Story 取材記事

カビをつくらない換気の家に惚れ込み入社 札幌/奥野工務店・狩野社長


奥野工務店(札幌市白石区)は、1968年の創業以来、地域密着で丁寧な家づくりを続ける住宅会社です。優れた断熱・気密性能と、自然の力を利用したパッシブ換気システムによる心地よい室内環境が大きな魅力。オーナーの希望を反映したプランや、自然素材を使ったインテリア・外装デザインにも定評があります。


奥野工務店 代表取締役社長 狩野泰孝氏 写真は同社事務所にて


2023年4月には社長が交代し、3代目社長には40歳の狩野泰孝氏が就任しました。今回は狩野新社長に、お客さまへの想いや、奥野工務店が目指す家づくりについてお聞きします。

パッシブ換気システムに惚れ込み奥野工務店に入社

奥野工務店は2代目社長だった奥野智史氏の時代に、高断熱・高気密で、フレッシュな室内空気環境が特徴のパッシブ換気システムを導入した家づくりを確立しました。


写真はiezoomが2021年に取材撮影した2代目社長で現相談役の奥野智史氏


奥野前社長は、高断熱・高気密の技術がまだ普及していなかった時代から、札幌の工務店として、家の寒さ、結露、省エネなどの課題を解決することが大切だと考え、ウレタンボードによる外張断熱工法を採用する工務店団体・ソトダン21や、NPO法人パッシブシステム研究会に加入して技術を学び、実践を重ねてきました。


2019年撮影・旧西岡モデルハウスは外壁に札幌軟石を使ったこだわりの外観も魅力


現在では、設計・施工両面で培ってきた、確かな知識と施工技術によって、多くのオーナーに快適で健やかな住まいを提供し続けています。

道南の大工の家に育ち、家づくりの道を志す

狩野社長の経歴を教えてください



狩野社長 私は道南のせたな町出身で、父は大工をやっていました。父の仕事を見て育ち、自分は設計をやりたいと思うようになり、高校卒業後は建築学を学びました。

専門学校を出た後は、首都圏の工務店に就職しました。そこでは団地のリフォームなどを担当し、現場監督として働いていましたが、数年後、家づくりの知識と経験を積みたいという想いが強くなり、札幌の中堅ビルダーに転職しました。

その会社でも現場監督として働きましたが、仕事を通じて高断熱・高気密の施工方法を学べたことは大きな収穫でした。

その後、営業職として別の住宅会社に転職。お客さまへの提案、ローンや保険に関する業務、お引き渡しまでの現場との調整などをワンストップで担当しました。

暫く経験を積んでみて、ハウスメーカーと言われる大手住宅会社の営業職はどんな仕事をしているのか、どのように人材を育成しているのか、会社の仕組みづくりなどにも興味を持ち、中堅営業マンとして道内のハウスメーカーに転職しました。

そこで行われていたのは、ロールプレイに従った営業手法。私には、お客さまの視点に寄り添い切れていないと感じる場面が多くありました。私はお客さまに自分がイイと思ったものを勧めたい。そうした面でも自分が目指す家づくりとは違うと感じていました。

マイホーム新築で換気の重要性を実感

そんな折、奥野工務店に転職していた先輩から連絡があり、奥野社長と会う機会がありました。その時に、はじめてパッシブ換気システムの話を聞き、感激したのが入社のきっかけです。

私はその2年ほど前にマイホームを建てていました。その家は、それまでの経験上、高断熱・高気密でしっかりとプランをしたつもりでした。換気に第一種熱交換換気システムを採用していました。

ある日、換気本体の蓋を開けてフィルターを引っ張り出したところ、本体の内部に結露やカビが発生しているのを発見。換気本体を通って熱交換された空気が各部屋に循環する換気方法なので、小さな子どもの部屋にもカビを含んだ空気が回っていくのかと思うと大きなショックを受けたのを覚えています。


小屋裏から突き出した排気塔。室内を循環した空気が最後に屋外に排出される



その点、パッシブ換気は給気口で屋外から採り入れた新鮮な空気が、床下から室内に給気されて家中くまなく循環し、汚れた空気は排気塔から排出される仕組み。空気だまりや室温差ができにくいため、結露やカビが起きる心配はほとんどありません。



室内と屋外の温度差を利用し機械制御がないため、運転音に悩まされる心配もなく、メンテナンスの手間もありません。こんなに優れた換気方法を標準仕様で採用している住宅なら、「自信をもってお客さまに勧められる」と確信し、入社して今に至ります。ちなみに奥野工務店もお客さま担当がワンストップで家づくりをサポートしています。

狩野社長が考える「おくの手」とは

納得の住まいを実現する熱意と創意工夫を奥野工務店では「おくの手」と呼んでいます。狩野社長にとっての「おくの手」とはズバリ何でしょう?



狩野社長 私が考える「おくの手」とは、お客さまが求めているものにプラスできる提案力だと思っています。プランの面では、より暮らしやすい動線や間取り、設備の提案などがそうです。また逆に、一見よさそうに見えて実際には使いにくいかもしれないなど、お客さまの要望について、これまでの経験とプロの視点から、真摯なアドバイスも心掛けています。



さらに、専属大工も「おくの手」には不可欠な存在です。断熱・気密の施工精度の高さに加え、パッシブ換気システムの施工も、知識と技術力が必要な工事ですが、弊社は経験を積んだ専属大工が施工するので、仕上がりについての心配がありません。



住宅の基本性能を担保しているからこそ、さらなる提案が生きると考えています。造作によるオリジナル家具など、見映えの良い室内空間を実現できるのも、腕の良い大工の手仕事のおかげです。

これからの奥野工務店について

狩野社長 自分が惚れ込んだパッシブ換気の家づくりを続けていきます。これは先代の希望でもあり、私自身もこの技術を継承し、発展させたいという想いがあります。



やることは変わりません。社員に対しても、「いつも通りやってくれればいい」と伝えています。

会社の存続については緩やかな若返りが必要です。設計も現場も、頼れるベテランの知識は財産ですが、それを継承する担い手の育成も重要です。アフターフォローも含め、お客さまに安心して暮らしていただくために、次世代育成の取り組みも徐々に進めています。

現在、南幌町「ゼロカーボンヴィレジ」に参加中


「3つの家と余白の間と」完成予想外観パース


奥野工務店は、「みどり野きた住まいるヴィレッジ」で現在進められている「ゼロカーボンヴィレッジ」企画に参加中。建築家と工務店がコラボして、1棟あたり年間で2tのCO₂を削減することができる高性能なエコ住宅『北方型住宅ZERO』を提案します。今回は数々の受賞経験を持つ注目の若手建築家・山下竜二さんとのコラボレートが実現しました。


事務所に打ち合わせに訪れた建築家の山下竜二氏(右)


山下さん 以前、南幌町で一緒に仕事をしたことがあり、施工力の面でも信頼できる会社さんだったので、今回の企画でも声を掛けさせていただきました。

狩野社長 今回は太陽光パネルの壁面設置が参加条件にあり、さらに奥野工務店ならではのパッシブ換気システムの採用もお願いしたので、設計ではご苦労をお掛けしたと思います。

取材を終えて

「やることは変わらない」と話す狩野社長。その言葉には、性能や技術に自信があり、これまで通りの誠意ある家づくりを続けることが、何より大切であるというメッセージを感じました。


2023年11月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。

株式会社奥野工務店の取材記事