Column いえズーム コラム

昔のままのデザインを残し 自立と介護双方に配慮

高齢社会の日本ですが、認知症など介護が必要な高齢者の数に対して受け入れる施設の数は圧倒的に足りません。また高齢者も、最期の時を迎えるまで住み慣れた家に住み続けたいという希望を持っている人がほとんどです。すでに大きな社会問題になっている在宅介護に対応するためのバリアフリーは一層重要になってくるでしょう。今回紹介する事例は、高齢で認知症の症状もある母親を介護するためのリフォームの実例です。

〔介助に配慮したトイレ〕スペースを広げドアを2枚にすることで、お母様が車いすを使うようになった場合でも動作が可能に、そして介助が必要になった場合でも介助者が動きやすいようにしました
〔介助に配慮したトイレ〕スペースを広げドアを2枚にすることで、お母様が車いすを使うようになった場合でも動作が可能に、そして介助が必要になった場合でも介助者が動きやすいようにしました
 
〔寝室の改修〕ベッドが2つ置けるスペースを造り、お母様と娘さんが一緒に寝れるようにしました。トイレに直線距離で移動できるドアも付けました
〔寝室の改修〕ベッドが2つ置けるスペースを造り、お母様と娘さんが一緒に寝れるようにしました。トイレに直線距離で移動できるドアも付けました
〔新たな出入り口〕玄関に段差があるため、ベランダに段差解消機が配置できるスペースがある風除室を設けました。お母様が車いすを使用するようになっても安心です。通路はロードヒーティングになっています
〔新たな出入り口〕玄関に段差があるため、ベランダに段差解消機が配置できるスペースがある風除室を設けました。お母様が車いすを使用するようになっても安心です。通路はロードヒーティングになっています
〔浴室、UTに移動するドア〕キッチンを通り抜け、浴室やユーティリティーに移動するドアの幅を広くしました
〔浴室、UTに移動するドア〕キッチンを通り抜け、浴室やユーティリティーに移動するドアの幅を広くしました
〔対面式キッチン〕独立して暗かったキッチンを対面式にしてリビング、ダイニングと一体感を持たせました。作業しながらリビングにいるお母様への見守りもしやすく安全です
〔対面式キッチン〕独立して暗かったキッチンを対面式にしてリビング、ダイニングと一体感を持たせました。作業しながらリビングにいるお母様への見守りもしやすく安全です
 

お母様の身体状況に合わせて繰り返したリフォーム

Kさんは現在のお住まいで暮らして約30年になります。3人の娘さんがおり、その1人が同居しています。  数年前から多発性脳梗塞と合併して認知症のような症状を発症するようになったKさん。外傷により右手の機能も低下しており、要介護度は4です。

 年齢により、少しずつ体の機能が低下していくKさんのため、ご家族はその都度必要なリフォームを行ってきました。
2003年には介護をしながら入浴できるよう1、5坪のユニットバスを取り付け、床は全てフラットにしました。
その後手すりの設置やトイレの改修、Kさんと娘さんが一緒に寝られるよう寝室を改修、そして今年はキッチンを対面式にし、Kさんへの見守り効果が上がったのはもちろん、Kさんご自身も家事に参加しやすいようになりました。

昔の面影を残して認知症の進行を防ぐ

設計者からは、極力家の中の様子を変えないというアドバイスも受けました。家の中の様子が大きく変わってしまうことによって、認知症の症状が悪化してしまうことを防ぐためです。 工事中に入院していたKさんが一時外出を許可される都度、室内の様子を確かめてもらいながら工事を進め、病院とも緊密に情報交換しながらリフォームを進めました。

周囲の介護サービスも活用して快適生活

現在は同居している三女のほか、長女、次女が交代で泊まりながらKさんを介護しています。  一番最初のリフォームで大きなサイズのユニットバスを導入しましたが、入浴の介護は年々辛くなったそうです。 そこで、付近の小規模多機能型介護ステーションを週に5日のペースで利用し、入浴サービスを受けるなど周囲の環境を上手に組み合わせながら、ご家族がKさんの快適な毎日をサポートしています。

《プロフィール》
西村裕広(にしむらやすひろ)
障害者に関連するNGO職員などを経てフリーライターに。福祉や住宅、自転車など様々な分野で執筆。


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2010年03月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。