住み慣れた我が家でも、実は
キッチンが使いにくい
窓回りが寒い
雨漏り、すが漏れしている
水道の蛇口から水がポタポタする
外壁や屋根のサビや塗装の剥がれが気になる
床や壁紙が傷や汚れで汚い
お風呂が寒いしカビ掃除が大変
屋根の雪がお隣の敷地に入ってしまう
手すりを付けたい
ボイラーや暖房が故障してしまった
傾いた床、耐震性能などが心配
庭や塀などを手入れしたい
など、いろいろ気になる直したい箇所、ありませんか?
中古住宅を購入した人の場合は、壁紙や床材などは不動産会社が張り替えていて綺麗だとしても、キッチンやトイレの不満、すが漏れなど、気になる箇所が残っているかもしれません。
とはいえ、一般の方にとって、住宅リフォームはわからないことだらけだと思います。
実は、木造住宅の新築工事ができる大工さんだって、住宅のリフォームは、問題個所の原因分析、建て主の要望や予算の範囲での最善策の検討、家具や内装を傷つけないように行う工事など、さまざまな難題があって「新築よりもリフォームは難しい」と言います。
我が家の気になる箇所を
どの程度、どのように直す?
費用は?
リフォーム会社選びは?
直す箇所の優先順位は?
中古住宅選びのコツは?
そこでIEZOOM(いえズーム)編集部は、
創業1957(昭和32)年から60年以上、地域の評判、口コミに支えられて住まいの営繕、リフォーム、新築を行ってきた実績のある札幌市豊平区の工務店・リフォーム会社の株式会社建匠、山口征貴部長にお話を伺いました。
実は山口部長。ご自身も10年前に、札幌市内で築33年、950万円の中古住宅と土地を購入。家族が住みやすいように、予算の都合も踏まえながら優先順位をしっかり考えた約700万円のリフォームを行いました。つまり戸建て住宅の取得コストは総額1650万円です。札幌の市街地で木造の新築一戸建て住宅を持つ場合は3000万円以上の費用が必要ですから、持ち家の取得コストを抑える合理的な選択肢です。
今回はその体験談をベースに、予算・要望に沿った住宅リフォームのノウハウを探っていきます。
外壁改修はしなくて済んだ!
この家が、札幌市豊平区で10年前に950万円で購入した土地建物です。土地は78坪、住宅が49坪という比較的大きな家ですが築30年経過ということで1000万円を切る価格帯になっていました。
実はこの建物、1977年に建匠が、創業社長の時代に建てており、新築時の図面、そして1999年に、オーナーの要望で、モルタル壁に金属サイディングを上貼りする外壁リフォーム、そしてキッチンのリフォームも行った記録が残されていました。
金属サイディングは耐久性も高く、今回は改修せずに済まそうと決めました。
外壁塗装や張り替えは足場設置も必要なので意外と費用がかかります。窓、屋根の改修、さらには断熱改修なども組み合わせて、外回りの改修を同時に行うと合理的ですが、今回は、外壁の劣化はまだ大きな問題はなかったことと、予算の都合も踏まえ行いませんでした。
ブロック塀は交換
以前は鉄製の門と敷地を囲う塀がありましたが老朽化が進んでいました。家の周囲を大きな塀や樹木で覆うと死角が増え防犯上はマイナスにもなります。
塀は住宅の美観にも大きく関わりますし、家の周囲に背の低い植物を植えたいということもあり、ブロック塀を作り直しました。
サンルームは撤去、その部分のサイディングも張り替え
外壁の改修は行いませんでしたが、リビングに併設されていたサンルームには問題がありました。サンルームは日射が入るので観葉植物を置いたり、洗濯物を干したり、窓際に1つ部屋を追加する感覚で使えるなどのメリットがあり、中古住宅ではサンルーム付きの物件は珍しくありません。
ただしサンルームは、換気をきちんとしないと内部結露を起こしやすく、カビが生えたりします。
山口さんは、観葉植物もさほど置かないし、サンルームのメンテナンスは負担だと考えたので撤去しました。山口邸の外観は青系ですが、サンルームがあった場所の壁はカビなどの汚れが強かったので、その部分だけ張り替えました。
風除室は改修せず
山口邸には玄関に風除室がついていました。最近の新築住宅は、玄関ドアの断熱、気密性能が極めて高い製品もあるので、風除室がなくても玄関ホールが寒くなりにくく、住宅会社も顧客の特別の要望がない限り風除室は設けないことがほとんどです。しかし、中古住宅は、断熱仕様ではない玄関ドアが多いため、風除室付きが多いです。山口邸の風除室は、状態が比較的よかったため、改修はしないことにしました。
中古住宅は玄関ドアの断熱性能が現代の製品に比べ格段に劣ることが多いので、玄関ホールを暖かく、省エネにしようと思えば、断熱性能の高い玄関ドアに交換すると効果ははっきり出ます。しかし風除室を残すことで、多少は断熱面の弱さを補えると考えて、今回は改修しませんでした。
1階リビングは床材張り替えなど
一階は和室、リビング、キッチン、水回り、インナーガレージがありました。和室の床は畳、リビングはフロア、壁はクロスで、いずれも汚れや傷が目立ったため、来客をお迎えすることも想定して…
安価な12ミリの合板を貼って綺麗にしました。
一階リビングには床暖房が敷設されていました。しかしコストと暖房性能を検討し、で床暖房はほぼ使用せず、窓際にパネルヒーターを追加で設置しました。もちろん使用しない床暖房のスイッチが壁にある必要はありませんが、撤去するにもコストがかかります。費用を節約するために、意図的に撤去工事までは行わない、という選択肢も、予算が限られる住宅のリフォーム、営繕工事では選択肢になります。
和室はダイニングに。窓は断熱・気密の重要ポイント
和室の床の間を撤去し、1階の窓は、断熱・気密性能が非常に低いアルミの引き違い窓だったので室内側の木製の内窓を樹脂製の内窓(LOW-Eペアガラス)に交換しました。1階は壁の一部に断熱強化も行いました。
山口部長は「樹脂製の内窓に交換するだけなら、大きさにもよりますが1か所あたり10万円以下でできることが多いです。さらに費用があれば、壁なども壊さずに既存の窓枠の内側に新しく窓を付けることなどもできます。窓は熱損失しやすいので、LOW-Eペアガラスやトリプルガラスを採用し、気密性も高めることで隙間風や窓際の寒さ、冬場の暖房費の削減につながります」と言います。
トイレは住み心地に大きく影響するので取り替えました。キッチンは数年前に改修済みだったため、今回は手を付けませんでした。お風呂もユニットバスに交換すれば、暖かく、掃除もしやすく快適になるとは思いましたが、今回はリフォームしませんでした。
暖房と給湯は設備を交換し対処しました。
想定外は「すが漏れ」対策の屋根工事
中古住宅では、壁や床、天井の中など、パッと見ではわかりにくい部分に不具合があって、寒い、雨漏り・すが漏れが起きているなどの問題に悩まされることがあります。そういう部分の改修は、オーナーの想像以上に費用がかかるケースがあります。
山口邸でも、キッチン部分の天井に、すが漏れが発生していました。無落雪屋根の中央部分には樋があって、雨や雪解け水がそこを通って排出される仕組みですが、そこにゴミや氷が溜まると、屋根の上が池のようになって、すが漏れの原因になります。
天井のシミに気付いて原因を探ると屋根の樋の部分が痛んでいたり、樋の排水溝が凍らないようにする装置(パイプヒーターや排水路ヒーター)のスイッチを住人が切ってしまっていて、、、というのはリフォームの現場ではよくあることです。
そこで、すが漏れの原因特定を行った上で、すが漏れ修理に合わせて屋根の葺き替え工事、そして室内側の天井のクロス張り替えも行いました。すが漏れの根本原因を解決することが重要でした。
2階は子供2人の部屋にする予定でしたが、畳や建具、クロスなどの汚れ、そして築30年の経過による古めかしい感じが目立ちました。
予算の関係で和室を洋室にフルリニューアルすることは断念しましたが、
娘さんのお部屋をこのようにリフォームしました。
床にクッションフロア、壁にクロス、建具の木部を塗装したりといった最低限の対応でもかなり綺麗になります。
山口部長に、住宅リフォームを行う人向けのアドバイスを伺いました。
住宅リフォームで多い要望は何ですか?
山口部長 キッチンやトイレ、お風呂など水回り関係の悩みを改善したいという要望が一番多いかもしれません。予算面で厳しい場合は、浴室の浴槽コーティング塗装などの代替案もあります。
もちろん、クロスや床材の張り替え、暖房・ボイラーの交換・屋根の落雪対策・外壁の塗装などの要望もあります。
雪庇止め工事や無落雪屋根への改修、隣家への落雪を防ぐためのフェンス設置など、状況に応じた選択肢はいろいろあります。
断熱改修の要望もありますか?
山口部長 もちろんあります。しかしどこまで改修するかによって費用はかなり変わります。そこで、気密・断熱性能の低い窓を高断熱・高気密の窓に交換するケースが多いと思います。予算が厳しければ内窓だけでも樹脂窓にするという対応も可能です。
ご自宅の場合はどう予算配分しましたか?
山口部長 一階は家族で過ごす時間も長いし、来客もこられることを想定して、ある程度費用をかけようと考えました。一階の暖房給湯、窓や内装の張り替え、トイレの交換、そしてすが漏れ対策に多くの費用がかかりました。
逆に2階はプライベートゾーンなので、極力リフォーム費用を抑える工夫をして綺麗にしようと考えました。そのためには実現したいことの優先順位をつけるよりも我慢すべきことの整理が必要でした。人件費や材料費を当たり前にかけて、壁や床、天井をしっかり直したりしないで、現状を活かして塗装をしたり、クロスを貼ったり…。今回は自宅なので、思い切った発想で、家族と相談しつつ費用を抑えて改修しました。通常の半分程度の価格で行えたと思います。
リフォームで難しいのは、お客様にとって、何を重点的に直したいのかを踏まえた改修の計画を練ることです。2階は断熱性能を十分に満たしていなくても我慢するなど、メリハリをつけた対応にして予算内で納めました。
リフォームの提案で気を付けている点は?
山口部長 お客様の要望を第1に、こちらの意見を押し付けないように気を付けています。お客様の本音のご要望、事情、ご予算などなんでも参考になるので支障のない範囲で、伺えればと思っています。
自分がお客様の立場だったらと考えた挙句、お客様に「今はそんなにお金をかけなくても、さほど問題は大きくないから安くリフォームできますよ?」と言ってしまう傾向があって、商売人としては問題あるかも、と思わなくはありません。
しかし、本音でいえば、私は営業トークで勝負するより、施工のプロとしての目線で、お客様の事情を親身になって考え、工事のメリットデメリットを隠し事なく話したいと思っています。営業上の駆け引きを駆使するのは得意ではないし、つじつまがあわなくなるようなことが嫌なのです。
また、リフォームは、安値勝負の会社も結構あるようですが、困りごとや故障の原因をしっかりと整理しないで、表面上だけを綺麗にする、といったケースもあるようです。
目に見える結露によるカビや、すが漏りによる天井のシミは、表面材(クロスなど)を貼り替えれば綺麗になりますが、なぜそうなっているかを考えて対処できなくては問題が繰り返されます。内容より安さでの見積もり競争になることがありますが、そのようなときは、無理な価格競争はせずに身を引くことも選択肢の一つとしています。
札幌市豊平区で、1957年から地域の方々の口コミで商売を続けてきたリフォーム会社としては、後でお客様が困るようなリフォームはできないからです。
現場監督として重視している点は?
リフォーム工事は大工だけでなく、板金、内装、電気、設備などの専門工事業者が連携して行うことが多く、自分は現場監督として、調査、診断、プラン、見積もり、現場のチェック、納品、請求、アフターも含めたお客様対応を行います。技能者同士のコミュニケーションや段取りも施工品質やコストに大きく関わります。
工事前には、オーナー様と一緒に、近隣の方に粗品を持ってご挨拶にも伺います。音の問題に関しては工事開始を朝8時半以降、工事終了は17時半までにすることを基本としています。
リフォーム工事は大半が、オーナー様が自宅に住んでいる状態で工事を行います。音や埃、技能者の出入りなどは、生活上のストレスになりますので、どのような問題が発生するか事前にご説明したうえで、家具などを傷つけないように丁寧に養生するといった対応をしています。技能者の気配り、人柄も大切になってくるのがリフォーム工事の特徴かもしれませんね。
編集後記
今回はリフォーム工事の内容と費用について株式会社建匠の山口部長に伺いました。どこをどの程度直せば、費用を抑えつつ快適な暮らしが実現するか、率直に話してくれました。
お客様にとって、我が家のリフォームは、日々の困りごとや生活の状況を家族以外の人に見られる面もあります。また、予算の兼ね合いもあると思います。駆け引きなしに、率直に、親身になって、知識経験豊富なリフォーム会社の担当者に相談にのってもらえるというのは安心だと感じました。
2020年06月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。