家族構成が変化し、思った以上に広く感じられる住み慣れたわが家。2階を使っていると、階段の上り下りが億劫だし、トイレは1階なので行くのが大変で、つい1階の客間を主寝室に使ってしまいがち…。冬の寒さも身に染みて、思い切って平屋に減築し、高断熱・高気密住宅へとリノベーションしてみたい・・・ そんなご希望を叶えた、お客さまの家があります。
Sさんは、築19年の2階建て注文住宅を減築して平屋にし、さらに一部増築してシンプルモダンな住宅にリノベーションしました。掃除やメンテナンスをこまめに行い、大切にお使いだったお住まい。現地を確認した金谷常務からお墨付きをもらうほど内装の状態は良かったそうですが、お客様は間取りや基本となる断熱性能に大きなお悩みを抱えていました。
恵庭市内の緑豊かな住宅街にSさん邸はあります。外壁はフラットルーフに黒と白のモダンな仕上り。中央に見える屋根から突き出た部分は、開放感を演出するLDKの吹き抜けになっています。リノベーション前の写真(Before)と比べると、その変化の大きさに驚くと思います。
会社員の旦那さまと自宅でピアノ教室を開かれている奥さまの2人暮らし。玄関右横の、縦窓が3つ並んでいる部屋がピアノ教室になっています。
和室リフォームをきっかけにお付き合い始まる
出会いは5~6年前。和室にあった腰高の窓を、庭への出入りがしやすい掃き出し窓に変更する小規模なリフォーム工事がきっかけでした。工事後も、キクザワのお客さま感謝祭などを通じて良好なお付き合いが続いていました。
50代を機に大規模なリノベーションを決意したSさん夫妻。他社も含めて検討したそうですが、「自由設計が可能で、自然素材を多用するキクザワさんの家づくりの考え方が私の好みにピッタリ合いました」と奥さま。
こちらは縁なしの畳でスッキリとモダンに仕上がった和室。和室は内装のみ変更しました。
「自分のイメージ通りの家をつくりたかった」という奥さま。リフォーム前は全体的に日当たりが悪く、キッチンも壁付け式だったので壁際を向いて台所仕事をしていました。ユーティリティーとの間には収納や間仕切りがあり、使いにくい家事動線がとてもストレスでした。
玄関クロゼットから水回りにかけての便利な回遊動線がお気に入り
玄関の左手にはホールを介して、洗面脱衣室とトイレに繋がるシューズクロゼットが。帰宅時はコートを掛けてそのまま洗面室へ。ピアノのレッスンに来る生徒さんも、リビングを通らずにトイレに行くことが出来る造りにしています。
暖房、給湯は電気とガスをバランス良く使って光熱費を節約する「ハイブリット給湯暖房」ボイラーが使用しています。
今回のリノベーションでは、断熱・気密性能向上もテーマでした。リノベ前の家も室内は寒くはなかったものの、暖房費が気になっていました。
そこで、SII(一般社団法人環境共創イニシアチブ)が募集した「高性能建材による住宅の断熱リフォーム支援事業」に応募し、断熱・気密性能を強化することに。UA値は0.36Wと道が推奨する新築住宅向けの基準・北方型住宅ecoレベル以上の高性能。無事、事業対象の工事として採択されました。
この補助金を活用し、断熱は外壁が高性能グラスウール換算で220mm相当と、一般的な新築住宅の2倍近い断熱性能を持たせ、窓もYKK APのAPW430という最新のトリプルガラス入りサッシに交換。新築以上の暖かさと光熱費の削減を実現しました。
その結果、今冬はガス(給湯・暖房・調理)代が平均約1.5万円、電気代が融雪槽の使用を含めても平均約1.5万円に抑えられています。電気料金の値上げで電気代が気になって融雪槽を使わなくなった方が増えましたが、この金額なら安心して使えますね。
床には床下収納もあり、洗濯に使うハンガー類が収められています。
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トイレは旅館や料亭を連想するような高級感あふれる仕上がり。手洗いや棚などはキクザワが得意とする天然木をふんだんに使って丁寧に造作。
トイレと浴室は平屋の増築部分に配置しており、シューズクロゼットを中心にした回遊動線が可能になりました。
自分の暮らしに合った住まいで好きなものに囲まれたシンプル・ライフを実現
リノベーションにより、2階建てから平屋建てになったSさん邸。高さ4mを超える吹き抜けのあるLDKを中心に、明るく開放的な住空間が広がっています。リノベーションの際のコンセプトや提案内容などについて担当の金谷さんにうかがいます。
金谷さん「1階だけで完結できる住まいは、私自身が暮らしやすさを実感しており、ご提案しました。ご高齢になるにつれて階段での上り下りは大変ですし、掃除などメンテナンスの面でも平屋は効率が良くおすすめです。
また日差しを取り込むためにLDKには三面採光の吹き抜け天井を提案しました。この吹き抜けがあることで、伸びやかな空間が生まれています。
以前は三角の大屋根が付いた可愛らしい雰囲気のお宅でしたが、自然素材で質の良い、シンプルな家具や雑貨がお好みでしたので、ナチュラル・モダンテイストに仕上げました。建具や床、造作家具などはすべて自社大工の手によるものです。壁は珪藻土入りの漆喰で仕上げています。
自社大工のスキルの高さはキクザワの家づくりにとても重要です。元の建物をいったん柱と梁の構造体レベルまでバラしたところから、どう工事を進めていくか相談する場面もありました。リビングとダイニングキッチンの境界に位置する大きな梁を組む際には他の現場からも助人が集まり、ほぼ全員の、計7名ほどの大工が協力して作業に当たりました」。
増築によって1階ダイニング横に出来上がった寝室には壁面をすべて使った大収納を完備。ナラ材を使った美しい引き戸も造作によるもので、中は雑誌で見るお手本のようにきれいに整理されています。
ダイニングの壁面を彩るサイドボードも造作です。美しい木目を活かした見事な仕上がりには目を奪われます。センス良く飾られたインテリアや絵画が映える、とっておきの空間になりました。
明るく機能的な対面式キッチン。ワークトップやガスコンロはステンレスで統一されています。お料理が得意な奥さま。造り付けの食品庫も重宝しているそうです。
コンロの下にはガスオーブンをビルト・イン。IHコンロからガスコンロへの転換も、リノベーションのひとつのきっかけでした。週1回はこのオーブンでパン焼きをしたり、コンロでは鍋でご飯を炊いたりと、ガス調理を楽しまれているようです。
キッチンパネルの代わりに奥さまが希望したのは暖かみのあるタイル。ブルー系の名古屋モザイクを選びました。ピカピカに磨き上げられたコンロを拝見しても、丁寧な暮らしぶりを垣間見ることが出来ます。
「本当に必要なものだけを置くようにしたら、こうなりました」と奥さま。ソファーやコーヒー・テーブルを置かないことで、リビングがより広く感じられます。ナラの無垢材は、床暖房で暖められており、足元はいつもポカポカと快適です。
リビングに隣接する和室の扉をオープンにするとさらに広々とした空間が生まれます。
LDKから玄関ホールに通じる引き戸は2つあり、向かって奥が玄関正面とレッスン室に近い引き戸、手前が洗面室やトイレに近い引き戸になっています。
また、壁面を縦に照らし出す間接照明が室内をムーディーに演出。「夜はもっと素敵なんですよ」と奥さま。
エレクトーンとグランドピアノがあるレッスン室は、玄関の右手に位置し、居住空間とはホールを介して独立した造り。大量の楽譜やCDが造り付けの棚にきれいに収まっています。
リノベーションの際には縦の小窓を一つ増やし、二面採光にしたそうで、室内は明るくスッキリとした印象。生徒さんとの楽しいレッスンの様子が目に浮かびます。
記者の目
好きなものだけに囲まれた、上質でシンプルなSさんの暮らし。いつかはこんな風にできたらと憧れるようなライフスタイルです。奥さまとコーディネーターの金谷さんは色彩感覚や好みが似ていて、内装計画はトントン拍子に進んだそうです。自然素材の温もりを感じられる快適な住環境は、優れた断熱・気密が支えているということを改めて感じた取材でした。
2019年03月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。