Story 取材記事

建築家が考えた欠陥住宅?ストレス満載の家を大改造/札幌・S邸

信じられない問題が続々と!


「一級建築士に頼めば、オンリーワンの個性的なマイホームが建てられるはず!」

と思い、建築家に家づくりを依頼した我が家。

外観はご近所の方や友人にも

「カッコいい!」

「素敵!」

「デザインが斬新!」と褒められました。

ところが……!一歩家の中に入ると、大変な事件のオンパレード。「こんなんじゃ住めない!」とストレスだらけの日々でした。

札幌市在住のSさんご夫妻が、家づくりでどんな目にあったのか。そしてその後、どのように克服したのか。

家づくりで失敗する方が少しでも減るように、その経緯を教えていただけるということでいえズーム編集部、さっそくお邪魔しました。

外階段が急すぎて踏み面も20センチと狭く、冬はツルツルで怖い!

2010年に新築した我が家。

一階は車庫と寝室、浴室なので、玄関は2階にあります。玄関に入るには、階段を上る必要がありますが、その階段の角度が40度以上の急傾斜で、足がのる部分=踏み面(ふみづら)が20センチしかありません。特に冬は、コンクリートむき出しのツルツルなので、凍ったら滑ります。愛犬2匹を両手に抱えて階段を上る際には、身の危険も感じました。

オーナーも、建築前から図面、模型を見て、この部分に不安を感じ、建築家に相談しましたが、真剣には受け止めてもらえず・・・

これは、我慢できる範囲ではなく、住み始めてからすぐにでも応急処置が必要だと感じました。そこで新築したその年に、融雪用のヒーティングを踏み面に施工した上に、タイルを張り、手すりもいくらか太くし、応急的な対策を取りました。

上記のインスタグラムは、オーナーさま(奥さま)の2年前のインスタグラム投稿です。これで最悪の状況はとりあえず脱することができました。

南に窓がない!?スタイリッシュな外観でも、室内は暗い!



家の正面には窓がなく、スタイリッシュな見た目でしたが、窓がないのはよりによって南側。日光が一番入り、どの住宅会社でも開口部を設けるなど、日射取得に工夫を凝らす方角です。事務所やショールームなら問題ないかもしれませんが、住むとなれば話は別。今は、奥行きを感じられる南側の窓から温かい日差しが差し込みますが、リフォーム前は室内が暗く閉塞感がありました。後述しますが、こうした「気になる箇所」は着工前からオーナーから建築家に相談しています。

一度外へ出なければ、子ども部屋からリビングに行けない!(動線が非現実的)



左側の画像は、新築前に制作された模型です。正面から見ると細長い家ですが、横から見ると2つの建物になっています。家の中に入るには、先ほどの急な屋外階段を上って2階の玄関に入ります。

2棟の建物は、渡り廊下でつながっています。ちなみにリビングやお風呂から、子ども部屋に行くには、いったん屋外の渡り廊下を通過しなければなりません。お風呂あがりに、寒さ厳しい冬の屋外に一度出ないと子ども部屋には行けません。調理しているお母さんやリビングでくつろぐお父さんと、娘さんの子ども部屋は、別の建物ですから、家族の気配も感じられません。斬新さは十分ですが、お子さんは結局、自分の子供部屋を使いたがらなくなってしまったそうです。

1階がトイレとお風呂、3階がLDK…水回りが離れすぎているので、家事の時短なんてできるわけもなく、上手な使い道がない2階は物置状態に。寝室にクローゼットがないので、朝の身支度にも一苦労。細かいことをあげるとキリがありませんが、癒されるはずの我が家が、ストレスだらけの我が家だったことは間違いありません。

家の中の階段が急傾斜すぎて怖い!

急傾斜だったのは屋外階段だけではありません。室内の階段も、奥さまのインスタグラムからもわかる通り、迫力のある急傾斜の階段です。

建築家の頭の中ではお洒落なものだったのかもしれませんが、住み手は毎日ヒヤヒヤでした。

お風呂に入ると、隣接する寝室にお湯が流れてくる!

建築家の提案で、浴室は1階に設置。

ユニットバスではなく、オーダーにして、扉はガラス。なおかつ隣接する寝室との間に段差などもない形状になりました。見た目は映画に出てきそうな高級ホテルさながらのおしゃれな浴室。

ところが実際に入浴していると、隣接する寝室にお湯が流れ込み、寝室の床が水浸しに。家の大きさも限られる一般の住宅ではあまりにも非現実的なお風呂でした。2年くらいは我慢したものの、どうしても耐えられず、ユニットバスを2階に新設してもらい、1階の浴室は撤去しました。


他にも困りごとはたくさんありました。書ききれないほどに・・・

「自分主義の建築家」との出会い

結婚を機にマイホームを検討し始めたSさんご夫婦。最初は中古住宅を買ってリフォームして住もうと思っていたそうですが、職場の同僚の旦那さんが設計士だということを思い出し、相談したのが悪夢の始まりでした。ここでSさんご夫婦は一人目の建築家A氏と出会うこととなるのです。紹介だったこと、A氏が手掛けたリフォームの物件写真を見て、デザイン的によさそうだと思ったこと、安藤忠雄氏を師と仰ぐ姿から、建築家としての志のようなものを感じたことなどから、この方にお願いしようと考えました。

今思えば、疑問点もたくさんありました。

例えば、当初は今の土地ではなく違う土地で住宅を検討していました。その時に提出してもらったプランと現在の土地で建てたときのプランが全く同じだったのです。普通は土地の大きさや形状、周辺の環境によってプランはよりよいものに変更するはずですが、A氏は自分の理想を曲げようとしませんでした。

不安点を相談したら建築家に「逆ギレ」された!

「図面を見ても狭く感じるので、このプランではないものをお願いできませんか。娘の部屋に行くのに外に出るのはあまりにも不便すぎます」とSさんが頼んでも、「こういうつくりの方が、優越感がありますよ。実際にこういった建物があって、まったくおかしくないことです」と言いくるめられ、「わざわざ2棟にしないで1棟にしてください」と強めに言い切ったときには「そんなことを言うのであれば、最初から頼まなければよかったじゃないですか」と逆ギレされてしまったそう。

それ以上強く言えなかったSさん。知人の紹介ということもあり、他社にプランを頼まなかったので比較もできず、これが正しいのではないかと思ってしまったのです。

訴訟も考えたけれど・・・

そして実際にツインタワーの我が家が完成。しかし、先ほど挙げた問題点が続々とSさんご夫婦を苦しめます。欠陥住宅を診断する先生に見てもらったところ、建築基準法はぎりぎりでクリアしているものの、欠陥住宅に近いという判断が。

勇気を出して、A氏に不満を思い切りぶつけましたが、帰ってきた返事は「建築基準法は通っているし、了承を得て建築したもので、これ以上言うならこちらも弁護士を出す」でした。実際に裁判を起こすことも検討しましたが、もう何を言ってもダメだと思い諦めたSさん。現在A氏は十勝方面の建築業界にいるそうです。

そもそも「未熟」な建築士だったのかも?

「そういえば、A氏の手掛けた新築物件を見たことはないです」と振り返るSさん。施工実績として見せてもらった事例もリフォーム物件だけ。

初めて手掛けたのがこの物件だったのではないか。1級建築士の資格は持っているものの、経験が浅く、住まい手に合わせた設計の配慮や、プランニングのアイデア出しもまともにできなかったのではないか。著名な建築家を理想に掲げ、完全なデザイン優先で、オーナーの声など聞く気もなかったのではないか。当初熱心に現場に来ていたのはオーナーのためというよりも、自分の勉強のためだったのではないか。

思い返せばたくさんの疑念と不満が生まれてきます。

SOS!救ってくれたのはオーナー想いの建築家と工務店

頼るところがなくて…とSさんご夫婦が助けを求めたのが、リーベンホームの野村社長でした。実は、リーベンホームはA氏が建築工事を請負先に選んだ住宅会社で、野村社長とは間接的でしたが面識があったのです。

特に印象的だったのが、Sさんご夫婦の前で新築工事中に野村社長がA氏と大喧嘩したこと。「あまりにも住まいづくりを知らなすぎる!」と温厚な野村社長が激怒したそう。建築家のつくった図面の動線を見た時点で、使い勝手の悪さにすぐ意見したのも野村社長。階段の危険さも、お風呂での水漏れトラブルが懸念されることも、動線がめちゃくちゃで住み手がストレスを感じてしまうことも、建築する前からA氏に警告していました。

本来なら雇い主である建築士の指示に従わざるを得ない立場であったにもかかわらず、Sさんご夫婦の目線で家づくりに携わろうとしてくれたのです。工事中も何度もSさんの生活のことを考えA氏に苦言を呈しましたが、A氏は「お客さんに設計を納得してもらっているから図面上通りにつくってくれ」と決して譲ることはありませんでした。

入居して数回リフォームを行いましたが、どうしても使い勝手が悪く、今回の大改造に至ったSさん邸。リーベンホームの野村社長と、もうひとり、アーキテクトノエルの稲村さんという建築家にも相談し、1年半くらい綿密に打ち合わせを重ねて、現在のプランに決定。

稲村氏はSさん一家がいかに快適に暮らせるかを重視してプランを4案考え、野村社長も施工面でたくさんのアイディアを出して解決策を一緒に考えてくれました。2棟の建物を1棟にするのは耐震構造上とても難しいことでしたが、「どうしてもできないものか」と稲村氏が建物構造の専門家に相談し、2棟をつなげるプランが実現したのです。

新しくなったSさん邸におじゃまします!!



外観は以前の杉の外壁を白からブラウンに塗装し直して再利用。旧玄関は危険な階段を上った先の2階にありましたが、今は1階。ドアまわりだけカラーが違うのも、小窓があるのも、こだわりの照明も、隠れ家風カフェや雑貨屋さんに来たみたい。



ご主人のバイクもしっかり収納できる広い玄関ホール。古道具屋さんに中古の家具を探しに行くのが大好きなSさんご夫婦。ところどころに可愛い家具や雑貨が置かれています。



旧S邸の玄関は外階段から入る二階でした。しかし、階段に積もった雪で滑りそうになったりした経験も踏まえ、やはり玄関は1階に、ということにしました。

新しい玄関は、もとはガレージだった部分に造りました。1階はコンクリート造のため、天井が低い車庫部分を簡単には変えることはできません。コストも踏まえつつ、少しでも高さを持たせるために、車庫の先には広めの土間、その先には吹き抜け空間を設けました。



ご主人は靴の修理屋さん。ご自宅にもお気に入りの靴がたくさんあり、靴の収納棚も充実していました。1階にはユニットバスやユーティリティもあります。



以前は奥さまが『奈落の底』と呼んでいたほどの、アトラクション並みの急傾斜の階段も、今では傾斜が緩やかになり、白と薄い木目のコントラストがさわやかな手すり付きの廻り階段になりました。



階段を上った2階には、広いキッチンがありました。以前は3階にあったキッチンを2階に移動しました。「3階にキッチンがあって1階にトイレとお風呂というのはあまりにも動線が悪すぎた。水回りをどうにかしようというのは大きな課題のひとつでした」と野村社長。



キッチンは奥さんのお好みが反映されています。調理スペースは落ち着いたカーキ、背面収納部分は可愛らしいオフホワイトのタイルをセレクト。窓まわりの収納スペースも、まるで組み込まれたかのように馴染んでいます。業務用風な機能的・衛生的なキッチンに、お気に入りのフライパンを吊り下げて調味料までインテリアの一環に・・・そんな奥さまの憧れが実現されたキッチンです。



2階のキッチンを通過するとダイニングスペースがありました。実は、この場所。リフォーム前は2つの建物の間に挟まれた屋外空間でした。

左右の柱は、もとは外壁側の柱。建物を1つに合体させることで、ここにスペースが生まれました。今では「とても落ち着く場所で、休みの日でもここにいることが多い家族のお気に入りの場所ですね」とご夫婦が口を揃えます。



旧S邸は、同じ2階同士でも高さが違いました。2棟の建物をつなげると、室内に段差ができてしまう。そこで今回は、キッチンとリビングの間のダイニングを掘りごたつ風にすることで、段差の不都合感を気にならないようにしました。

「ダイニングでご飯を食べ終わったら、そのダイニングはキッチンに接しているので、食器は横にあるキッチンに座ったまま置けます。返却口はあるような感じです(笑)」と奥さま。ちらりと横を向けば自分好みのキッチンも視界に広がるなんて、うらやましい限りです。リビングではご主人が愛犬を抱っこして、まったり。



今は日の光が差し込むリビングダイニングですが、この大きな窓はリフォーム時につくられたものです。「最もよかったと思うところはリビングにある南側の窓。南側に窓がないなんて信じられませんでしたね」と野村社長。今では奥行きが感じられ、見晴らしのよいとても明るい空間になりました。

ご主人も「同じ建物なのに、住み心地が全く違うんです。別の家に引っ越したのかなと思うくらい住み心地が良くなりました。とてもうれしいです。家具やインテリアなどもリニューアル後に買いそろえて暮らしを楽しんでいます」と続けます。



2階リビングから下に行くと娘さんのお部屋。以前は娘さんの部屋に行くには必ず外に出なくてはいけませんでした。娘さんも住みやすい、落ち着くと絶賛です。



3階は主寝室が1部屋と広いベランダがありました。以前の家は収納がほぼなかったので、趣味を楽しむのも困難でしたが、今はご主人のギター・バイク・靴、奥さまは洋服、とお互いの好きなものをスッキリと収納できます。



ベランダからは手稲山も見渡せます。外からは見えない高さなので、プライバシーは守られつつも開放感たっぷり。ベランダには、ニッチスペースを生かして小さな物置も。ここで焼き肉をするのが、ご一家の大きな楽しみだそう。

工事が終わって…私たちが学んだこと

間取りや動線を変えるだけで、住宅の基本構造や換気・暖房を変更しなくてもよかったので実現した、今回のSさん邸のフルリフォーム。2019年2月から住み始めて、ご一家の生活がガラリと変わりました。ご夫婦に感想を聞いてみます。



ご主人「ここまで変わるかという感じです。まさに空間の魔術師。こんなに広く感じられる家だったとはと驚きばかりで、前の家に何度も遊びに来ている友人たちも、別な家に来ているみたいと全員同じ感想を言いますね」

奥さま「外から見たら寝室がこんなに広いとか、こんなに使い勝手のよいキッチンがあるとか、想像がつかないと思います。見たい人がいるならどうぞと言いたいくらい(笑)。今は家の中の移動が楽です。ベースが中2階のリビングで、使いやすくて住みやすい。やっと普通の暮らしができると感動しました。アーキテクトノエルの稲村さんと、リーベンホームの野村社長には本当に感謝でいっぱいです」


「住まい手目線」で工夫が凝らされたキッチンの一角


最後に、ご自分たちの家づくりから後悔したことや学んだことを教えてもらいました。

ご主人「自分たちは『知人の紹介だし、一級建築士の資格を持っているから大丈夫』という気持ちがありましたが、結局は、資格はあっても経験が浅く、こちらの意見をまったく聞こうとはしない建築家に押し切られてしまいました。他社にも相談するべきだったと思いますし、自分たちの勉強不足という反省点もあります」

奥さま「野村社長は私たちの困りごとを真剣に聞いてくれて、打ち合わせも納得いくまでできました。関係性は非常によかったです。信頼できる建築家と工務店でなければ、家づくりはおまかせできないと思いました」


奥さまのお父さまがDIYしたテレビボード。テレビのうしろは黒板


野村社長「本来住み心地が良い、というのがマイホームの一番大事なポイントのハズです。ところが家にいると逆にストレスが溜まる。そんな家は非常に身体によくないことです。この家の問題点が解決して本当によかったです」


無垢の床材など、自然素材もふんだんに使われている


記者の目

友人・知人が紹介してくれたから、という理由で住宅会社選びをすることはよくあることです。

建築家には、一般の住宅会社にはない斬新さやデザインのセンスを期待することもよくあることです。

しかし知人の紹介がどれほど信頼性の高いものなのか、

そして、数回打ち合わせをしただけで、一生住む予定のマイホームのすべてを託してよい建築家であるかどうかを判定できるものなのか、

そして家づくりが始まった段階で、疑問を感じたとき、

プロの建築家に向かって一般の方が、いくら施主の立場であるとはいえ、

堂々と意見を主張し、十分な説明を求め、場合によってははっきり方向転換を求めることができるものかどうか。

Sさんファミリーの直面した出来事が皆さんの、納得の家づくりの参考になればと思います。



余談ですが・・・

なおリーベンホームは、札幌圏で年間120棟近い新築住宅を建てる、札幌圏でもトップ10に入る規模の住宅会社です。野村社長も社長業で相当忙しいハズなんですが、


「家賃」より安い!予算厳守の家づくり~小樽・Aさん/リーベンホーム

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この事例でも、賃貸住宅の入居者と家主のトラブルの仲裁に入って解決したことが家づくりにつながったり、

どうもハウスメーカーの社長らしからぬ現場密着の面倒見の良さというか・・・。

住宅リフォームの安心・安全を業界全体で高めていく全国組織「一般社団法人日本住宅リフォーム産業協会(ジェルコ)」の北海道支部副支部長として、団体活動にも汗をかいていて、その人柄で一目置かれていたり、不思議な人です。

2019年09月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。

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