「クルーソー・コテージ」と名付けられたという、シノザキ建築事務所さんが手掛けたKさん邸。完成見学会では「わあ!」「すごい!」という声であふれ返っていたそうです。名前を聞いただけでもワクワク感がありますが、さて、どんな住宅なのでしょうか。
住宅街に馴染む山小屋風の家
札幌市内のメインストリートから少し離れた川沿いの住宅地に、そのおうちはありました。三角屋根に煙突のある外観、落ち着いたグリーンの木目サイディングで、近隣との調和も図られています。 Kさんご夫妻 Kさんは札幌育ち、奥さんは喜茂別のご出身。友達同士のようにも見える爽やかなこのお二人、毎年夏に小樽市の野外ステージで行われる「ライジング・サン・ロックフェスティバル」に行く仲間で知り合ったそう。「2日間通しですからテントを張ってね、楽しいですよ」。そう話すご主人はエレキギターが得意、奥さんはフラメンコを習っているとのこと。そんなお二人は畑作りにも憧れ、市民農園を2年間借りていたとか。 奥さんの「畑をつくりたい!」そしてご主人の「ギターを思い切り弾ける部屋がほしい!」という思いで家を建てることに決めたお二人は、去年の冬にシノザキ建築事務所さんを訪ねました。 「住宅に関してはまったく知識がない私たちに、家づくりについて一から教えてくれたのが篠崎社長でした」とKさん。奥さんも、「予算について心配していましたが、私が聞く前に『建築にはこのようにお金がかかります』と具体的に教えてくれました」。ほかに候補の会社もありましたが、ここまで具体的にはっきりと説明してくれるところはないと、シノザキさんに決めたそうです。薪ストーブ暖房、排熱や地中の熱も使うエコ設計
Kさんご夫婦が出した条件は「山小屋みたいな木にあふれたイメージで、住宅性能が良く長持ちする家」。奥さんは、既に詳細なデザインプランを描いていました。「妻はインターネットや雑誌で熱心に調べていました。施工例からキッチンのタイルに至るまで、何千も見ていたと思います」とKさん。ご夫妻がシノザキ建築事務所さんと打ち合わせた回数は30回近くになったといいます。 「うちは打ち合わせを丹念に行いますので、Kさんの場合も少し多いぐらいですね」と篠崎社長は言います。「Kさんご夫妻の持っているイメージを確かめるために、例えばフローリング材の塗料も実際に何色か塗ってみてから決めるなど、細かく時間をかけていきました」 様々な種類の木が使われたリビングには、お二人の念願だった薪ストーブが存在感を放っています。「キャンプが好きで、火をくべていると落ち着くんですよね」とKさん。そこで、シノザキさんはリビングのどこからでも見える場所に薪ストーブを配置したそうです。 しかも、冬でも薪ストーブたった1台で家全体を暖める設計。断熱の良い暖かい空気が逃げにくい家だから可能なんです。薪ストーブから2階に上ってきた暖気は、床の適所に配された空気口から1階の床下へ行き、建物全体を巡るようになっています。性能が良くてエコというだけでなく、断熱材には道産材が原料の木質断熱材「ウッドファイバー」を採用。通常の断熱材よりも蓄熱性が高いため、薪ストーブとの相性もバツグン。ストーブから離れていてもあったかいのです。さらに年中ほぼ一定温度の地中熱を利用し、冬はほんのり暖かく、夏はちょっとひんやりした空気が入るアースチューブを採用しました。
Kさん愛用のエレキギターが飾られた1階の音楽室も、一見寒そうですが暖かい!
Kさんご夫妻が希望していた「ナチュラルで住宅性能があり長持ちする家」にシノザキさんがこたえた形ですが、「こういった無駄のないシステムの考え方は好きですね。お任せして正解でした」とKさんご夫妻も満足。
木と造作の魅力がたっぷり、珍しい樹種のフローリング
2階のキャットウォーク(右側)は最初の設計段階では付いていなかったそうですが「カーテンを付けたいし、植物を育てるスペースにもしたい」という奥さんの要望で設置することに。2階の間取りは寝室と客間の2室に分かれています。三角屋根の空間を利用したロフトは、遊びに来た仲間たちがゴロ寝もできそう。リビングのフローリングは「ソノケリン」という紫檀の仲間。バラのような香りがすることからローズウッドとも呼ばれます。ウォールナットよりも黒めの木材をというご夫妻の要望に、シノザキさんが提案したものです。複数の色が混じった独特の美しさはKさんご夫妻のお気に入り。ちなみにテーブルやキッチン収納は造作。
シノザキさんならではの造作もたくさん。
どうですか、この化粧洗面台。まるでお店のよう。
ユーティリティー壁面にある造作。ストールやマフラー、帽子やバッグなどがどんどん掛けられて、見た目もおしゃれ。脱衣室にはバスマット掛けも造作されていました。
窓からは土手のみどりが眺められ、住宅街なのに自然の中にいるような安らぎを覚えるKさん邸。「もともとモノには愛着を持つタイプで、長く使えるものをいつも選んでいます。その思いは家に対しても同じなので、本当に思い描いていた素敵な家を造っていただいてうれしいです」と奥さん。
休日は、2人でゆっくりできるのもうれしい。親しい仲間たちを呼ぶのも楽しみです。「もう、外に出たくなくなりそうですね」と、お二人は顔を見合わせてほほ笑んでいました。
エレキギターを愛するKさんですが、お住まいは天然素材と自然エネルギーをたっぷり活用し、心地よいアコースティックサウンドを奏でていました。
記者の目
Kさんご夫妻によれば、建築時は現場監督から「こうしたら使い勝手が良いのでは」と提案されたり、大工さんからも「これを付ける高さはここでいいかい?」と、よく声をかけてくれたりしたそうです。「篠崎社長と設計担当、さらに監督さんや大工さんまで、皆さんがアイディアを出してくれて、我が家を造ってくれました」と感謝するKさん。ここまでのチーム力があるからこそ、細部までお客の希望にこたえられる家ができるのだと思いました。2015年05月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。