「家」の神?が私たち夫婦に舞い降りてからというもの。「物件探し」はわが家のルーチンワークとなった。平日にはネット上で目ぼしい物件を選出し、週末には実際に見てまわるという、北見~札幌間を、物件のためだけにひた走る怒涛の週末が繰り返された。
実際に物件を目の当たりにすると、ネットに上がった物件から受ける印象というものが信用できないということがわかってくる。これは、自分で勝手 に想像を膨らませてしまうところが大きいからだと推測される。自分の都合のよい方向に、頭の中で実物と反れた架空の物件を作り上げてしまうのだ。しかし、 20件あまりの物件を見た頃だろうか。ネット上にある物件情報のなかから、自分の求めている物件に近いものを探すコツが掴めてくる。
<写真:物件探しのために走った北見-札幌間、車で往復9時間。見慣れた景色>
1. 取引態様が「売主」は要チェック!(他の業者に取り扱いがないものは、比較的、公表期間が浅いものが多い)
2. 採光と環境は、方角、接道方向、近隣地図から探れ!(画像はいつの時間帯で撮影されたものか、マップファンや地図を多用して探る。また、住宅地域であるか、商業地域であるか、学校、病院、スーパー、公園は近いかなどの住環境も同時にチェックする)
3. 各所の画像が少ないもの、撮影効果を駆使しているものは要注意!(写りがよいところが少ない=リフォームが一部だったりする、広角レンズやの効果を使って空間を広く見せようとする)
といった要点を念頭に置いて探してみると、物件はパソコン上である程度、厳選されていった。
しかし、半年以上が過ぎても、自分たちが住むイメージのできる物件は見つからない。徐々に「家がほしい」テンションも落ちていくなか、われわれは 新たな手段を探った。「中古物件では魅力を感じるようなものは難しい」「新築では、われわれの手の届く価格帯の物件では満足できるものは見当たらない」 「もちろん予算的に注文住宅では無理」。そこで、浮上したのが「建築家にリノベーションを頼む」手段である。専門家の目から見たよい中古物件を一緒に見つ けてくれるに違いない!煮詰まる夫婦に、希望の光がわずかに差したように思えた。
<写真:今や物件探しには「不動産屋めぐり」よりも「ネットめぐり」だ>
問題なのは予算。われわれが土地と建物に当てる予算は2200万円。建築家の「先生」が、われわれの提示する金額で果たして引き受けてくれるのだろうか?まずは「コンタクトを取って感触をみよう」ということになった。で、建築家を探し始めた。その選出ポイントは...
1.流行り物ではない長く住むことができる家づくりをしている
2.感覚・価値観を共有できそう
3.話を聞いてくれて、まじめそう
そして、総合的評価によって「奥村晃司建築計画室」の奥村晃司さんがいい、ということになった。
<写真:連休には札幌近郊にベースキャンプを設けての物件探し>
奥村さんの存在は以前から知っていた。ある雑誌で、「スローハウス」のコンセプトで家づくりを提唱する建築家としてインタビューを受けていたのが 印象的で、記憶に残っていたのだ。いや、今思えば、雑誌を見た瞬間から「家を建ててもらうならこの人」と決めていたような気もする。だが、平凡な生活水準 のわれわれ庶民にとって、建築家は敷居が高い。でもリノベーションだったら...大丈夫かも?と、奥村さんへ送ったのが以下のメール。
「奥村さま
はじめまして。
北見市に住む山田と申します。
ホームページで貴計画室のコンセプトを拝見し興味を持ちました。
家を建てるにあたって、第一の願いは小さく質素でいい、私たち家族4人(夫・妻37歳、息子6歳、娘4歳)が、永く心地よく日常を送ることのできる器です。
土地はまだありません。札幌か小樽で考えています。中古のリノベーションも有りかと考えています。
予算は土地も含めて2200万円です。
このような低予算ですが、土地または中古住宅の取得も含めて相談にのっていただけますでしょうか?
突然のメールで大変恐縮ですが、よろしくご検討ください。2007年10月11日」
改めて見返すと、保険としてリノベーションを挙げているが、かなり新築希望の強い文面だ。言葉とは、うらはらな気持ちの表れか...。夫には言えぬが、妻は密かに新築を狙っていたのだ。
まるで就職の合否を待つような緊張感で、奥村さんの返事を待った。
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「奥村建築計画室」のホームページ
2009年04月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。