでいます。はじめは設備の交換など小さな工事から。実績を積むに従って徐々に増築を伴う大がかりな改修を手がけるようになりました。PR活動は特にしていません。既存のお客様のアフターサービスを通して紹介をいただくケースがほとんど。 最近はリノベーションの浸透によって「中古住宅を全面改修したい」などの相談が増えています。私達ビルダー側の意識も変わってきました。 以前は「築30年以上の家なら建て替えた方が早い」で済みましたが、今は慣れ親しんだ住まいをリノベーションするという選択肢を視野に入れなくてはなりません。造っては壊す時代ではなくなったのですね。新築よりコストがかからないのがリノベーションの魅力。実際の費用は?
入山 30坪程度の住宅で新築の7割程度が目安です。もっとも、リノベーションを選択する理由はコストだけではないと思います。住まいへの愛着から建物に手を入れて住み続ける道を選ぶ人も多いのではないでしょうか。 これまで担当したお客様の中にも「柱でも基礎でも使えるところは残して欲しい」という方がいました。きっと家族との思い出をどこかに留めておきたかったのでしょう。そうした気持ちをいかに汲み取り、形にしていくかがリノベーションの最も難しい部分と言えます。プランニングで心がけていることは?
入山 お客様とのやり取りの中から「その人が何を1番望んでいるか」を見きわめて優先順位を決めること。その上で「予算の範囲内でどういうプランが可能なのか」を3Dパースなどを使い、わかりやすくプレゼンします。 またリノベーションでは、想定外の問題が発生することがあります。築20~30年の住宅の場合「水廻りの腐食が相当進んでいる」と見越した上で見積もりをしますが、建物が想像以上に傷んでいたり、お客様とのやり取りの中で予算が増減したりすることも。説明不足から誤解が生じるのを未然に防ぐため、新築以上に打ち合わせを密にする必要があります。リノベーションを考えている方にアドバイスを
入山 ご要望があれば遠慮せず担当者にどんどん伝えるべき。提案する側としては「お任せします」と言われるよりプランニングを進めやすいのです。住まい手と造り手の情報の共有が大事なのは新築と同じ。「お客様と一緒に1つの家を造る」というスタンスを忘れずにいたいですね。■施工例(1)お母さんのために住み慣れた家をバリアフリー化
写真左:ガルバリウム鋼板など現代風に生まれ変わった外観 写真右:モルタル外壁の痛みなどが目立つ改修前の外観 車椅子が必要になったお母さんが自立した生活を送れるよう築30年以上、約26坪の住宅を増築して2世帯同居のリノベーション。お母さんの希望で主要な柱と基礎は可能な限り再利用しました。 <工事内容> 1.断熱改修 2.各階の間取り変更(約14坪の増築を含む) 3.居住空間と水廻りのバリアフリー改修―など。 <工事費> 約1600万円 <工 期>1ヵ月半程度。写真左:改修後のリビングは明るく広々している 写真右:改修前のリビングは和室がじゅうたん敷きで間取りがニーズに合ってないことがわかる
1階は引き戸を開け放せば玄関ホール、リビング、キッチン、ユーティリティ、個室が一体化したオープンスペースに。車椅子で楽に移動可能です。
■施工例(2)築27年の住宅がシンプルモダンな住まいに
写真左:リノベ後のシンプルモダンな外観。写真右:リノベ前の外観、小さな出窓があるなど、複雑な形だった
27年前に建てられた中古住宅を現代の生活に合わせてフル改修。工事面積37.3坪。
<工事内容> 1.耐力壁をバランス良く配置し直す等の耐震改修 2.屋根の形状を寄せ棟からスノーダクトに 3.断熱改修 4.間取りを3LDKから4LDKに(4.75坪の増築) 5.暖房を電気に変更―など。
<工事費>1400万円。<工 期>真冬の工事のため80日。
家族が集まる1階・リビング・ダイニング。造作家具も配置するなど、デザイン良く使い勝手の良い現代的な空間に生まれ変わりました。
記者の目
住みながらのリフォームを希望する方がいますが、「埃が舞う中での不自由な暮らしは想像以上に過酷」と入山さん。
特に冬場はポータブルストーブ1台で寒さに耐えなくてはならないので相当な覚悟が必要とか...。新築同様、リノベーションも経験してみないとわからないことがたくさんありそう。
2014年08月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。