建てた時にはピカピカの新築でも、住み続けていくうちに避けて通れないのが経年劣化です。マイホームを持っている人であれば誰もが遭遇するこの問題。お気に入りのマイホームで長く快適に暮らしていくには、どのような点に気を付けていけばよいのでしょう?また、具体的にどのような工事が行われるのでしょう?
その答えを探るべく、iezoom編集部は、札幌市内やその近郊を中心に、住宅の補修やリフォームで豊富な実績のある工務店・建匠(札幌市)の山口征貴部長を直撃!山口部長が実際に対処してきたさまざまなトラブルの中からよくあるトラブル事例を選んでいただき、その対処策や予防策をお聞きしました。
トラブルその1.すが漏り
「住宅被害の中でも施主さまの驚きが比較的大きいのでは?」と山口部長が話すのが、住宅への浸水被害です。
中でも「すが漏り」は、積雪地域ならではの現象。冬の間、屋根に積もった雪や氷の塊に妨げられて排水ができなくなることで、たまった水が行き場をなくし、屋根材のわずかな隙間(つなぎ目など)から屋根内部や室内へと侵入してしまいます。
こちらのすが漏りが発生したお客さま宅では、屋根の排水口が雪氷で覆われ、排水口が凍っていました。雪氷の溶けた水がたまり、ダクト内はまるでプールのよう。
まずは除雪して解氷し、水が流れる経路を確保。さらに今後のすが漏り対策として、屋根に融雪用のヒーターを新設しました。
【対処法】
すが漏りの予防策は2点あります。
一つ目が、雪が降る前、秋頃になったら屋根に上がり、ゴミや落ち葉などでダクトが詰まっていないかを点検しておくこと。
二つ目が、屋根にヒーターがある家では、雪が降ったらすぐにスイッチを入れること。「積雪がある冬の間は24時間スイッチを入れたままにしておくのが望ましい」と山口部長は言います。
実際、山口部長の家では24時間電源を入れっぱなしだそうです。すが漏りの補修には、場合によっては数十万円程度かかってしまうので、月に数千円の電気代をかけて予防したほうが負担は少なくなります。ちなみに、ヒーターがないお宅では、後付け工事も可能です。
一方、全国的に発生する雨漏りは、北海道でも年間を通して発生します。また、すが漏りの原因にもつながるので注意が必要です。
トラブルその2.雨漏り
原因箇所として最も多いのが屋根の上。こちらの写真は無落雪屋根にある排水口で、周りのコーキングが劣化しています。コーキングの切れ目から水が入ると、室内に雨漏れが発生してしまいます。
こちらは窓から雨漏りしたケース。こちらもコーキングの劣化が原因でした。
山口部長によると、「コーキングはあくまで一次防水。住宅には基本的に、屋根や外壁に二次防水として防水シートなどが施工されダブルの防水対策がとられています」とのこと。
こちらは、大雨の翌日、「雨漏りしている」と連絡を受けて急行したお客さま宅の屋根です。ダクトの排水口に詰まっているのは強風で飛んできたと思われるビニール袋。排水口の中に30㎝ほど入り込み、完全にふさがれた状態でした。そのため、排水口に流れなくなった水がダクトからあふれ、屋根材のつなぎ目の劣化部分などから雨漏りしたとみられます。
【対処法】
コーキングの耐久性は、長くても10年程度。劣化したコーキングは打ち替える必要があります。一方で、新築してから10年くらいが経過すると、ちょうど屋根や外壁のメンテナンス時期に当たります。そこでおススメなのが、コーキングの打ち替えに併せて外壁や屋根の塗装などをまとめてやってしまうこと。
工事には足場が必要になるので、足場を組んだタイミングでまとめて工事をやってしまえば、足場をかける回数が減り、その分費用を減らせます。また、一通りの工事を同じ時にやっておけば、次の補修時期を把握しやすく、家を管理する計画がたてやすくなります。
トラブルその3.軒天井の傷み
次は勾配屋根の軒天井が傷んでしまった事例。雨水が染み込んで変色した部分があるのが分かります。築20数年のこちらのお宅の屋根は、屋根の形状上、長年にわたって雪解け水が流れるうちに、少しずつ軒先から水が入り込んでしまったことが原因とみられます。
新築で建てた当初、軒天井に使われていた素材は一般的に使用されるスレート板でした。そこで水分により傷みづらいアルミ素材を使った建材への貼り替えを行いました。
写真の手前部分が貼り換え後の軒天井。意匠的には変わってしまいますが、これにより雪解け水などによる影響を受けにくくできました。
【対処法】
屋根の形状によっては年月を経て、どうしても水が浸水してしまうケースが見られます。補修工事では、防水性の高い素材を上貼りするなどして対処します。
トラブルその4.サイディングの傷み
築年数が経った家でよく見かけるのが、外壁の傷みです。こちらは窯業系サイディングに発生したケース。劣化したつなぎ目などから水が入り込んだことが原因です。
山口部長「冬季はその水により凍害が起き、さらに傷みが進んでしまいます」。
一方、排気口から出た蒸気による傷みが発生する場合もあります。
傷んだ箇所を補修するとともに、外壁全体の塗装工事に併せて塗装を行いました。
こちらは金属系サイディングが傷んだ事例です。
近づいてみると、へこんでいるのが分かります。こちらは、冬に雪や氷が落ちてきて当たったことが原因です。
金属系サイディングは、表面が薄い鉄板になっています。割れや凍害も起きにくく、素材自体の耐久性や防水性の高さも期待できます。「へこみだけなら性能自体に問題はありません」と山口部長は言います。ただ穴が開いたり、傷が深くなり錆びてしまうと、どんどん劣化が進んでしまうので注意が必要とのこと。傷の部分だけの補修は難しく、サイディングの貼り替え工事が必要になります。
【対処法】
外壁のメンテナンスのタイミング(間隔)は、コーキングの耐久期間なども考えて10年以内を目安に考えると良いです。
定期的に目視により点検し、故障があれば窯業系、金属系それぞれに応じた補修をすることが必要です。
一方、窯業系サイディングの上に金属系を重ね貼りすることも可能です。実際、先ほどの黄色い外壁の家では、窯業系サイディングに金属系サイディングを家全体に上張りして、複数の損傷個所を補いました。
トラブルその5.タイルの割れ
こちらは玄関ポーチのタイル割れ。経年劣化や凍害によって割れてしまったことが原因です。
【対処法】
補修方法の一つとして、これまでの10㎝角の細かいタイルから30㎝角のような大き目のタイルに交換します。これは、弱点となり得るタイル同士のつなぎ目(目地)を減らすことで、耐久性の向上を期待するためです。
また、タイル仕上げに限定せず、モルタル仕上げやその上にゴムマットを施工する(部材同士のつなぎ目がない)方法もあります。
トラブルその6:給水管
こちらは水道管が凍結して破裂してしまったケース。近年の家は高断熱化が進んで水道管の凍結事例はほとんど聞かなくなりましたが、長い間不在にする時には水落とし(水抜き)の処理が必要です。
一方、こちらは水抜き栓からの漏水です。部品が錆びついて古くなっていました。
こちらのケースは地中に埋まった見えない箇所なので、なかなか気付けません。水道の検針員さんが検診する時、「前月より水の使用量が多すぎる…」と気付いて発覚することが多いそうです。
ここ数年、新築戸建ての価格高騰が続く中、中古住宅を購入してリフォーム、リノベーションするニーズが高まっています。リフォーム・リノベーションによって外壁や床、クロスの張り替えで新築同様の家になりますが、こうした配管類などの目に見えない部分の確認も大切と山口部長は指摘します。
山口部長「例えば、水道管は古くからの鉄管のままなのか、銅管や架橋ポリエチレン管に交換されているのかなどをチェックしておくと安心です」。
新築や通常のリフォーム工事をはじめ、外壁・屋根などの大がかりな補修工事から、雨漏り・すが漏りといった突発的なトラブルへの対処まで、数多くの施工実績を踏まえて適切かつ迅速に対応できるのが建匠の最大の強みです。山口部長は「お客さまは住宅トラブルによる不安の中、ご連絡をくださいます。ご相談を受けた際にはまずは話を丁寧に聞き、住宅の専門知識がなくても分かりやすいよう対応を心掛けています」と言います。
ここ最近は、以前からのOB施主からの依頼に加えて、iezoomやホームページを見た新規のお客さまからの相談も増えているそう。家の維持・管理に気を付けつつ、それでも何か困ったことや聞きたいことがあれば、まずは“住宅のプロ”に相談してみるのもおすすめです。
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