Column いえズーム コラム

資産価値が20年でゼロになる住宅、20年後も売れる住宅の違い

 中古住宅の売買が盛んで、建てた時より高く売れることもある欧米諸国とは異なり、日本では木造住宅の場合、築20年で価格が付かなくなってしまうのが現状。20年後、30年後に家を手放さなければならなくなった時、ローンが残っていたら、借金を抱えたまま家を出なければなりません。そうならないために、20年以上経っても売れる住宅を建てたいものです。

築20年の家を売るためには

tadashii04-01.jpg なぜ、日本の木造住宅は築20年を過ぎると資産価値がなくなるのでしょうか。それは中古として売買する時、建物の性能・品質を価格に反映することができないからです。昔のような土地の値上がりもほとんど期待できません。  一方、欧米諸国はというと、例えばアメリカでは住宅を新築・購入する時、第3者機関が住宅を検査し、その結果に基づいてお金を貸すのが一般的。そのため必然的に一定水準以上の性能・品質が確保されます。中古で売買する時もその検査結果の記録のほか、リフォームの履歴などの情報も多いので、性能・品質を価格に反映させやすく、資産価値の維持につながっています。  日本でもここにきて設計・施工時の記録を残し、資産価値の維持や中古での売買に活用しようという動きが出てきました。この動きをうまく利用することが20年後も売れる住宅の一つのポイントになりそうです。   <写真:平成2年に建てられた旭川の北方型住宅団地・ウッドタウン。性能・品質が評価されているため、売りにでても不動産情報誌に掲載される前に売れてしまうという>  

記録残すことが大切 道立北方建築総合研究所 居住科学部長 福島 明さん

tadashii04-02.jpg 資産価値を維持し、100年経っても使える住宅の条件としては、断熱・気密性能や耐久性がしっかり確保されていることと、その住宅の設計・施工に関する情報がずっと残されていることが挙げられます。  例えば北海道が昭和63年に始めた北方型住宅は、当時の北海道独自の断熱・気密関連技術を反映させた住宅で、特に気密性能基準は日本で初めて規定されました。平成2年に旭川で建てられた北方型住宅団地・ウッドタウンは、最近5棟ほど気密測定を行いましたが、建設当時と何も変わってなく、売買物件もほとんど見かけることはありません。実際には転売されていることもあるのですが、不動産情報誌に出る前に売れてしまうんですね。確かな性能・品質が評判になっているからです。このように基本的な性能がきちんと確保されていて、品質もしっかりしている住宅は価値があるわけです。  それでは確かな性能を持った住宅は、どうすれば手に入るのでしょうか。日本では、顔が見える近所の工務店かブランド力がある住宅会社で建てるしかないのが現状ですが、社長の人柄は何の根拠にもならないし、施工した住宅や現場を見せてもらっても役に立たないでしょう。ここ5年のうちに確立された施工技術は見てもわからないからです。オーナーに聞いても当てになりません。実際に新築した住宅を悪く言う人は滅多にいないし、悪いなんて思ってもいませんから。  このような状況の中でできることとしては、基本的な断熱・気密性能や耐久性を証明し記録しておける仕組みを利用すること。その一つが北方型住宅サポートシステムです。  

施工写真あると早く売れる

 北方型住宅サポートシステムは住宅の情報をずっと保管しておく仕組みで、図面や設計性能、現場の施工写真などが記録され、ほぼ完璧なデータとして約50ページの書類が電子情報になり、半永久的に第三者機関に保管されます。施工写真を撮っておくと、販売価格はどうなるかわかりませんが中古で売買する時に早く売れるといいます。それは不動産業者が自信を持って売れるからで、記録がある住宅は圧倒的に早く売れるそうです。  住宅の資産価値の維持について言えば、100年の耐久性は至上命題ですし、今では築15年の住宅にもプライスが付いているので、性能がしっかりした"売れる住宅"を建てておけば確実にリセールバリューが出ます。住宅を維持して100年以上使うことは孫の代まで残すことと同じと言われていますが、それは幻想。結局は売買して次のオーナーが入居するわけですが、その人が「この住宅はお買い得」と思えば高く売れるんです。その時のために必要なのが、高い耐久性や断熱・気密性能など性能・価値を証明する手段であり、住宅の情報をずっと保管しておく仕組みなのです。   Profile----- 1953年11月生まれ。1976年北海道大学工学部建築工学科卒業。 1978年北海道大学大学院博士課程前期修了。同年北海道立寒地建築研究所(現北方建築総合研究所)入所し、2007年から現職。住宅の断熱・気密・暖房・換気などの現実的な課題に取り組み、家づくりに関する様々な情報を建築技術者や一般消費者に広く提供しているほか、現在の北方型住宅には立ち上げ時から参画し、技術基準の設定や技術者の育成にも携わっている。工学博士。  

連載・住宅の正しい購入法

その1 10年経てば新築住宅も見た目がダサくなる問題~住宅デザイン

その2 住宅の暖房費、光熱費は将来どうなるか 住宅の省エネ・創エネ

その3 家を建てる人で間取りを学ぶ人は1割。「将来部屋が余る」問題

その4 資産価値が20年でゼロになる住宅、20年後も売れる住宅の違い

その5 工務店・ハウスメーカーが倒産?苦い経験から学ぶ住宅会社選び

その6 住まいの維持費を安く抑える賢い家作りとは

その7 正しい住宅購入法「街が変わって暮らしにくくなる」問題とは

2009年05月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。