Story 取材記事

深い庇のウッドテラスに数寄屋を感じる建築 札幌市/庇深の家(hibuka)


豊かな緑に囲まれた札幌市内の閑静な住宅街に、Aさんの新居は建っています。スレート風の横貼りが風格あるファサードを成す印象的な外観です。

設計・施工したのはシノザキ建築事務所(札幌市西区)。同社が開発・特許申請中(21年11月現在)のラディアント・サーキュレーション・システムを採用した3棟目の住宅です。夏は床下のひんやりを、冬は薪ストーブのポカポカを家中に巡らせる、エコでナチュラルな冷暖房で、これまでにない穏やかな心地よさが特徴の住まいです。
ラディアント・サーキュレーション住宅の詳しい記事はこちら

完成見学会が行われる中、オーナーのAさんと篠崎社長にお話をうかがうことができました。

自然素材をふんだんに使った寛ぎの空間が連続するLDK

庇深の家(hibuka)は
・全室クルミの無垢床
・薪ストーブの耐火壁に札幌軟石
・和室の壁に稚内産珪藻土
・畳には本いぐさ
・天井に屋久島地杉
を採用するなど、本格自然素材をふんだんに採り入れており、素材感を生かした設計デザインが光ります。



左/玄関から真っすぐに土間が続き、ウッドテラスへの動線も。
右/玄関には土間とホールを回遊できるシューズクロークを備えました。床下暖房だから、濡れた靴も朝には乾いています。



玄関土間とリビングは高さ180cmの壁で仕切っただけのオープンスペース。このモルタル風に仕上げた間仕切り壁は、壁付TVにも利用しています。AV機器もまとめてコンパクトに。

天井の一部分は屋外からの光がさす「光天井」。2階フリースペースの一角にはめ込んだポリカーボネート板を通して、リビングに自然光が入るようになっています。柔らかな採光が障子越しの明かりを連想させ、寛ぎを感じるポイントです。



リビング続きの和室は、4畳大のコンパクトな空間を塗り壁と本いぐさの畳で仕上げた小宇宙。ゴロンと寝そべってリラックスしたり、来客の際には寝室として、お子さんのプレイスペースとしてなど、様々な使い方ができそうです。



LDKは全体にウッドテラスの庇(ひさし)と同じ傾きで天井の一部が吹上げになっています。現しの梁には梁成(梁材の高さ)50cmと丈夫な欧州アカマツを採用。高い耐震性能と自由な空間を実現できるSE構法で、こうした独創的なデザインが可能になっています。

深い庇と大開口でつながるダイニングとウッドテラス



大きな連続窓のあるダイニングからは、深い庇のついたウッドテラスを介して、庭の様子が眺められます。

「人が心地よく感じる視界の広さを意識して設計しています」と篠崎社長。陰影とのバランスも大切にしたデザインです。



木で囲まれ「縁側」のようなウッドテラスには屋久島地杉が使われています。LDKの傾斜天井も同じ素材と同じ勾配で連続した空間に仕上げています。

油分の多い屋久島地杉は防蟻・防ダニに優れ、杉の香りにはリラックス効果もあり、ウッドテラスには最適な素材です。

さらに篠崎社長は、「シロアリは寒さに弱いからと、道内では防蟻対策について、それほど意識されてきませんでしたが、温暖化による50年以上先の状況も見据えて、今回から基礎の防蟻処理を標準化しました」と話してくれました。

家族の様子が見渡せる機能的なキッチン



キッチンに立つとリビング・ダイニングと、奥の和室まで見渡すことができます。



モルタルを模したキッチンや床タイルに、ウッディな背面収納が似合います。

3連窓の明るいフリースペースと家族の居室がある2階



2階に上がると、広いフリースペースが現れます。南向きの3連窓からたっぷり日差しが入り風通しもよく、洗濯物のドライエリアとしても重宝しそう。間仕切りやドアを付ければ個室にすることも可能です。

家族の居室はフリースペースを中心に配置。3連窓に向かって右手には子ども部屋が2室、左手に夫婦の主寝室と子ども部屋が1室あります。



壁面上部には4つのガラリが。壁の内部には床下から2階天井まで続く「風道」が伸びていて、室内の暖気や床下の冷気がこの「風道」を介して家中に循環します。
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デザインタイルは気分を上げる映えポイントに



洗面化粧台の壁面にはデザインタイルを使っています。
左/家族皆で利用する洗面化粧台は大人が並んで使える幅広設計です。
右/2階洗面はトイレ後の手洗いや、朝晩の歯磨き・洗顔に便利です。
美しいタイル模様が何気ない暮らしのワンシーンで気分を上げてくれそうです。

Aさんにお話をうかがいます

シノザキ建築事務所との家づくりについて、お話をお聞きします。



Q マイホームを建てるきっかけは?

主人の転勤に伴い転居が多く、賃貸の集合住宅で暮らしてきましたが、コロナ以降は家で過ごすことが増え、子どもたちが家の中でものびのびと遊べて、騒音の心配もない一戸建てを考えるようになりました。

Q シノザキ建築事務所との出会いは?

主人の友人がシノザキさんでマイホームを建て、お邪魔したのがご縁でした。木をふんだんに使った洗練されたデザインに加え、要望に沿った丁寧な設計や仕上げが印象的でした。

Q 家づくりにあたっての要望は?

家族みんなが一緒に過ごせる居心地の良いLDKと、子どもを遊ばせたり、家族でアウトドアが楽しめるような庭と一体化したウッドテラスを希望しました。

庭で遊ぶ子どもの様子が室内から見守れるデザインや、屋久島地杉の風合いも気に入っています。


左/建物正面からも出入りできる半屋外物置。右/1階階段室の半屋外物置から2階へ続く階段途中にあるスキップフロアの家族書斎


半屋外物置は子どもの自転車やタイヤの収納のために希望しました。漫画や本が多いので、家族書斎も。和室は子どもたちが小さいうちはプレイスペースとして使用する予定です。提案していただいた薪ストーブは、庫内調理なども楽しみです

家族が一緒に過ごせるオープンな空間と、それぞれのプライベート空間をゆるやかに連結したプランニング。

深い庇を擁したウッドテラスと大開口が織りなす癒しの住空間は、洗練されたデザインの中に、日本人が求める「上質な寛ぎ」を感じさせ、シノザキ建築事務所ならではの設計の妙を随所に感じる一棟でした。

※ラディアント・サーキュレーション・システムについては、これまでの取材記事で詳しくご覧いただけます。

写真 村川写真事務所
記事 編集部 松下綾

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シノザキ建築事務所の新提案【前編】
シノザキ建築事務所の新提案【中編】
シノザキ建築事務所の新提案【後編】


2021年11月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。

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