※この記事は北海道住宅新聞の「快適キッチンのミカタ」という連載記事を転載しています。北海道住宅新聞はこちら
加齢とともに下肢機能が弱ってきたり、上肢の可動域が狭くなったりする身体的リスクが大きくなると、今までのキッチンの高さや機器類が使いづらく感じてきます。
そのため高齢者の方が使うキッチンと、車椅子を利用しての調理を前提としたキッチンでは、なるべく身体移動が少なくすむ動線や安全性のある機器類の選定が大事になります。
似ているようで似ていないキッチンのカタチ
身体機能が低下していく高齢者の方が使うキッチンと車椅子対応キッチン、それぞれご提案する内容の違いをご存知ですか。
キャビネット下部がオープンなキッチン、あるいは高さが低いキャビネットを想像しがちですが、この「低さ」も微妙に異なるため、シンクの深さは大きく違ってきます。
キッチンの高さは、公式(身長÷2+5㎝)で求めますが、使う方が高齢の場合は(身長÷2+2.5㎝)で考えます。また、シンク前にサポートバーをつけ、足が入り込むよう奥行き20㎝のオープンなスペースがあると、さらに身体的負荷を軽減できます。
一方、車椅子での作業を想定したキッチンの高さは、車椅子の座面高さ(40~45㎝)と差尺(座面高さと天板の高低差)から算出すると67~75㎝が目安になります。
この高さの違いは、シンクと水栓の選び方にも大きく影響してきます。シンクの深さは通常18~20㎝ですが、車椅子対応キッチンは高さが低くなるため、シンクの深さは15㎝程度の浅型シンクになります。
シンクが浅いと水はねしやすいので、泡沫水栓などを選ぶことをおススメします。
また、水栓の吐水口までの高さが低いものは食器等が洗いにくくなるので、商品の図面を確認して選ぶことが大事です。
上肢の上げる範囲、伸ばす範囲にも負荷がかかってくるため、水栓の立ち上がり位置も忘れてはならないポイントです。
☆ポイント☆
高齢者と車椅子対応キッチンの高さの違いはシンクと水栓の高さの違い
快適キッチンのミカタは連載です。
次回はオープンキッチンが登場するまでの意外な理由と背景について考えます。
次回記事はこちら 第10回 使える話題‼️ オープンキッチンと女性の社会進出
阿部 美子さん:ララプラスキッチン代表
住宅設備機器ショールームに勤務した8年半で約1000組のキッチン提案を行い、2007年ショールーム営業部門で全国第1位を獲得。社長表彰を受ける。2012年に全国初、唯一のキッチン空間に特化したキッチンアドバイザーとして活動を開始。
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連載一覧
第1回 キッチンに立つたびに幸せな気持ちになる
第2回 ヒューマンスケールを知る
第3回 キッチンの高さを決める作業点
第4回 キッチン空間のハインリッヒの法則
第5回 会話の見える化で快適キッチン提案
第6回 つい、見落としがちなキッチン空間のポイント
第7回 体にやさしいLDKのつなぎかた
第8回 忘れたころにやってくる・・・キッチン機器のコスト
第9回 高齢化対応キッチンと車椅子対応キッチンのちがい
第10回 使える話題‼️ オープンキッチンと女性の社会進出
第11回 宙に浮く「フロートデザイン」が人気の理由
第12回 「料理」を家事として見た時のキッチン選び
第13回 安心は禁物! 視線が届かない対面キッチンも
第14回 生活スタイルの変化で人気の海外製食洗機
第15回 快適なレイアウトの秘訣は「利き手」にあった!
第16回 リビングキッチンの配色テクニック
第17回 意外と見落としがちなシンクと水栓の距離
第18回 似ているようで違う! キッチン天板の選び方
2021年05月現在の情報です。詳細は各社公式サイト・電話等でご確認ください。