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住宅設計に「セカンドオピニオン」の選択肢を【前編】Iさん家族の車いす住宅


家づくりを進める中で、「この間取りで本当にいいのだろうか」「将来の暮らしまで考えられているだろうか」と迷うことはありませんか。

そんなとき、医療のセカンドオピニオンのように、今の住宅会社との家づくりを続けながら、別の建築士に意見を聞く「住宅設計のセカンドオピニオン」という方法があります。

今の設計を否定したり、住宅会社を替えたりするためではありません。第三者の専門家に図面を見てもらい、違う視点から問いかけてもらうことで、自分たちだけでは気づかなかった課題や、新しい選択肢が見えてくることがあります。

今回は前編・後編の連載で、アウラ建築事務所(札幌市)の山下一寛(かずひろ)さんが取り組む「住宅設計のセカンドオピニオン」についてお伝えします。

Iさん家族がマイホーム新築を考えたきっかけ

現在、2人のお子さんと暮らす新居の計画を進めているIさん夫婦が、家づくりを考える大きなきっかけとなったのは、お子さんたちの病気でした。

2人のお子さんが患っているのは「デュシェンヌ型筋ジストロフィー」。筋力が徐々に低下していく進行性の病気です。

結婚当初はマンションで暮らしていくつもりでしたが、2024年12月、当時生後半年ほどだった次男の病気が判明。翌2025年1月には長男も同じ病気であることが分かりました。


山下さんが設計コラボしたM邸。主寝室、クローゼット、浴室がバリアフリーでオープンにつながっている(写真はすべてiezoom)


Iさん 筋力のピークは5歳と言われていて、将来は車いすでの生活を見据えなければなりません。このままマンションで暮らし続けるのは難しいと感じました。

一方で、国内で新しい治療が始まるという知らせもありました。治療の見通しが立ったことから、ご夫婦は2026年春、本格的にマイホームづくりを始めます。

「家族みんなで安心して暮らせる家」がこれからの希望に

ご夫婦が家に求めた条件は、大きく3つありました。

① 暖かいこと
② 車いすで暮らせること
③ 日当たりがいいこと

住宅会社を比較する中で、ある程度のバリアフリー対応は可能だと分かり、建築条件付きの土地を選んで、現在の住宅会社と設計を進めることになりました。


M邸。リビングは車いすの歩行性に配慮したコンクリート仕上げ


Iさん 将来への不安をなくすことはできなくても、家族が安心して暮らせる場所をつくることはできる。希望を持って生きていけると思いました。

プランを重ねるほど「このままでいいのだろうか」という疑問が増えた

住宅会社との本格的なプランニングは、今も続いています。

Iさん 希望を伝えると設計にきちんと反映してもらえましたが、自分たち夫婦も「車いす住宅」の正解は分からない。このままでいいのだろうかという疑問や不安が生じました。

現在の住宅会社も、車いす住宅を数多く手掛けてきた経験はありません。そこでインターネットで情報を探す中、見つけたのがアウラ建築設計事務所の山下一寛さんの公式サイトだったそう。


Iさんが読んだ札幌市K邸のiezoom取材記事


Iさん 車いす住宅を数多く手掛け、実際に暮らす人たちの記事を読むと、住んでいる方も、すごく満足されていました。

すでに建築条件付きの土地で計画を進めているため、山下さんに一から設計を依頼することはできませんでしたが、少なくとも納得した間取りで着工したい。

ホームページでセカンドオピニオンのような相談もできると知り、ご夫婦は山下さんに連絡しました。

山下さんのセカンドオピニオンで「考えつかなかったこと」に気づいた

実際に相談してみると、山下さんは一方的に答えを出すのではなく、ご夫婦に問いかけてくれたそう。

Iさん 私たちが良いと思っていた部分について、「これについてはこういう風に考えていますか?」と問いかけてくれるんです。大切なポイントに多く気づかせていただきました。


K邸のロフトを活用した収納例


例えば、悩んでいた収納。
何度も図面を検討してきたものの、なかなか増やす方法が見つかりませんでした。山下さんから、吹き上げを利用してロフトを設ける案や、玄関へ続くスロープとポーチの取り方を見直すことで、室内に収納スペースを生み出す考え方が示されました。

Iさん とても画期的でした。本当に、まったく気づかなかったんです。何度も同じ図面を見ているうちに、自分たちも住宅会社の設計担当の方も、1つのプランから抜け出せなくなっていたんだと思います。

もう一つ、ご夫婦にとって大きなアドバイスになったのが、家族の日常生活に目を向けることでした。


K邸にはロッククライミング・ウォールがある


Iさん それまでは、車いすでの生活ばかりに重点を置いていたので、そのほかの要素は二の次みたいな感じでした。

車いすが通れるか。
必要なスペースを確保できるか。

そうした課題を優先するうち、実際に家族がどう動き、家事をし、毎日をどんなふうに楽しく過ごせるのかという視点が十分ではなかったことに、山下さんとの対話で気づいたといいます。



K邸。リビングに隣接する洋室は兄妹3人で使用中。将来はTくんの個室にする予定。この部屋は水回りに直接つながっている


Iさん 生活動線や家事動線が、図面を見ても漠然としていて。そういうところにも「これでいいんですか」と、問いかけてくれて、住んだ時に後悔しそうなポイントに気づかせてもらえました。

子どもたちが小さいうちは家族の気配を感じながら過ごし、成長後はプライバシーも守れるようにしたい。

病気の進行への備えと、家族としての普通の暮らし。その両方を考えることが、ご夫婦の家づくりに加わりました。

「セカンドオピニオン」が家づくりの選択肢になれば

Iさんご夫婦は、現在の住宅会社に不満があって山下さんへ相談したわけではありません。

むしろ第三者の意見を聞くことで自分たちの考えが整理され、納得して現在の住宅会社との家づくりを進められるようになったといいます。

一生に一度ともいえる大きな家づくり。まして、将来の暮らし方を予測しながら設計しなければならない場合は、施主にも住宅会社にも分からないことがあります。


左/車いす対応の洗面化粧台
右/浴室は将来的に入浴用の介護リフトが設置できるよう下地補強してある


そんなとき、経験のある別の建築士に相談するという方法があります。

Iさん夫婦が二人のお子さんの病名を明かして今回の取材に応じてくださったのも、同じように住まいづくりに悩む家族に、こうした選択肢があることを知ってほしいという思いからでした。

では、住宅設計の「セカンドオピニオン」で、建築士は図面のどこを見て、家族に何を問いかけるのでしょうか。

後編では、Iさん夫婦からプランの相談を受けたアウラ建築設計事務所・山下一寛さんに、その考え方と具体的なアドバイスについて伺います。

▶後編に続く
【後編】住宅設計に「セカンドオピニオン」の選択肢を アウラ建築設計事務所・山下一寛さんの取り組み

記事中で紹介した事例の詳しい記事はこちら
家族みんなが快適で自然に介護ができる家 札幌市/Kさん

2026年09月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。

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