Story 取材記事

古民家の風合いの新築住宅/札幌市S邸/丸三ホクシン建設

昭和の懐かしい腕時計やレコード、マンガや本など、ご主人が楽しさに心惹かれて子どもの頃から集めてきたこだわりのコレクションは、段ボールに入ったままアパートの押し入れの奥に眠っていました。一方、奥様も昭和モダンの香るティーカップ&ソーサーなど、暮らしを彩るモノや、価値のある本物素材の家具や生活雑貨がお気に入り。

そんなSさんご夫婦が当初、探し求めた「家」は、古くて味わい深い古民家と言います。しかしここは北国、住環境や耐久性を考えると本当の古民家で暮らすには厳しい。けれど、昔風にこしらえたもの、見せかけの古風では納得できない。そんな中、たどり着いたのは本物志向の価値観があう「建築家」と腕の確かな「工務店」を見つけることでした。

 「大好きなモノに囲まれながら楽しく快適に暮らしたい」そんなSさんの家づくりが始まりました。
2010HOKUSHINS (2).jpg(全面こげ茶の外観。玄関側からの表情は組んである木の縦ラインが美しい。南の庭にはテラスドアと2階にはベランダが設けてある)

ゲストを迎えるラウンジスペース

玄関からのアプローチを抜けると、窓から差し込む柔らかい光に包まれた空間が広がります。

2010HOKUSHINS (3).jpg(「家の造りを面白くできる」と敢えて斜面の土地を購入したご夫婦。斜面は雰囲気のある長い玄関の土間アプローチを造った)

白い塗り壁と落ち着いた色調の柱や梁の木。昔懐かしい日本家屋を思い出させるような土間から板の間に靴を脱いで上がると、そこはさながらカフェバーのラウンジ。置かれたアンティークな時計のコレクションにミッドセンチュリーの雰囲気漂うチェアとテーブルが、心地よく来客を迎えてくれています。
2010HOKUSHINS (4).jpg(ゲストを迎えるラウンジスペースにはご主人の好きなアイテムの数々が。昼下がりにくつろぐ奥様の「癒しの空間」ともなっているようだ)

S邸を象徴するようなこのラウンジには、ご主人が集めたセイコー5SPORTSやオリエント時計など、昭和を代表する時計のコレクションが、まるで美術作品のように展示してあります。さらに、これらの時計が飾られる什器には、小さいころ文房具屋で見かけた絵具用のショーケースや薬やの陳列棚を利用。色や形も様々なモノが、しっくりこの空間に溶け込んでいるのは、Sさんの思惑通りだったようです。

住宅性能は安心できる専門家に

今回Sさんが設計を依頼したのは建築家の奥村晃司氏。雑誌に掲載された氏の作品を見て「本物の家づくりをする人」だと感じたと言います。Sさんが奥村氏に要望した点は<コレクションが収納できるスペースの確保><2階にリビング&寝室を><予算内でおさめる>のみ。住宅性能においても<専門家に任せたい>という考えでした。しかし、自分たちでは腕のいい工務店は分からない。奥村氏に相談すると、数社の工務店を紹介されました。そこで合見積もり。予算内に収めた見積の価格と性能の内容から丸三ホクシン建設に決めることにしました。

その後、同社首藤社長との話しから、断熱・気密性能を長期優良住宅対応、ランニングコストを抑え、温熱環境もベストな住まいを目指すこととなりました。しかし、押し迫る申請期間。急ピッチで打ち合わせを重ねるが、「もっとじっくりプランを煮詰めたい」という思いから長期優良住宅の申請を断念。補助金を受けられなくなったものの、「ホクシン建設首藤社長に頑張ってもらった」(Sさん)ことにより、壁に200ミリの断熱材、熱損失係数Q値1.4kw、気密性能C値0.4c㎡/㎡という高水準を予算内で実現することができたのでした。

自分らしさを形に

Sさんがプラン完成までのあいだに、最も時間を費やしたのは空間造りでした。窓からの眺めや、壁の佇まい。自分たちの暮らしに合った雰囲気をとことん重視しました。なかでも夫婦の過ごす時間の長い2階スペースは、キッチン・ダイニング・リビング・書斎が一体化して、夫婦が共に過ごす時間を大切にしています。

2010HOKUSHINS (9).jpg(ネットショッピングが趣味というご夫婦の書斎。リビングスペースと仕切っている本棚には、書斎の椅子からリビングが見えるように1段分の壁を抜いてある。書斎でパソコンをする奥様にリビングにいるご主人が話しかけても、すぐに振り向いて反応ができる。こちらも奥様のアイデア)

リビングには、オーディオやCDやレコード、DVDなど、ご主人のコレクションが大量にありますが、「オーディオルームにはしたくなかった」という奥様。リビングと書斎を仕切る本棚にひと工夫したことにより、くつろぎの空間が生まれました。例えば、ご主人がテレビで面白い場面を見つけた時、奥様が振り返ったらすぐに返事ができるなど、本棚の壁を目線部分だけ取り払ったことで、夫婦の距離感はぐっと近くなりました。

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また、奥様の趣味のスペースとなっているロフトは、図面上では壁で仕切られた空間となっていました。しかし工事中、リビングに置くソファーに座ると視線の先がロフトになることを発見。リビングとロフトを仕切る壁をくり抜くアイデアは、現場で首藤社長と奥村氏との話し合いから生まれました。

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さらに、建具や家具、照明などは、行きつけの骨董品屋のオーナーにも相談に乗ってもらったと言います。なかでもユーティリティスペースに付いた建具は、某フェリー会社の社長室に使われていたというアンティークガラスの木製枠を組み込んで、建具職人さんに特注で作ってもらいました。

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(某フェリー会社の社長室に使われていたアンティークのガラス枠。今は貴重なダイヤガラスが空間の趣きを出す)

大好きなモノに囲まれながら、家族がゆったりと豊かな時間を過ごす---S邸には、至るところにSさんらしいご夫婦のこだわりが散りばめられているのです。
2010HOKUSHINS (5).jpg(壁一面が鏡となっているユーティリティスペース。棚にはタオルを見せる収納にして、まるでホテルのような清潔感)

2010HOKUSHINS (10).jpg(リビングにあるソファからの眺め。キッチンカウンターに設けられたショーケースには奥様お気に入りのカップ&ソーサーが並ぶ。塗り壁の白と木の茶で統一された空間に、昭和モダンを感じさせる色とりどりの食器が映える。S邸では「お気に入りのカップ」でお茶を淹れてくれるのが嬉しい。キッチン上部に設けた鴨居風窓の奥は、「アルプスの少女ハイジ」を彷彿とさせる屋根裏部屋のようなロフト。)
2010HOKUSHINS (12).jpg(実用面を重視したオリジナルの業務用キッチンは、レストランの厨房のよう。床下には暖房用器具が備えてあり、調理中も足元からじんわり暖か。「裸足が気持ちいい」と、床に空いたルーバーからも柔らかい熱が伝わる)
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記者の一言

オーナーの個性、建築家の感覚、施工会社の技術のトライアングルがそれぞれの方向にバランスよく作用しあって良い家が生まれるのだと、Sさんの取材を通じて改めて実感しました。実は私も奥村・ホクシンのコラボレーションで家を建てました。今回、まだまだ出来たことがあったかもなどとも思ってしまいました...いやいや、わが家もとても満足しているんですよ。ほんとに。でも時は戻せませんから。これから家を建てるみなさん!情報はより多く入手することをお勧めします。


2010年04月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。

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