チラシや雑誌広告には住宅会社が売り込みたいことしか書かれていません。この「社長インタビューシリーズ」は「住宅会社の実態に迫る」ために、経営者がどのような姿勢で住宅づくりをしているのか、どんな会社なのか各社社長に直接、あえてくわしく話を聞いていきます。
株式会社丸三ホクシン建設は1974年に先代社長首藤喜四男氏が創業し、現在は2代目の首藤一弘氏が社長を務める石狩市・札幌市を主な対象とする地場工務店。設計は建築家、施工は腕の良い大工さんがいる工務店に頼みたいと考える方にはお勧めできる工務店です。
社員全員が大工。大工育成にこだわるのはなぜか?
首藤 大工の腕は、住宅建築の質を向上させるための大変重要な基礎だからです。住宅会社が雑誌やチラシなどに掲載している住宅の性能などは、最終的には現場の大工さんがどのような施工をするかに大いに左右されるのは間違いありません。例えば断熱材の厚さや材料は断熱性能を示す一つの目安にはなりますが、どれだけ正確な施工をしているかで大きく性能が異なります。当社は社員全員が大工であり、日々大工の腕を磨くことに全力を挙げています。住まいのプランニングは家づくりの中でとても重要な要素ですが、それは有能な建築家とコラボレーションする、当社は建築家の力を借りて、設計は建築家、施工は当社という役割分担でお客様にとって最高の住まいを提供する方針です。良い技能者を育成することが良い家づくりにつながり、当社の将来にも結びつきます。
なぜ工務店の社長をしているのか?
首藤 昭和49年に父が設立したのが「株式会社 丸三ホクシン建設」で、私は「道央建築高等職業訓練校」に入学し、同時に現場で大工見習いとして仕事を覚えながら建築の勉強を始めました。
訓練校を修了すると「日本建築大工技能士会 札幌支部」に入会し、青年部の活動に参加しました。20代のうちから建築大工一級技能士・職業訓練指導員・二級建築士・二級施工監理技士を取得し、職業訓練校の講師として教壇に立つことにもなり、監督者訓練指導員(TWIトレーナー)の養成訓練「仕事の教え方・人の扱い方」を受け、指導法も学びました。今でも技能士会の活動を通して、腕の良い大工の育成のためにボランティアで活動を行っています。
技能士会や、日々の現場で学んだことを私は丸三ホクシン建設で、7人の技能者とともに活かしているのです。新しい技術も学びながら良い家づくりを続け、お客様に喜ばれる。そのことに生き甲斐を感じるから工務店を続けているのです。札幌圏の同業の中には安定した仕事を確保できず、あるいは後継者がいないなどの理由で事業を続ける意欲を失っているケースも少なくありません。そういう会社にも仕事を求めている腕の良い大工の仲間がいます。私は今よりももっと頑張って、彼らにも当社の仕事に参加してもらい、一人でも優秀な大工を支えていけるようにしたいという夢を持っています。
建築家とコラボするメリットは?
首藤 当社は建築家とコラボレーションで家づくりをするという方法が、家を建てたいと考えるお客様にとって良い選択肢だと考えています。しかし住宅を建てたいと考える方の多くはハウスメーカーや工務店にコンタクトを取ることから始める方が多いと思います。設計と施工を両方行う住宅会社という存在は、ある意味では矛盾している存在です。
たとえば、あなたが建築家に家づくりを相談したとします。すると建築家はお客様の要望と、自分の持っている知識・アイデアを総動員して最高のプランを出そうと努力します。建築家は、お客様の予算に応えるために、非常に難易度の高い、手間のかかる設計であったとしても、最高のレベルでしかも安く施工できる工務店を探します。施工が難しいからといって設計を簡単なものに変更する必要はありません。腕の良い工務店を選べばよいからです。いくつかの施工会社から一社を選び、施工が開始された後も常に、建築家自身が、お客様に満足していただける施工がなされているかを常に厳しい目でチェックします。工務店側もその厳しい目に応えるために、気を抜かずに最善の仕事をします。
設計と施工というある意味では対立する緊張関係が、住宅会社内の社員同士だと、ちょっと違うものになりやすい側面があります。設計施工を一括で受注した場合、その住宅会社の担当者は、お客様の要望には配慮しつつも、より効率的に施工ができる、つまり施工しやすい設計をしたくなるのです。それが常にお客様の最大限の満足に直結するかどうか、というとそうではない部分もあるのです。建築家がお客様の立場に立って工務店に厳しい要求をするという関係が、施工側である工務店を鍛え上げるという側面もあります。
当社ホームページの「建築家とのコラボ」ページをぜひご覧ください。建築家の難しい要望に当社の技能者がどのように応えて、そしてとても住宅会社では考えつかないような「顧客第一」の家づくりが実現していることが分かると思います。高名な建築家は別として、決して建築家にお願いしたからといって総額が高くなるということはありません。建築家の力量と施工会社の力量が合わさった高度な家づくりが実現するのです。
記者の一言
オーナーが、大工さんや建築家の仕事ぶり、日頃の態度に感激、完成した住まいに満足して、竣工・引き渡し後のお祝いに大工さんや建築家を招くことが多いというのが丸三ホクシン建設の魅力を物語る。「光熱費ゼロ住宅」を宣伝する前に自ら暮らしてみる姿勢も首藤社長らしい発想。
2009年03月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。