プロローグ
断熱リフォームに特化してリフォーム提案を行っている河合建築事務所・河合さんから2015年の年末、編集部あてに電話をもらった。聞けば四半世紀前の建売住宅を断熱リフォームしたという。いまとは違い、建売のクオリティにはかなりの疑問符がつく時代の建物。しかも過去に断熱リフォームを失敗例しており、オーナーが調べに調べた結果、問い合わせをもらったのだという。 『これはおもしろい。厳寒期を過ぎてから取材しよう』と決めた。河合さんからのレポートを交えながら、建売住宅を暖かくするプロジェクトを紹介しよう。
25年間で2度目の外壁全面貼り替え
河合さんが問い合わせを受けたのが2015年の6月。希望は2階の一部増築と、外壁交換、そして断熱・耐震リフォームが主だった。 建物は1990年に完成した木造の2階建て。建てて13年後の2003年に外壁を全て貼り替え、その際に壁の中のグラスウール断熱材を交換したうえで、追加でボード状の断熱材を全面貼りしたそう(付加断熱)。しかし、凍害により7年後の2010年に外壁サイディングを再び一部貼り替えた。 そのサイディングが再び凍害を起こしていた。 この家は25年間で2度目の外壁全面貼り替えをしなければならないほど、傷みがひどいのだ。 ※凍害とは、壁の中からの湿気や漏水などが外壁に染み込み、その水分が冬季に凍ったり融けたりを繰り返して、サイディングが徐々にボロボロになっていくこと。水が凍ると体積が膨張する。そのときに外壁材を傷めるのだ。断熱材を足してもまったく効果がなかった
寒さと結露もひどかった。 冬の結露は、窓際を中心に一部の壁はぬれた状態となり、床近くコーナー付近には黒カビ発生しているという。それが新築2年後くらいから徐々に拡大。窓面は、引き違い窓のレールが結露水で凍りつき、開閉出来なくなる。アルミの窓ではなく樹脂窓なのに!
窓面の結露がいかにひどかったかを物語る動画を偶然撮影することができた。
ハンドルの具合がどうもおかしいので、窓(障子)の部品を外してみたら、突然、水が流¬れ出したのだ。障子の中に長年たまった結露水らしい。
これだけひどい結露があるのだから、室内の寒さは推して知るべしだ。
居間にいると床面と巾木の隙間から冷たい風が室内に入るのを感じる。脱衣室も寒く、風呂場の床が冷たい。
全ての樹脂サッシ窓の内側ゴムパッキンを3年前に交換したが、それでもどこからか冷風が入る。
2003年に行った断熱材の強化は、まったく効果がなかったどころか、カビと結露がひどくなったという。
〈ユニットバスの床を床下から見上げると、断熱材のグラスウールがなぜか排水まわりだけはがされていた〉
室内に入らず屋外側から気密工事
現地調査を行った上で「暖かく直すことができる」と確信した河合さんだったが、工事する上での課題は多かった。 第1に床下の状態が良くない。基礎工事をする際に本来は運び出していなければならない土が残っているため、床下で身動きがとれないのだ。 その上現地は泥炭地域のため地盤が湿っており、地盤面の湿気防止措置も不十分だった。 第2に、増築部分以外の工事はすべて屋外側から行わなければならない。オーナーが忙しく、ルス中の工事が多いことに加え、荷物の移動を伴う室内側の工事が不可能だったからだ。 これらのことを考え合わせ、河合さんは外壁交換と同時に行う断熱・耐震改修を採用することに決めた。室内側の気密性が高くなれば、外壁材の凍害の心配はなくなる。また、気密性能が上がることで断熱材が断熱性能を発揮できるようになるため、壁の隅にできていた結露や黒カビはなくなる。また、窓まわりの結露も止まるはずだ。 ただ、本来は室内から行う必要がある1階床の気密工事ができないため、気密性能(冷気止めの効果)がどうしても不完全になることが不安だったという。

体感できるほど暖かく!


なお暖房灯油は、前のシーズンの10月から3月までで8万円、920リットル使ったが、このシーズンは10月から1月までで4万円で収まっているという。金額もさることながら、暖房がよく利くようになったおかげで結露がなくなり、室温も下がりにくくなっている。
オーナーが事前に調べた中に、札幌良い住宅の記事「札幌リフォーム座談会」があった。この記事が決め手になったという。記事はこちら。
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