畳敷きの部屋や段差の多い純和風建築の住まいは、バリアフリーに不向きのような印象があります。しかし、特に高齢の方には昔ながらの和風の家に住み続けたいと思う人は多いでしょう。今回は本州の実例になりますが、和の雰囲気を残しつつ機能的なバリアフリーを実現したリフォームをご紹介します。北海道の住宅にももちろん応用できます。
年齢と共にこたえる寒さと車いすの不便を解消したい
Sさんは四人家族。ご両親と息子さんご夫婦という家族構成で、生活しているのは、美しい日本家屋です。築年数が三十年ほど経過しているのですが、ここ最近はことさら家の中の寒さがこたえるようになってきたそうです。 また、年齢とともにご両親の体も弱ってきました。特にお母様は足腰が弱ってしまい、車いすを使用せざるを得ない身体状況になりました。そのお母様が自由に移動しつつ自立生活ができるよう、そして家の中が暖かくなるようにというのが、今回のリフォームのメインテーマです。日本家屋の美しさを損なわずに
機能的な側面だけでなく、日本家屋としての美しさを保つリフォームというのも大きな課題でした。車いすでの移動に配慮して可能な限り間仕切りを取り除くことによって、あるいは天井をはずすことで、隠れていた柱や梁が見えるようになりました。それらを上手にデザインし、古民家ならではの趣いっぱいの出来栄えになっています。 家中を巡る廊下と和室には段差がありましたが、廊下のフローリングをかさ上げすることで全て解消しました。車いすでの出入りにもまったく支障ありません。 それらの工夫により、日本建築ならではの美しさを損なうことなく実用的になりました。昔ながらの面影を残す様々な利点
寒さ対策では安全性の高い電気蓄熱式暖房を採用し、すぐ近くに開通した新幹線の騒音対策も兼ねたペアガラスを入れました。それだけで暖かさは十分になりましたが、インテリアのひとつとして薪ストーブも取り付けました。時折こちらの暖房も活用しておられるようです。住み慣れた住まいには深い愛着があるものです。住宅はどうしても老朽化が進んでしまうもので、住んでいる人の身体状況、あるいは家族構成の変化などに応じて修繕していかなければなりませんが、できることならその姿を変えずにおきたいと考える人も多いのではないでしょうか。そうした心情的な側面だけでなく、認知症の高齢者が混乱を招かないための対策としても、昔ながらの面影を残す家づくりは注目され始めています。
《プロフィール》
西村裕広(にしむらやすひろ)
障害者に関連するNGO職員などを経てフリーライターに。福祉や住宅、自転車など様々な分野で執筆。
事例レポート一覧
●工夫を積み重ねて自立生活が可能な環境に
●適切なバリアフリー住宅レポート
●昔のままのデザインを残し 自立と介護双方に配慮
●デザイン性を重視した車いすでも快適な住まい
2010年09月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。